▼ WPの本文 ▼
シティ・ポップを愛するあのアーティストは、どんな聴き方をしてきたのか。澤部渡さんに、シティ・ポップの楽しみ方を教えてもらった。
WATARU SAWABE
澤部 渡さん
1987年、東京都板橋区出まれ。2006年に自身のソロプロジェクト「スカート」としての活動を開始。2017年にポニーキャニオンからメジャーデビュー。マルチな才能を生かし、アニメ、映画、ドラマの劇伴などにも携わる。
必ずしも都会的な部分だけではない
シティ・ポップが描き出す「東京」
僕にとって、シティ・ポップは「予感」の音楽なんです。シュガー・ベイブの「Down townへくり出そう」(「DOWN TOWN」)という歌詞が象徴するように、都会の中心というよりは、少し離れた場所からそこに向かう視点。「今」都会で遊んでいて楽しいとかじゃなくて、「これから」どういう楽しいことが待っているんだろうっていうワクワク感にこそ、シティ・ポップの本質があるような気がしています。
だからこそ、東京の都会的な部分だけを切り抜いたような曲がシティ・ポップだといわれていることに複雑な感情を覚えていた時期もあって(笑)。確かに、地方から見たら「東京」ってひとつの街に見えるじゃないですか。でも実際は、その中に下町とか郊外とかいろんな街の景色があって、それを全部受け止める懐の深さが東京の面白さだと思うんです。少し極端に言えば、「山手線の内側じゃない東京」にいる人の目線から、どんなふうに都市を描くかというのが僕の考えるシティ・ポップの命題ですね。
「音楽=サブスク」になりつつある時代だからこそ、若い人にはシティ・ポップブームを通じてCDやレコードなどのフィジカルに触れ、まだ知らない音楽に出会う「予感」を楽しんでもらえればうれしいです。
SAWABE’S
CITY POP PLAYLIST
▶︎ メンズノンノ読者にたどり着いてほしい曲
シュガー・ベイブ「SHOW」/
『SONGS』(1975)収録
ⓒTHE NIAGARA ENTERPRISES INC.
欧米のポップス然としたものをロックの手法で演奏していて、粗削りだけどグッとくる。冒頭の歌詞が流れる瞬間は格別です。
▶︎ まだ注目されていない発掘シティ・ポップ
石川セリ「ときどき私は……」/
『ときどき私は…SERI』(1976)収録
ⓒユニバーサル ミュージック
これは歌謡曲のアルバムですが、こういうメロウな曲もシティ・ポップと呼べるなら、生きやすい世の中だと思いますね。
▶︎ 2010年代以降のシティ・ポップ
(((さらうんど)))「きみは New Age」/
『New Age』(2013)収録
ⓒカクバリズム
エレポップ主体の内容ですが、今の時代のシティ・ポップというものがあるならば、間違いなく彼らの曲だと思います。
あわせて聴きたい、澤部さんの曲
「高田馬場で乗り換えて」/
『トワイライト』(2019)収録
ⓒポニーキャニオン
電車を乗り換えて「騒がしい街」に向かう高揚感を軽快なリズムで表現。いわゆるシティ・ポップ的サウンドではないが、シュガー・ベイブの影響が息づく、澤部が考えるシティ・ポップの魅力が詰まった1曲。
Photos:Takahiro Idenoshita Hair & Make-up:Rika Tsutsui[Cake](for Fujiwara) Stylist:Nobuko Ito(for Fujiwara) Text:Kohei Hara Shunsuke Kamigaito
▲ WPの本文 ▲