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ハロー!プロジェクトのアイドルグループ、アンジュルムの大ファンを公言する女優の蒼井優さんと菊池亜希子さん。2人で編集長をつとめた『アンジュルムック』は、従来のファンだけでなく、ファッションに興味のある人たちの手にも届き、大きな反響を呼んだことは記憶に新しい。そしてこの2人が再びタッグを組み、11月15日にグループを卒業する笠原桃奈さんのフォトブック『Dear sister』を製作したということでお話をうかがってきました。2人のアンジュルム、そして笠原さんへの愛情が溢れ出るインタビューをご堪能あれ。
企画書を送って、直談判!
衣装や小道具も自分たちで集めました
11月15日にアンジュルムを卒業する笠原桃奈さんのフォトブックのW編集長を2人で務めることになった経緯から教えてください。
菊池 笠原さんが卒業するというのをニュースで知って、すぐに優ちゃんに「見た?」って連絡して。そのとき写真集を出す予定が発表されていなかったので、2人でまた作りたいねという話になり、すぐに企画書を作って送ったんです(笑)。そうしたら特別扱いみたいなことはできないけれど、(ハロー!プロジェクトで)いつもやっている範囲の規模でだったらできるということになって。
蒼井 (作れることが)決まったときは、嬉しかったねー。
菊池 うん。6月に卒業が発表されて7月にはOKがもらえたので、そこからすぐにカメラマンの高橋ヨーコさんに連絡しました。すぐにOKはもらえなかったのだけど、優ちゃんと2人で直接ヨーコさんに会ってプレゼンして、引き受けてもらえることになったんです。
蒼井 笠原さんがどんな女の子で、私たちがどんな写真集を作りたいかというコンセプトなどもまとめて持っていきました。
菊池 笠原さんが卒業前ということもあってかなり忙しかったので、限られた日数の中でなんとか作り上げることができて本当によかったです。衣装は私と優ちゃん2人でお店を回ったり、私物をかき集めたりと手作り感満載 (笑)。
蒼井 ちなみに私たちが作ったアクセサリーを持っていったのですが、それは職権乱用すぎると思って出さずに終わりました(笑)
いろんな要素が組み合わさって、
“可愛い”が出来上がる
今、お話にも上がりましたが、写真は髙橋ヨーコさんが撮影し、ヘアメイクは茅根裕己さんが担当されていますね。このお2人にお願いしようと思った理由を教えてください。
蒼井 ヨーコさんは私が10代のときにお会いして、写真集を一緒に作ってもらったのですが、ヨーコさんのカメラの前に立つと、自分の感情のまま素直に立つことができて、すごく衝撃的でした。「笑って」なんて言わないし、そのままの自分を撮ってもらえている感じで。それが結局楽しくなって自然に笑ってしまうんです。10代の頃にヨーコさんに出会えたことは自分の人生において本当に幸せだったので、笠原さんにもヨーコさんに出会ってほしいと思いお願いしました。茅根さんはヨーコさんの写真と茅根さんのヘアメイクが一緒になったら絶対に可愛いと思ったのでお願いしました。
菊池 やっぱりヘアメイクで印象ってガラリと変わるから。作り込む美しさもあると思うし、楽しさの1つでもあるとは思うけど、この写真集では、笠原さんの中でうごめいている気持ちが表情として出た瞬間を収めたかったので、それを引き出せるのが茅根さんだったんです。私たちも昔から何度もヘアメイクをしてもらっているのですが、自分でも知らなかった顔を引き出してくれて、なおかつ魅力的に見せてくれる茅根マジックというのがあるなと思っていて。そのときどきの時間や季節を引っくるめてメイクをしているというか。晴れていてメイクが汗ばんできたけど、顔に張り付いた髪の毛も可愛い、みたいな。
蒼井 すべての状況を含めて可愛いに繋がってる。それって写真だけでもメイクだけでも完結できるものではなくて、関わっている人も環境も一体として作りあげられたものなんじゃないかなって思っています。
笠原さんの“引き寄せ力”で
ラッキなー出来事が頻発!
撮影はいつ頃、どのような場所で行ったのですか?
菊池 今年の夏に海の近くで撮影しました。優ちゃんと一緒に車でロケハンに行って、色々な場所をぐるぐる巡って決めました。写真集の中に出てくるお家みたいな場所は、知り合いの別荘をお借りしました。ロケ撮影をする場所の近くにその方の別荘があるのを覚えていて、使わせてもらいたいと思ってはいたのですが、急にそんな連絡をするのもどうなんだろうと思っていたら、衣装を探しているときに街中で偶然お会いしたんです!
蒼井 お互いあまり渋谷にいるタイプではないのだけどバッタリ会って。そのときこの撮影の話をしたら「よかったらうちを使って」って言ってくださって。
菊池 で「いいんですか!?」ってね(笑)。
蒼井 本当に色々な人に助けてもらいました。
菊池 それも笠原さんの持っている、引き寄せる力みたいなものがあるのだと思います。撮影しているときも感じたよね。
蒼井 撮影中にベストなタイミングで晴れてきたりして。1日半で撮影したとは思えないくらいに色んな光がキレイに入って、本当にラッキーでした。
菊池 フェリーにも乗ったのだけど、このときは霧雨が降っていて、それもすごく幻想的だったなぁ。
蒼井 そうだね。晴れすぎてると海が写真に写らなくなってしまうから、ラッキーだった。
ロケ地のフェリーは、
事前に2種類乗ってチェックしました
フェリーに乗るアイディアは最初からあったのですか?
菊池 笠原さんを乗り物に乗せて撮影したいって願望が私たちの中であって。
蒼井 トゥクトゥクかとかも候補に上がったよね(笑)。
菊池 電車、バス、車、あらゆるものを探った中で辿り着いたのがフェリーだった。この場所に笠原さんが立ってヨーコさんが撮ったら絶対に可愛くなるって思ったんです。
蒼井 その日あっこちゃんは来れなかったけど、フェリーも2種類あったので、両方とも編集の武内さんと乗って、どっちが可愛いかチェックしました。
菊池 うん。しっかりロケハンしたからこそ、1日半で撮り切れたんだと思う。でも撮影中、ヨーコさんが「今はあまりいい光じゃないから、ちょっと傾くまで待つ」って言ったときは正直びっくりした!
蒼井 こんなにスケジュールがタイトなのに待つんだってね(笑)。
菊池 結果的にすごくキレイな光が入ってよかったのだけど、2時間近く宙ぶらりんな時間が生まれてちょっとだけ焦りました。でも結果的に、のんびり夏休みみたいなモードになれた気もします。
蒼井 私たちが予定していたロケ場所の中にも「この場所にふさわしい光が入ってないから撮っても使えないよ」とハッキリ言ってくれたので、休んだりもできたしね。
写真チェックのたびに涙が出る
珠玉のカットたち
数ある写真の中から、お2人が特に印象に残っているカットを教えてください。
蒼井 本当にお気に入りがいっぱいあるんですよ(笑)。けど1枚選ぶなら、私はフェリーに乗っている笠原さんを収めた1枚かな。(笠原さんが)海の向こうに行ってしまう感じと、一刻一刻と前に進んでいくような感じがしてすごく好き。
菊池 この写真、本当にいい! 笠原さんって、周りからは大型犬って言われてるくらい無邪気な子なのですが、ふと無表情になったときの眼差しに強さと脆さを感じるんです。見ているこっちがドキドキしちゃう。
蒼井 泣く泣く落としているカットもたくさんあるけれど、写真集として見たときにベストな流れになったのでよかったです。
菊池 流れということで言えば、あとがきって普通に考えたらラストに入れるものだけど、アートディレクターの大島依出亜さんが、ラストよりちょっと前に入れて、最後のひとパートを残してくれたんです。そこに置かれた写真は最後までヨーコさんが粘って撮った、海での写真なのですが、そのシチュエーションだけでダダダダと終わらせるんです。本人の直筆のメッセージを読んで終わるのではなく、最後に海での笠原さんの表情を見ることで、映画を1本見終わったような余韻が残って本当にグッときます。何回も写真チェックで見ているのに、見るたびに涙が出そうになります。
『Dear sister』11月15日発売
¥2,800/ オデッセー出版
迷走しかけたタイトル会議
最後に選んだ『Dear sister』
そして表紙やタイトルも1番最初に目に入る大事なものですが、これに決まった経緯も教えてください。
菊池 笠原さんのことを知ってる人も知らない人も可愛いって手にとってもらえるようなものがいいなと思って選びました。
蒼井 目玉焼きを食べているカットとの二択で結構悩んだよね。
菊池 そうだね。タイトルも重要だから、それ次第で写真を選ぶのでもいいかなって話にもなったくらい。迷走して色々なものが出てくる中、優ちゃんが『Dear sister』ってタイトルを思いついてくれたんです。
蒼井 ライトなタイトルにするか、エモ苦しいのにするかすごく悩んで考えた結果、この写真に合うものが生まれてよかった。色んなものに引っ張られて『Dog run』とか『Sun shower』なんて案も出たりして(笑)。
菊池 結果的にすごくわかりやすくていいタイトルになってよかった! ハロー!プロジェクトを知ってる人からしたら、笠原さんは圧倒的な妹感があって、先輩になった今でも妹感があってみんなが大事に見守っている存在だからぴんとくると思う。
蒼井 アンジュルムってグループ自体、姉妹みたいな関係性もあるから、彼女からメンバーに向けたタイトルでもあるし、笠原さんから実の妹2人へ向けたタイトルでもある。決して女性向けの写真集ですっていうわけではないんです。読む側から笠原さんへのタイトルでもあるし。勝手に色んな思いを詰め込みました(笑)。
ページをめくれば笑顔になれる
そんな一冊になりました!
最後にこのインタビューを読んで写真集に興味を持った人に、伝えたいことを教えてください。
蒼井 この写真集を見ると、疲れていてもほんのちょっと口角が上がるような幸せな気持ちになれるんじゃないかな。最初はじっくり見ていただいて、それ以降は1日の始まりや終わりの時間にパッとページをめくって笑顔になってもらえたら嬉しいです。
菊池 写真集って究極のアルバムだと思うんです。彼女のすごくパーソナルなポートレートを収めたものではあるけれど、このドキュメント感は自分の記憶をくすぐられる感もある。笠原さんの表情を見ていると、センチメンタルな気持ちになると同時に、あの頃の気持ちを思い出して、写真集と一緒に自分も抱きしめたくなるんじゃないのかな。
Profile
蒼井優●1985年8月17日生まれ、福岡県出身。女優。1999年、ミュージカル『アニー』でデビュー。01年、『リリイ・シュシュのすべて』で映画初出演。06 年に出演した映画『フラガール』で「第 30 回日本アカデミー賞」最優秀助演女優賞・新人俳優賞、17 年にも映画『彼女がその名を知らない鳥たち』で「第 41 回日本アカデミー賞」最優秀主演女優賞、「第 39 回ヨコハマ映画祭」主演女優賞など数多くの賞を受賞。
菊池亜希子●1982年8月26日生まれ、岐阜県出身。モデル、女優。映画『森崎書店の日々』『海のふた』などに出演。クリエイターとしての活動も行なっており、編集長を務める書籍『菊池亜希子ムック マッシュ』はシリーズ累計56万部を突破。書籍『みちくさ』『好きよ、喫茶店』『へそまがり』など著書も多数。現在公開中の映画「かそけきサンカヨウ」に出演。
アンジュルム●‘09年4月にハロー!プロジェクトの研修生メンバーで結成。当時のグループ名はスマイルとエイジを合体させた「スマイレージ」。インディーズ活動を経て、’10年5月シングル『夢見る15歳』でメジャーデビューを果たし、第52回日本レコード対象の最優秀新人賞を受賞。’14年10月に3期メンバーの加入とともにグループ名をアンジュルムに変更。
笠原桃奈● ‘03年10月22日生まれ、神奈川県出身。第5 期メンバーとして’17年6月に加入。
Photos:Takahiro Idenoshita
Text & Interview:Misato Kikuchi
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