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“最近、忙しかったし”と、疲れやストレスを見過ごしていないか? 五月病という言葉があるとおり、最も不調が表れやすいと言われる5月。健やかな心を保つためにも自分の心と向き合ってみよう。
教えてくれたのは…
堤 多可弘先生
VISION PARTNER メンタルクリニック四谷の副院長を務めるとともに産業医を10か所以上担当。メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行う。NewsPicks+dで「産業医に聞くメンタルハック」連載中。
そもそも、なぜ人は5月に
“生きづらさ”を感じるのだろう?
新年度の環境の変化によって蓄積したストレスが原因です
「五月病」とは、5月に憂鬱(ゆううつ)になったり体調をくずしたりする、うつ症状などの不調全般を指す言葉。医学的な病名ではなく、さらに、4月に新年度を設ける日本独自の症状でもあります。4月は入社・入学、さらに部署異動や転勤などで、新生活をスタートさせる人が多いですよね。環境が変わると、人はストレスを感じるもの。日々、少しずつ蓄積されるダメージが、心身をくずすなどの症状として現れるのは1〜2か月後。よって、5月に不調を訴える人が増えるという仕組みです。がむしゃらに頑張っているときはストレスを感じにくいため、症状が現れるまで気づけない人が多いのも特徴ですね。
では、なぜ人は新生活でストレスを感じるのでしょうか。人のストレスは、主に①人間関係、②業務/学業、③環境、④プライベートの4つに分類できます。新生活が始まると、この4つのうちの3つ(人間関係、業務/学業、環境)が大きく変化する。さらに住居が変わればプライベートも変化します。もちろん変化は悪いことばかりではありませんが、変化に順応するだけでも大きな負荷がかかる。心身が疲れている状態では、上司とコミュニケーションがうまくとれない、重大な仕事を任されたことによるプレッシャーなどのダメージは何倍も大きくなります。
コロナ禍以降、20代の若手社員の休職率は右肩上がりで増加中。その原因はコロナ禍に社会や環境が大きく変化したことに限らず、若手に求められるスキルや能力が高度化していることも影響しています。例えば、年々進化している電子機器を、当然のように使いこなさなければいけない。パワポやエクセルを学びながら仕事をすれば、使い慣れた人が同じ業務をするのと比べて時間がかかって当然なのに、上司からは注意される。コロナ禍にコミュニケーションが減ったことで「伝えるスキル」が低下した若者たちは、SOSを発信できないまま倒れてしまう傾向が強い印象を受けます。
メンズノンノ世代との会話で感じるのは「働く力/学ぶ力」を蓄えることばかりに注力して、「働き続ける力/学び続ける力」の必要性を知らない人が多いんです。「働き続ける力/学び続ける力」をわかりやすく説明すると、アスリートにとってのメンテナンス。アスリートが練習と試合ばかりしていたらつぶれてしまうのと同じと考えましょう。そしてケガと同様に、心のダメージも浅ければ浅いほど修復しやすい。致命傷を防ぐためには、日頃から心身の状態をきちんと理解し、疲れを察知したらしっかり休む。それらを心がけるだけでストレスはグンと減るはずです!
知らぬ間にストレスはたまっている!?
心のお疲れ度セルフチェック
“最近なんだか調子が悪い”。その原因、もしかしたら心の疲れかも? 堤先生監修のセルフチェックリストで、心の状態を調べてみよう! 当てはまる項目数×点数で合計点を算出したら、下記の採点結果へ。
各10点
□ 本来よりもネガティブな自分を感じる
□ 誰といても、何をしても楽しめない
□ ふと、訳もなく涙が出ることがある
各5点
□ 眠りにつきにくい/眠りが浅い
□ 食欲がありすぎる/なさすぎる
□ 飲酒量が劇的に増えた
□ 集中力や思考力の低下を感じる
□ 疲れやすい/疲れがなかなか取れない
□ 何をするにもやる気が起きない
□ 不安やイライラで気持ちが落ち着かない
□ 自信がなくて新しいことに挑戦できない
□ いつも以上に肌が荒れる
□ 日常で突然、動悸(どうき)・息切れを感じる
□ 頭痛や肩こりに悩むことが増えた
□ お腹の調子が悪い(胃痛や便秘、下痢など)
□ 少しのことで不安を感じる
□ 人と会うのがおっくう
※生きているのがつらいと感じる場合は、チェックの数に限らず専門医に相談しよう。
セルフチェックの合計点から
心のお疲れ度を知ろう
自分の点数に一致する項目より、心の状態をチェック。ストレスを軽減し、健やかな心を取り戻すために効果的な「オススメ行動」を実践しよう。C以上に当てはまったならこれらを参考にしつつ、人にも頼ろう!
A お疲れ度 0〜15点
ストレスはほぼゼロ!
健やかな心を保ち続けよう
現在の健やかな状態をモニタリングしておくと、心の疲れを察知しやすくなります。方法は、自炊、掃除、趣味活動などの頻度やそのときの心境を記録するだけ。定期的に見直して、大きく変化したら、心が疲れている証拠!
オススメ行動
□ 自分のいい状態をモニタリング
B お疲れ度 20〜35点
いつもより疲れぎみかも。
生活リズムの調整を意識!
ベストな状態と比べて、疲れがたまっている状態。まずは心身の健康に欠かせない睡眠時間や日光を浴びる時間を確保し、生活リズムを整えましょう。オススメ行動を2週間続けてから、もう一度セルフチェックをしてみてください。点数が減ったら問題なし、増えていたら要注意です!
オススメ行動
□ 活動するなら朝!
太陽の光は、体内時計を整えるために必要不可欠。良質な睡眠にもつながるため、毎日必ず浴びるように。
□ 1日一度は外出
体を動かすことで、体内時計が整いやすくなります。
□ 月一度の連休を確保
翌日に仕事や学校があると、睡眠が浅くなる傾向に。予定を詰めすぎはストレスの原因になるので、ノープランがベスト!
□ 睡眠をしっかりとる
疲れを取るためには、1日7〜9時間は必要です。
□ こまめに運動する
1日5分の運動を続けるだけで集中力が向上し、不安が軽減されたという実証が。ちょっと息の上がる程度の有酸素運動が◎。
C お疲れ度 40〜65点
ストレス過多! しんどさの
原因を見つけて、すぐさま対処
現状のまま放置してはダメな状態。対処なしに改善される可能性はゼロに等しいので、しっかり対処してください。また、10点の項目にひとつでも当てはまった場合は、Dの状態に極めて近いと考えましょう。
オススメ行動
□ Bのオススメ行動で生活リズムを整える
□ ストレスの原因を知る
原因が明確になれば、解決策を探しやすくなります。前出のとおり、ストレスの原因は大きく分けて4つ。人間関係(上司・部下・同僚・クラスメート)、業務/学業(量がスキルに見合っているか)、環境(社内や学校の体制・ルール)、プライベート(家族・恋愛・経済)についてじっくり考えながら、心が動揺するもの、気が重くなるものを探してください。
□ 相談スキルを身につける
相談するのが苦手な人に意識してほしいのが、①描写(自分が置かれた状況を具体的かつ客観的に描写する)、②表現(自分の気持ちを冷静に表現)、③質問(悩みの解決案を質問)の3ステップ。相談する際に冷静さを保つのが不安な場合は、事前に言うことを書き出しておこう。
D お疲れ度 70〜100点
心と体がSOSを発信中。
我慢せずに人や専門医を頼ろう
すぐさま人や専門医に相談してほしいですが、抵抗がある場合は、B&Cのオススメ行動を最低2週間は続けてください。体調が改善すればそのまま継続し、変化がないか悪化した場合は、迷わず専門医を頼りましょう。
オススメ行動
□ B&Cのオススメ行動を最低2週間継続
□ 体調の変化をリストアップ
Illustrations:Yumika Composition & Text:Ayano Nakanishi
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