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第1回


ほこり(
)
セルカークレックス
2020.7.22生まれ/4歳7か月
口もとからアゴにかけ、よだれが垂れたように見える白毛のまだら模様と横顔がチャームポイント。
声に出して唱えたい。「タペタム」

今号のコンセプトは「MEN’S NON-NO Q」。はて、自分にとっての「Q」とは? と考えたら、やはり猫一択。4年前に人生で初めて猫を飼い(当時は別の編集部だったけど)、「俺…いつか編集長になったら猫連載をやるんだ」(フラグ)と決めていた。連載名まで決めてあった。スピッツ(いや犬か)の楽曲のタイトル『猫になりたい』。愛猫家なら誰もが一度は夢想する、シンプルにしてアルティメットフレーズ。ところが、だ。昨年メンズノンノ編集部に異動してめでたく編集長に就任して間もなくのこと。定期的に一冊丸ごと猫特集をやっている…でおなじみの某誌から満を持して刊行された最新の猫特集号タイトルがまさかの一言一句違(たが)わず「それ」だったのだ。にゃん…だと…正直かなり凹(へこ)んだ。「ブルータス、お前もか?」と。

猫は一般に3歳児並みの知能があると言われているが、うちのほこりちゃんに限っては疑問。「ほこり」と呼びかけると振り返る。当然だ。だが「コバヤシ」「サイトウ」「おーい磯野~野球しようぜ」と呼んでも振り返る。え~っ、もしかして自分の名前わかってないのかい? 名前どころか僕のこともわかってない可能性すらある。ある日、まったくの別人が帰宅してそのまま住み着いたとして、何事もなかったようにフツーに生活を続けていそうで怖い。

猫とは? 「家族だ」「友だ」「いや、むしろ(私は猫の)下僕だ」と多々意見あるかと思いますが、個人的に最もしっくりくるワードは「同居人」。超気まぐれなルームメート。それ以上でも以下でもない。隙あらば床に寝転がり飽きもせず寝返りを打っている。休日のおじさんか(俺だよ)。それでも推せる。それだから推せる。それが猫。暗闇では目が発光する。噂(うわさ)の特殊器官(反射板)「タペタム」。実物を見るとすごい「Q」っぽい。宵闇の中のほこりは、そばにいても遠くに感じられる。どこまでも、どこまでも。

今月のにゃんメモ:
帰宅すると玄関まで迎えに来てくれる、と思いきや「まぁ茶でも飲んでいけば?」と言わんばかりにすぐさま踵(きびす)を返して去っていく。俺んちなんだけど……。
吉崎哲一郎
メンズノンノ本誌編集長
2024年6月より本誌編集長を務める。服の好みは愛猫の抜け毛(長毛)が目立たないグレーへシフト。
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