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特定の企業や組織に属さず、自身のノウハウで仕事をつかむフリーランス。きっかけや働き方など気になるライフスタイルにフォーカス! 第一線で活躍するデザイナー・松見健司さんの、独立にいたる経緯と今を聞いてみた。
FREELANCER
デザイナー
松見健司さん
TAKESHI MATSUMI
Tシャツのグラフィックやブランドロゴのデザイン、雑誌のエディトリアルまで幅広く活動する。
海外暮らしのためにフリーランスに!
東京からニューヨークに拠点を移し、国内外から様々なデザイン依頼を受けるデザイナーの松見さん。フリーランスとして独立するきっかけは、海外生活への憧れからだという。
「石川県の田舎生まれだったせいか、高校生の頃から海外で暮らしてみたいと考えていて。しかし、デザイン事務所に所属していると、どうしても東京に縛られてしまうし、その場の勢いで飛び出すってこともなかなかできなくて(笑)。30代に差しかかったタイミングで、海外への憧れをこのまま終わらせたくないと一念発起。当時は貯金も全然していなかったから、移住費用を集めるために、東京で1年間フリーランスとして働いてみることにしたんです」
海外へ行くためにフリーランスとして独立。事務所に所属せず、ひとりで仕事をこなしていたこの期間が一番楽しかったんだとか。
「新卒でデザインの仕事をするようになって以来、ずっと会社に所属していたので、仕事の評価を個人で受けるというのがとても新鮮でした。会社にいる際は、自分のデザインしたものがどれだけよくても、あくまでその事務所の仕事になる。逆にフリーランスは、よくも悪くも手がけたデザインの評価が全部自分に返ってくる。ひとつひとつの仕事により一層真剣に向き合えるのが醍醐味(だいごみ)でしたね」
そうして移住の準備期間を終え、海外生活がスタート。ニューヨークを選んだ理由とは?
「実はロサンゼルスかニューヨーク、どちらで暮らすか迷ったんです。当時はブルックリン周辺にあったスモールブランドの全盛期で、モノ作りに対するバイブスが近そうなニューヨークに。この街なら自分も受け入れてもらえる気がしたんですが、間違っていなかったと思います」
言語は違っても、デザインで
コミュニケーションが取れる
ニューヨークへ移り住んだ当初は、知り合いもおらず、おまけに英語も苦手。そんな走りだしだった松見さんのアメリカ暮らしは、1冊の本の制作をきっかけに変わり始める。
「あるとき、日本からいただいた仕事で、ブルックリンのシルクスクリーンのプリンティングカンパニー、LQQK Studioを取材する機会があったんです。スタジオを訪れたときに、彼らのムードに惹(ひ)かれ、一緒に本を作りたいとぼんやり思って。
その気持ちを表すべく、プレゼン資料を作りスタジオへ持ち込んでみたんです。英語もろくにわからない日本人なんて一蹴されるかと思いきや、彼らはとても真摯に対応してくれて。僕の作ったモックアップを見て、“やろうぜ!”と即答。トントン拍子で話が進み、撮影とデザインのすべてを任せてもらい、完成したのが『The BQQK』です。
彼らもすごく気に入ってくれて、僕自身もこれ以上の本は作れないと思ってしまうほどの仕上がりに。英語はまだまだ拙かったけど、モノ作りでなら会話ができることを再認識。改めてデザイナーという仕事に誇りが持てました。以来、LQQK Studioのメンバーを中心に交友関係が広がっていき、そこから仕事をいただくことも。そうして現在の僕につながっています」
Photos:Norito Ohazama Composition & Text:Kanta Hisajima
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