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冷たいクリームソーダ、小銭入れ片手に向かう一番風呂、ひと手間がいとおしいフィルム写真……。なぜだか惹かれるレトロカルチャーの魅力について、それぞれの「沼」にハマった達人に語ってもらった。
銭湯
気負わずふらっと行けて、しかも最高にリフレッシュできる。昔に比べてめっきり数が減ってしまったけれど、サウナブームと相まって、再び脚光を浴びつつあるホットスポットだ。
湊 三次郎さん
銭湯活動家
「銭湯を日本から消さない」を信念に、廃業していく銭湯を引き継ぎ、再建。現在は「ゆとなみ社」の代表として、「サウナの梅湯」ほか5つの銭湯を経営する銭湯のプロ。
Twitter:@37sanjiro10
Instagram:@sanjiro_minato
曳舟電気湯
大正9年創業の電気湯。昔はなんと、本当に電気で沸かしていた時期もあるのだそう。開店直前の入り口前には、常連さんが次々と集まってくる。店主の大久保さんいわく「時間になると自らシャッターを開ける方もいます(笑)」。地域でいかに愛されているのかが伝わってくる。
国内に3人ほどしかいない現役「銭湯絵師」中島盛夫さんによるダイナミックな赤富士が迎えてくれる男湯。稲井の入っている座風呂はジェットバス式だ。
浴場には、ドーム状になった天井が。かわいらしい縞模様が描かれており、ここのシンボルとして親しまれている。同じ柄の手ぬぐいも¥1,200で販売中!
時代を感じるロッカーやうちわで、脱衣所の雰囲気もレトロそのものだ。
老舗ながら若い店主が後を継いだ新旧いいとこどりの銭湯
SHOP DATA
墨田区京島3の10の10
TEL:03-3610-8998
営業時間:15時~23時 土曜休
西小山東京浴場
もとは1962年に創業したこの銭湯。2019年に一時閉店し、SNS上で後継者の募集があった。そこで引き継がれ、現在に至る。当時のおもかげが残る外観は、昔ながらの佇まい。ライトをたくさん取りつけることで、夜でも入りやすい雰囲気づくりをめざしたそう。
高さ6mにも及ぶ本棚に囲まれた休憩スペースは、「東京浴場」の大きな魅力。7,000冊もの漫画を読めて、あの完結作品もついに読破するチャンスかも!?
左奥には、新しくつくられた2つの大きなブランデー樽風呂がある。井水(せいすい)かけ流しの水風呂だという。もとからある浴場となじみつつ、新たな魅力が加えられた。海の中がモチーフの、人魚が描かれたすりガラスは、創業時から存在する。
こちらの稲井が座っているベンチも創業時からのものだ。自販機で買ったいちご牛乳をお供に、湯上がりの至福のひとときを。
巨大な本棚に囲まれここでしか体験できない時間がある
SHOP DATA
品川区小山6の7の2 東ビル1F
TEL:03-6421-5739
営業時間:5時~8時/14時~26時 火曜休
「レトロなもの=古いもの」、
守るにはそれなりの覚悟が必要
僕は昔ながらの、生活臭のする銭湯が好きです。でも若い人に来てもらうためには変えないといけない部分もあるし、常連さんが離れていってしまうジレンマもある。もともとかかる、安くはない維持費のことも考えると、バランスが難しいですね。
ただ、銭湯の一番面白いのは、「その辺にあって誰でも入れる」ところ。自分が大学生のときに初めて行ってハマってからは、もっと若い人に行ってもらいたいとずっと感じていました。
それも、この数年でだいぶ変わりましたね。そもそも「入浴」という行為自体は、みんなが当たり前にしてきたこと。しかも500円くらいあれば行けちゃう。このハードルの低さのおかげで、若い人の間にも自然と広まっていったのかな、という気がしています。
少し上の世代と違って、古くさいとか家に風呂がない人が行くところっていうイメージがないのも、若者ならでは。このご時世、見ず知らずの人と会話を楽しめる場所なんて、銭湯くらいでしょう。彼らにとってはそういう意味でも特別な場所だから、交流を楽しんでほしいなと思います。
(湊 三次郎さん)
Photos:Shinsaku Yasujima(model) Naomi Ito(still) Hair & Make-up:Miki Masue Tatsuya Suzuki Stylist:Masashi Sho Model:Kotaro Inai[MEN’S NON-NO model] Illustrations:Nao Hashibiro
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