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あらゆる作品を読みあさる漫画好きも、こぞって藤本タツキに魅せられている。何度も読み返すほど作品を愛する雨のパレード・福永浩平さんに、その魅力を聞いた!
雨のパレード 福永浩平さん
1991年生まれ、鹿児島県出身。新時代のポップスを提唱する3人編成バンド、雨のパレードのヴォーカル。今年発表したシングル「Override」「ESSENCE」が配信中。ファンクラブ「REGENLUFT」ではメンバーによるスペシャルコンテンツが見られる。
トガりすぎたパンクな表現の中で僕たちの“フツー”を肯定してくれる。
藤本先生の作品はやっぱり他では感じられない感覚が大きいですね。物語の世界観をはじめ、ぶっとんでるけど愛せちゃうキャラクター設定やいい意味でジャンプらしくない過激な表現、予想を裏切る展開など、総じてパンク漫画だと思うんです。
だけど、そこで描かれているのは、今の時代にフィットしたメッセージ。いわゆるジャンプ漫画の主人公って、海賊王や火影といった頂点に向かっているんですけど、最近はエンタメにおいて“フツー”をめざしたり、自分の“フツー”を取り戻したりする人にスポットが浴びている気がしていて。『ファイアパンチ』のアグニも『チェンソーマン』のデンジも、『鬼滅の刃』の炭治郎だって。もちろんそれが決定的なヒットの理由ではないけれど、王道のヒーローものに対するカウンターカルチャーとしてウケる現在の気分ではあるのかなと考えています。
『チェンソーマン』の最終決戦の前に、デンジが、他人に決められて生きるんじゃなくて、ただ普通になりたかっただけだと人生を振り返ります。そこに、同僚のコベニが「それが普通でしょ? ヤな事がない人生なんて、夢の中だけでしょ」と返す。僕らの普通の中には、嫌なこともつらいことも含まれているというメッセージを読んだとき、僕もデンジと一緒に救われたんです。藤本先生はいったいどこまでトガり倒して、どこまで寄り添ってくれるのか。そこにいつも新しさを感じています。
名作『ルックバック』でも「どうしてこんなシーン思いついたの!」と驚き、同時に深く感動したシーンがあって。主人公の藤野が、画力においてずっと劣っていると思っていた相手の京本に「ファンです」と漫画を絶賛されて、その場では無表情で取り繕いながら、うれしさのあまり土砂降りの中踊りだしてしまう場面(下)。挙げたらキリがないですが、この感情、漫画で味わったことなくてめちゃくちゃ感動しました。この本は、死ぬとき棺に絶対入れようと思っています(笑)。
ココが好き!
「映画で繊細な感情を踊りで表現するシーンが好きなのですが、僕の中で映画『レナードの朝』『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』にこの『ルックバック』を合わせて、三大ダンスシーンとなりました!」
©藤本タツキ/集英社
Photo:Takahiro Idenoshita Composition & Text:Hisamoto Chikaraishi
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