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又吉直樹の2作目の小説であり、『火花』で芥川賞を受賞する以前から書いていたという、いわば彼の作家としての原点といわれる『劇場』が待望の映画化。主人公と仲違いするもまっすぐに向き合う女性を演じた、伊藤沙莉さんをインタビュー！
本作は自分の才能や逆境を突きつけられながら演劇の世界で夢を叶えようとする永田（山﨑賢人）と、彼の心が休める居場所をつくろうとした沙希（松岡茉優）の７年間の静かで激しい恋の物語。誰もが惹きつけられ、胸が締めつけられる。
「夢を持っている人や追いかけている人の心に刺さる作品。不器用な永田はさまざまな葛藤や苦悩から、自分を支えてくれる沙希に対してよくない振る舞いをしてしまうことも。その行いはすべて賛同できるわけじゃないけど、特殊というわけでもなくて。何かに没頭して、悩んでいる人からにじみ出る、人間くささなんだと納得できます。同じ役者から見て、ほかの登場人物も人間味があふれていて、全体通してリアル」
©2020「劇場」製作委員会
そう語るのは、かつての永田の劇団「おろか」の元劇団員で、その後ライターとして働く青山役の伊藤沙莉。永田と一度仲たがいするものの彼を心配し見守るという、バイタリティと正直さを持つ女性を演じる。永田を一般社会とつなげようとする彼女の現実的な行動は、彼と観客の橋渡しの役割を担っているとも思える。
「青山の言うことに疑問を持ったことはありませんでした。ちょっと強い口調で話しているだけで（笑）、嫌いになったり憎んだりしていない。演劇に対して“諦めない”ではなく“諦めきれない”といった永田の態度に振り回されることはあっても、彼のまっすぐな気持ちや彼が書く脚本にリスペクトを持っているんです。だから、時間がたって再会しても避けることなく、見守っているんだと思いますし、同時にけなげで純粋な沙希のことも真剣に考えて口を出すんです」
そのようにして青山が、姉のような厳しくも優しい目線で永田と沙希の関係を見つめるたびに、観る人は先行きのわからない二人の恋愛に感情移入ができるのだ。そんな青山という人物の魅力を引き出したのは、伊藤が行定監督から言われて初めて試みた役づくりによるものかもしれない。
「監督と『なんか漏れてる色気を出せたらいいよね』と話していて。私も青山を演じるうえで必要だと思ったので、あるシーンで『色っぽかったよ』と言われたときは安心しました。私も26歳になるので、色気のひとつや二つも出せたらと思っていたので（笑）。監督が求めていたキャラクターをつくることができたのならうれしいです。大人の女性らしさを出す役が、これで最後じゃなければいいですけれど…（笑）」
『劇場』
友人と立ち上げた劇団で脚本家兼演出家を担う永田。しかし上演ごとに酷評され、劇団は解散状態に。ある日、永田は偶然、女優をめざし上京してきた学生・沙希と出会い恋に落る。２人は一緒に暮らし始めるが、応援してくれる沙希をよそにますます演劇に没頭していき…。監督：行定 勲 出演：山﨑賢人、松岡茉優、寛 一郎、伊藤沙莉、上川周作、大友 律
2020年全国公開予定 公式サイト
伊藤沙莉さんプロフィール
1994年5月4日生まれ、千葉県出身。９歳のときにドラマで女優デビューを果たす。その後、ドラマや映画を中心に活躍。近年の代表作は、主演映画の『獣道』のほか『寝ても覚めても』『生理ちゃん』など。ドラマ『いいね！光源氏くん』（NHK総合・毎週土曜23:30〜）に出演中。
公式インスタグラム＠itosairi
Photo：Toshiyuki Tamai
Interview＆Text：Hisamoto Chikaraishi
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