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最近、よく見る女の子。気づけば記憶に残っているこの人は、女優・恒松祐里。世界で人気を誇るNetflixオリジナルシリーズ『全裸監督 シーズン2』で、妖艶で神秘的な雰囲気を放つニューヒロイン、乃木真梨子を、そしてNHKの連続テレビ小説『おかえりモネ』で、周りを照らす太陽のような明るさを持つ、主人公モネの同級生、野村明日美を演じ、その変幻自在の演技力を見せつけている。彼女はいったいどんな人物なのか!(みんなが気になるくらいかわいいのは確かだけど!) 自身についてメンズノンノのためにたっぷり語ってもらったロングインタビューを、前・後編に分けてお届けします!
濃いキャラが集まる『全裸監督 シーズン2』では表面よりも内面をじっくり深掘り
──『全裸監督 シーズン2』はあまりの面白さに一気見したという話をたくさん聞きます。本作に出演が決まったときの感想を教えてください。
「信じられないというか、オファーをいただけるなんて想像もしていなかったので、すごくびっくりして。シーズン1から参加している皆さんとは違って、私はゼロから入っていかなきゃいけなかったから、撮影に入る前は、シーズン2のヒロインである乃木真梨子を演じきれるだろうか、濃いキャラクターたちの中で、乃木の立ち位置をどうつくればいいんだろうか、というプレッシャーを感じるときもありました」
──撮影現場に入ってからはいかがでしたか?
「私はあまり緊張やプレッシャーを現場に持ち込まないタイプなので、本当に撮影が楽しくて。クリエイティブな現場でとてもワクワクしながら撮影に挑んでいました。村西とおるを演じた山田孝之さんをはじめとするキャストの演技はもちろんすばらしく、現場のセットがすごく豪華でつくり込まれていて、自分のシーンじゃないところもずっと見ていたいぐらいすてき。美術さんも本番ギリギリまでカメラワークに合わせて、画がいちばん美しく見えるようにこだわっていたり」
──そんな熱量の高い現場で、乃木真梨子という役にどう向き合いましたか?
「私が演じた乃木真梨子は、一見清楚でおしとやかだけど、心には情熱や大胆さといったすごく熱いものを秘めている役どころ。だけど、周りには、増田有華さん演じる江戸川ローマをはじめ、強さを前面に出している女性の方が多かった。だからこそ、表面では天真爛漫でガツガツしていない感じを出すことで、かえって乃木らしさが出て、他の役と違いを出せると思いました!」
──確かに、乃木は周りから一歩引いた特別感がありました。「ガツガツしていない」の例えとして、ワールドプレミアイベントなどで話していた“塩ラーメン”の例え話が面白かったのですが、それはシンプルという意味なのか、引き算をするという意味なのか、どちらですか?
「ワールドプレミアでは、他の登場人物が味の濃いとんこつやみそ味のラーメンのようで、それに対して、味つけをしないありのままの姿を演じた乃木は塩だなと思ったのでそう話しました。乃木はもともと何かを足していくような役ではなかったので、最初からあっさりシンプルで、魚でじっくり出汁をとっているけど、見た目は透明、みたいな──またラーメンの話ですけど(笑)。乃木は後半に行くにつれてどんどん母性が表れてきますが、母性も目に見えるものではなくて、何か内からにじみ出てくるもの。なので、表面に出すよりも内面を深める作業を意識しながらお芝居をしていて。
乃木は、どこか自分に似ているようで似ていない役で、演じることは難しかったんです。前に一歩踏み出すときの思い切りのよさは自分と似ているのかなと思うけど、もともとの考え方がちょっと違うというか…。私が演じた乃木には、女のズルさみたいなものがあって、理解はできても私自身は持っていなくて。ただ、“もしかしたらそうなっていたかもしれない私の性格”って感じがしていて、私はそっちに行きたくなかったから今の性格になっているというくらいの違い、かな。近すぎるからこそ、違う人であるとわかる感覚があるんです」
──すごく繊細な微差なんですね。その難しいと感じた乃木真梨子をクリアにすることは大変そうです…。
「そうですね。演じているときはもちろんですが、そうでないときにも乃木に近づくために無意識にやっていたようなんです…。黒木香役の森田望智さんの肩をもみながら『お芝居する前からイラつかせようと思って(笑)』なんてわざと言ったり、黒木香の象徴である黒の洋服をわざと選んで着て現場に行ったり…当時すごく黒木っていう存在を大きな壁だと思っていて、この人を超えなきゃいけないけど超えられない、みたいな強い意識があったから、それが憑依(ひょうい)したような気がします。
もともと私は乃木の立ち位置について、ひょんなことから黒木の上の立場に行ってしまったっていう感じかと思っていて。でも武(正晴)監督から、その中に実は計算高さを入れてほしいので、参考にと映画の『イヴの総て』を渡されて、理解しました。観ている方は、乃木の振る舞いは計算なのか天然なのか、またその両方なのか、いろいろな解釈があると思います。あ〜、女は怖いな、って思いますよね(笑)」
エロスの先にある、好きなことへ
向かうパワーに心が動かされる!
──男性の欲望やエロスを扱う90年代のアダルトビデオ業界は、かなり特殊な舞台。作品に入るときに身構えることはありませんでしたか?
「全裸監督の世界観ってやっぱりエロスやアダルトビデオ業界についてフォーカスされがちなんですけど、当時の村西さんたちが何かに挑戦する力、前に進む情熱やエネルギーが見どころだと思っていて。自分の好きなことや仕事に対して向き合うときに生まれる大きな力を、キャストの皆さんのお芝居やシーンからすごく感じたから、私もがんばらなきゃいけないなっていう気持ちが強かった。だから、現場で身構えることは一切なかったです。伊藤沙莉ちゃんが演じているヘアメイクの(小瀬田)順子のように、好きなことを仕事にして、がんばって力強く生きている人たちの物語を本当にカッコいいなって思いながら、いち視聴者として観ていましたし、役者として現場に行ってお芝居していました」
──シーズン1でAV監督として成功を収めた村西とおるが、シーズン2では純粋がゆえに大きな情熱に身を焼かれてしまう様子を描いています。最後まで観て、感じたこと、共感したことは何ですか?
「やっぱりシーズン1とシーズン2全部を合わせてひとつの作品だとは思います。シーズン1は村西やトシ(満島真之介)、川田(玉山鉄二)の熱量や勢いが本当にすごくて、シーズン2はそこから、新たな挑戦を転機にどんどんドン底に向かって落ちていく。その中で感じたのは、どんな人生を送っていても前に進む人たちが主人公の物語であること。こんなに一生懸命に生きている人たちを目の当たりにして──いちばん終わりの村西の名言にもあるけど──『がんばろう』って背中を押されている感じがする!」
『おかえりモネ』は常に全力疾走!?
自分の明るい部分を120%放出!
──そして朝ドラ、NHKの連続ドラマ小説『おかえりモネ』で演じるのは、打って変わって野村明日美という元気な女の子。明日美はどんなふうに演じていますか?
「スーちゃん(明日美)は超明るい子で、私の明るい性格や前向きな感情といった、陽の部分を120%にした感じ! 彼女は本当にうれしいことがあったら、全身で思いっきり喜ぶ人なんですよ。だから物事に対しての反応がすごく大きいというか、ドラマ的というか。清原果耶ちゃん演じるモネは、すごく自然な、等身大の女の子かなと思うんですけど、明日美ちゃんは華やかで、わかりやすい朝ドラっぽいキャラクターとも言える。発信する力の大きさがスーちゃんの性格のよさでもあるので、キャラクターの器を大きく大きく!って思いながら演じていて。私も目の前の物事をたくさん吸収して、受け取る器を大きくしておかないとな、って考えています」
──器は面白い表現ですね。「自分の陽の部分を120%にしたような」明日美だけど、自分と近いことでやりやすかった部分は?
「スーちゃんを演じるときは、キャラクターを振り切っているので、ずっと全速力で走っている感じ(笑)。彼女みたいな軽やかな性格の役は昔から演じるのがすごく好きで、いつも楽しい! でも、楽しい分、すごく疲れます(笑)。やっぱり陽の部分を出しすぎるとエネルギーを使いますね。もちろんスーちゃんにも陰の部分があるんですよ。家とかでは陰の部分が出ているだろうけど、彼女が出演するシーンでは、出してないだけ。モネの近くにいるときとかは基本陽ってことなのかな。
劇中で、たまに幼なじみが集まって将来のことを考えたり、過去の震災のことを振り返ったりするシーンでは、スーちゃんの陽の部分は持ちつつも、表現をちょっと抑えて、より繊細なお芝居に変えたりして」
──物語では、震災に翻弄(ほんろう)された学生時代を経て、モネたちが自分でやりたいことに向き合う前向きな気持ちを表現していますね。本作を通して、何か得たものとは?
「週を重ねていくにつれて、幼なじみたちが自分たちの思っていることをだんだん言えるようになってきて、モネも亮ちゃん(永瀬廉)もスーちゃんもだんだん心の内を明かせるようになるんですよね。私も小さい頃から芸能のお仕事をやっていたので、けっこう取り繕うのがうまいというか、思っていることを言わなくてもうまくやっていける感じだった。だけど、10代後半になって周りの友達との関係性が深くなっていくことで、深い話をできるようになって、心が救われたり、より楽しい人間関係を築けたり。言わなくてもいいと思っていることがあったとしても、相手に伝えることで解決できるかもしれないし、もし解決できなくても仲間が増えるかもしれないですよね。そんなことを教えてくれるドラマです。若い人に向けて、自分が思っていることを人に話すことって楽しいんだよ、前に進むきっかけになるんだよ、っていう大事なことを気づかせてくれる物語かなって」
──まさに仲間の大切さに気づかされますね。明日美が幼なじみと育った気仙沼という舞台は、役づくりにどんな影響を与えたのでしょうか?
「宮城県は撮影でご縁があってよく行くんですけど、気仙沼は初めてでした。実際に行ってみると、海の近くは新しい建物が立ち並んでいたり、平らな土地があったり、おそらく元に戻すことはできない部分があって、震災の面影を感じることもありました。その中で、地元の方たちの間に流れる、東京とは違う穏やかな雰囲気や時間を感じて、おいしいごはんや自然あふれる場所を味わって、あのスーちゃんはここで生まれたんだなと全身で実感して。やっぱり実際に行ってみると役づくりが全然違ってくるので、現地で撮影できてすごくよかったです」
──朝ドラに出てから、そして全身で実感した明日美を演じてから、どんな反響がありましたか?
「おばあちゃんがすごく喜んでくれています! おばあちゃんが友達から『あれ、お孫さん、朝ドラに出ているのね』って連絡をもらったみたいで、『やっぱり朝ドラってすごいのね』っておばあちゃんが言ってました。私というか、おばあちゃんへの反響ですけど(笑)。
東京編でより出番が多くなって、たくさんの人に観ていただけるかなと! スーちゃんは原宿でアパレル店員をしています。いろいろな人に、この先怪しい展開になりそうって言われたんですけど…そんなことないです(笑)! スーちゃんはファッション関係の仕事なので、毎回髪型や服が変わって、ファッションショーみたいになっているんですよね。きっと観ていて楽しいと思います!」
自分でも見たことのない感性を
引き出したいから海外の現場を経験したい!
──さまざまな役をその人自身のように、見事に演じている恒松さん。お芝居をするときに大事にしていることを教えてください。
「その役の人生をノートに書いています。生まれたときから、このセリフを言うまで、このシーンになるまでをおおまかにまとめて。それと、情報を入れず台本を最初に読んだときに、心が動かされたシーンとその感覚を覚えておくようにしていて。1回目で心を動かされたって、本物だなって思うんです。お芝居を重ねるうちに、その本物の感情はリアルでなくなってくるので、気持ちが揺さぶられた場所を忘れないようにしますね」
──お芝居について、事前にじっくり準備しますか? それとも現場での直感を大事にしますか?
「小さい頃は、じっくり考えるのがすごく苦手で現場直感型だったと思うけど、大人になってきて、やっぱりじっくり考えたほうがお芝居をしているときの直感もよりよくなると思うようになりました。事前にじっくり考えてから、あとは現場で、という感じです(笑)」
──今後、俳優としてどんな役に、どんなジャンルに挑戦したいですか?
「この間おばあちゃんに、『祐里、ラブコメ出ないの? サスペンスじゃない楽しいラブコメが観たい』って言われました(笑)。なので、ラブコメも出たいけど…、昔からスパイものなどのサスペンスやアクション映画が大好き。マーベルシリーズが好きで、『ブラック・ウィドウ』のような女スパイを1回やりたいなって。職員のフリをして巨大組織のビルへ潜入、とか! だから…スパイ・ラブコメ、出られたらいいですね!(笑)」
──恒松さんのスパイ、気になりすぎます。では、俳優として今後の目標は?
「常に持っている目標は、毎回与えていただいた役をちゃんと、真摯に演じること。将来の夢という意味であれば、私は昔から海外ドラマがすごく好きなので、海外の作品に出たいです。日本とはまた違う、海外の方の感性の中でお芝居することは刺激的で楽しそうですし、今まで表現したことのない私の感性も引き出してもらえるのかなって」
『月刊 恒松祐里 優』がとらえた
今この瞬間のフレッシュな姿
──ドラマや映画とは違う姿を見られるファースト写真集『月刊 恒松祐里 優』が発売中です。コンセプトや内容はどのように決めたのでしょうか?
「今の私を表現するために、7年前に映画『くちびるに歌を』の撮影で訪れた思い出の地、長崎県の五島列島で、自然体の私を撮ることに決めて。映画の撮影当時にお世話になったゲストハウスに毎日おじゃましてごはんを食べて、その近くで撮影して、リラックスした空気で撮れたので、写真集っていうよりも旅行の思い出をまとめたという感じ。大人になったなって気分に浸りながら、変わらないなと思うノスタルジックな気持ちになった不思議な感覚。ちょうどコロナの状態が落ち着いているときに、奇跡的な巡り合わせで撮影することができてうれしかった!」
──自然な表情を見られるカットがたくさん載っています。また、写真集の後半になると、前半とガラッと変わり、大人の色気を感じる写真に。
「月刊シリーズで写真集をつくるお話をいただいた際に、『全裸監督 シーズン2』も配信されるタイミングだったので、作品に合わせて80年代後半から90年代前半の雰囲気、ビジュアルをつくったら面白いんじゃないかっていうアイデアが出て。そこから、その時代に生きていたかもしれない誰かを演じながら撮影することになり、写真集の後編として構成していきました。『優』という漢字は、“優しい”の他に“演じる”という意味があるらしくて、それってすてきだなと思って、サブタイトルにしました」
──写真集では、どんな自分を表現できましたか?
「ファースト写真集なので、どこを切り取っても皆さんにとっては新鮮に映ればいいなと。タイトルにある『優』を意識しながら、包み込む力やその中にある明るさ、そしてポジティブな優しさ、悲しい優しさなどを表現できているカットを選んでいます!」
──女優・恒松祐里のさまざまな一面を見られました。次回は、みんなが気になる私生活についてインタビューします!
PROFILE
恒松祐里(つねまつ・ゆり)
1998年10月9日生まれ、東京都出身。2005年、ドラマ『瑠璃の島』で子役としてデビュー。その後、ドラマや映画で多数の話題作に出演。現在、2015年の『まれ』に続き、連続テレビ小説『おかえりモネ』に出演。近年の出演作は、ドラマ『スパイの妻』『泣くな研修医』、映画『シグナル100』『酔うと化け物になる父がつらい』『タイトル、拒絶』、Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督 シーズン2』などがある。ファースト写真集『月刊 恒松祐里 優』が好評発売中。また、雑誌『シネマスクエア』にて、おすすめの海外ドラマを紹介する連載「つねまっちゃんねる」を担当!
シャツ¥35,200・スカート¥52,800・ブーツ¥52,800/アンリアレイジ[TEL:03-6416-0096] イヤリング¥19,580/ステラハリウッド[TEL:03-6805-0390] リング¥28,600/ドロウジュエリー[TEL:03-6868-3337] ブレスレット¥79,200/e.m. 表参道[TEL:03-5785-0760]
Photos:Go Tanabe Hair & Make-up:Raishirou Yokoyama[Yolken] Stylist:Marie Takehisa Interview & Text:Hisamoto Chikaraishi
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