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MOVIE
YUI KITAMURA
北村優衣
1999年9月10日生まれ、神奈川県出身。2015年、俳優デビュー。近年の出演作は、主演を務めた映画『かくも長き道のり』をはじめ、映画『シグナル100』『13月の女の子』、ドラマ『女子グルメバーガー部』『小夏の放送室』など。『日立 世界ふしぎ発見!』や『ワイドナショー』など、バラエティや情報番組でも活躍している。
「お芝居の楽しさをかみ締めた濃密な時間。また3人で孤島に戻りたい(笑)」
「カルト的な団体にいる人の物語ですが、ただ単に“普通ではない組織や人々”という一般的なイメージをフィーチャーするのは違うと思ったんです。彼らにとっては、普段私たちがいる世界が不浄に見えているんです。演じ手として、そういった外側のことではなく、彼らはどんな人物で、どうして団体に身を委ねてしまったのかという内側に目を向けて、演じたかった」
気鋭の漫画家・山本直樹が手がけた怪作『ビリーバーズ』は、ある団体に身を置き、汚れた俗世から旅立つために孤島での精神修行を行う男女を描く過激な物語。主人公は、愚直な心と抑えきれない欲望の間で苛(さいな)まれるオペレーターと、狂気に似た信仰心で仲間を引っ張る議長。さらに、孤島で暮らす唯一の女性である副議長(北村)。自身も本当の救いを求めながら、3人の中でむき出しになる愛と欲望のトリガーとなる彼女は、本作で重要な役どころ。映像化にあたり難役を演じたのは、注目を集める新進の俳優、北村優衣だ。
「生きていくうえで人とのつき合い方に問題があり、居場所や環境を変えた人でも、結局人を求めてしまう。そんな人間の本質を描く物語にしたいと考えていました。副議長はDVをきっかけに、『ニコニコ人生センター』という団体に入った、どこか線が細い女性で、これまでも繰り返し人を信じることで、救いを求めてきた人だと思うんです。一方で、自分のことも信じているという彼女なりの芯の強さも抱えている。その固い軸は、最初2人の前では見せず、やがて3人の関係が築かれ、形を変えていく中でしだいに表れます。私も人を信じたいと思う性格で、彼女の根の部分は理解できたので、2人との関係性を考慮しながら、ミリ単位で気持ちの加減を探り、演じていました」
やがて均衡を保っていた三角形はゆがみ始め、その瑕(きず)から抑えていた根源的な愛や欲望が一気にあふれ出てくる。そこに、人間の悲哀や愛(いと)おしさが垣間見えてくるのだ。成人向けのシーンも含め、圧倒的な熱量で極限の人間模様を描けたのは、共演者やスタッフと濃密な時間を共有したからだと北村は言う。
「共演した磯村(勇斗)さんと宇野(祥平)さんが、ご自身が思う役や物語をもって私の想像以上の演技をされたことで、私も自分の想像を超える副議長を出せた感覚があったんです。驚くと同時に、みんなでつくるお芝居の面白さを改めて再認識しました。撮影後、3人で話したときには、『またプレハブに泊まりたいですね』って孤島の生活を懐かしんじゃいました(笑)」
『ビリーバーズ』
©山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会
ニコニコ人生センターという宗教的な団体に所属している3人は、オペレーター(磯村勇斗)、副議長(北村優衣)、議長(宇野祥平)と互いに呼び合い、無人島での共同生活を送る。本部からメールで届く、俗世の汚れを浄化する不可解な指令“孤島のプログラム”を実行し、安住の地をめざす。しかし、日々のわずかなほころびから、徐々に3人の本能と欲望がむき出しになる。
●7月8日より、テアトル新宿ほか全国順次公開
Photo:Kyouhei Yamamoto Hair & Make-up:Erika Tsubaki Stylist:Kyoko Toyoshima Interview & Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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