▼ WPの本文 ▼
「ここは光がいいなぁ」「あそこに落ちている影がたまらなくない?」メンズノンノの撮影時、中島裕翔からよくそんな言葉を聞く。あるいは、興味深げにフォトグラファーに使用しているレンズや露出を尋ねては、唸っている姿もしばしば見受けられる。モデルとして撮影されるという立場にあると同時に、彼自身もまたファインダーを覗き、シャッターを切ることをこよなく愛しているからだ。しかし本人はいつも「撮っているものがマニアックすぎて誰にも伝わらない気がするし、これまであんまり発表してこなかったんだよね」と控えめに笑う。曰く、誰も気に留めないだろうというものに光をあてたいという“欲”があるが、それを人が見ても面白くないのでは、と。しかし、そういう私的な視点にこそ魅力が宿るのが写真。そして彼のそんな、メンズノンノで毎月見せる姿とはまたちがう一面を、もっとひもといていきたいと考えた。彼が写真を通して自身のクリエイティブを、自由に、静かに、楽しんで発表し、そして気軽に見てもらう場として、この連載をスタートする。まずは相棒のライカとともに、夏の海に連れ出した。
中島裕翔のきわめて私的な、画廊へようこそ。
そろりそろり近づいたがやはり警戒心が強かった。レンジファインダーのカメラで動きのあるモノにピントを合わせて撮るのは難しいです。ある程度レンズを絞っておいてよかったなぁ。ところで君はカモメなのか海猫なのか…。
写真の冷たさとは裏腹にこれは真夏の朝。暑さにやられてぼーっとする感じが出て好きな1枚。海の青さを犠牲にしてモノクロで撮ったことにより滑らかな白黒の濃淡が際立つ。グレースケールって256色あんねんでって言いたい(笑)。今度赤外線フィルターもやってみようかな。
そしてこのレンズの開放値の本気。おかげで周辺光量もいい味を出してる。
あ、意外と打ちつける波で濡れますよ。
こんなところに経年劣化が素敵な椅子が!
だれが座ってきたんだろう。この椅子の歴史を出したくて奥行きのある写真にしてみたけど、うーん、構図はイマイチと反省…でもこの椅子が可愛くて思わずスナップ。
夏のちょっとした撮影旅行のような時間でした。記念すべき第1回は海に行きましたが、あらためて撮影してみると、海って難しいなと思いましたね。青のグラデーションと砂浜、すこしの緑や遠くの建物…普通に撮ってもある程度は絵になるモチーフだからこそ、どんなふうに切り取るかとても迷いました。僕は写真を撮るということに対して何を楽しみにしているのか、あらためて自分で自分のことを分析してみると、普段は特別目がいかないものや、見過ごされがちなことに、気づいてあげたい、そして誰かに気づいてもらいたい、という一種の“欲”みたいなものがあるんじゃないかと思ったんですよね。もちろん、己を表現するクリエイティブな手段として大切にしているというのもありますが、自分だけが気づくような光を見つけたいという、コレクター魂みたいなものに近いのかもしれません(笑)。
今回連れてきたのはライカ。カメラはいろいろ持っているけれど、僕の中でじっくり写真を撮りたいなっていう日に選ぶ相棒です。海という場所の質感やコントラスト、濃淡に、独特の味を加えて楽しみました。事前にすてきな桟橋があると聞いていたので、モノクロも絶対に何枚か切ろうと決めていたんですよね。この日は本当に暑くて、空も青く、パシャパシャと打ち寄せる波の音や子どもの声が聞こえていたのに、こうして見ると冷たく凪いでいる海にも見える。だから写真って不思議だなと思いますし、撮った人の色が出るのが最高に面白い。
写真やキャプションはもちろん、この「GAROU」にはレイアウトや細かいデザインまで僕のこだわりを詰めこみました。皆さんにはカジュアルに見てもらいたいと思っていますが、その中に自分の中のマニアックなこだわりはしっかり入れて、私的な視点の面白さを大事に作っていきたいと考えています。何か立派なものを撮らなくたって、写真って面白いんだな、カメラ始めてみようかなって、気軽に楽しんでもらえたら嬉しいです。
中島裕翔
衣装すべて/スタイリスト私物
Photos: Yuto Nakajima(#3~#5) Teppei Hoshida(#1~2,#6) Hair: Yasushi Goto[OLTA] Make-up: Marino Asahi[Y’s C] Stylist: Yoshiaki Komatsu
中島裕翔(なかじま ゆうと)
1993年8月10日生まれ。東京都出身。2017年6月号よりメンズノンノのレギュラーモデルを務め、以降1号も欠かすことなく出演中。Hey! Say! JUMPのメンバーとして活躍し、俳優としても数々の話題作に出演。
▲ WPの本文 ▲