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二人の男性の愛と絆を描いた映画『エゴイスト』で恋人役を演じる鈴木亮平と宮沢氷魚。初共演ながら、はじめから演技も心持ちも相性がよいと感じていたという二人に、撮影現場での交流や撮影秘話について聞いた。
Q1.会う前のイメージと違った?
A1
宮沢「周りの方から亮平さんの作品と役への向き合い方を聞いたのですが、ご一緒したら想像以上に真摯で芯の強い方でした」
鈴木「ありがとう。自分も思っていたとおりで、透明感がすごい! あと、品がよくて繊細で儚げな感じ…長生きしてね(笑)」
Q2.撮影期間中に見た素の一面は?
A2
鈴木「氷魚くん、萌え袖よくやってた。手をちょっと隠して佇んでる姿を何度か見たね。よりいっそう美しい儚さを感じたよ(笑)」
宮沢「ほんとクセなんです(照)。亮平さんはラーメンにすごく詳しい! スタッフさんとお昼を食べに行ったとき、いろいろな種類を説明してくださって楽しかった」
Q3.現場で気づいた共通点は?
A3
鈴木「背が高い! 人のこと言えないけど、今も真横で見て『デカッ!』って(笑)。演じていて、目線が同じ高さになることがなかなかないので新鮮だった」
宮沢「まさに同じことを思ってました! 私生活でもなかなかないので、並んで歩いていてふと亮平さんと自然に目が合うから、ドキッとするし、安心感もあります」
Q4.言われてうれしかったことは?
A4
宮沢「亮平さんの最後の撮影を見に伺った際に、『この二人で演じられて本当によかった』という言葉をいただいて。僕も『同じ気持ちでいてくれたらうれしいな』と思っていたので感動しました」
鈴木「氷魚くんのことを、僕は勝手に共演者として相性がいいなと思っていて、恋人役も自然にできると最初から感じていました。こういう取材の場で、彼の口から同じ想いだったことを聞いて、喜びをかみ締めていますね」
役者としての客観的な目線を
排したドキュメンタリーを
撮っている感覚だった
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近年、映画、ドラマなど多くの話題作でさまざまな人物、役柄を往来する俳優の鈴木亮平と宮沢氷魚。最新作『エゴイスト』で二人が描くのは、ある恋人たちの輝かしくも儚い日常だ。
鈴木が演じるのは、ゲイであることを隠しながら鬱屈とした思春期を過ごし、現在はファッション誌の編集者になり、自由で満たされた毎日を過ごす浩輔。ある日浩輔は、シングルマザーである母、妙子との生活を慈しみながら、パーソナルトレーナーとして働く、宮沢扮する美しい青年、龍太と出会う。トレーニングを通じて二人は惹かれ合い、ときに妙子を交え幸せな日々を過ごしていたが、突如思いもよらない運命が彼らの身に降りかかる。愛と絆におけるエゴイズムの意味を問うリアルな人間模様が、彼らのみずみずしい演技とともに物語られる。
鈴木 この物語で浩輔を演じるにあたり、原作者の高山真さんを知る方々を取材させていただきました。知人として高山さんと交流があった方、彼の職業であった雑誌の編集者の同僚、あと同じセクシュアリティの友人という3種類の知人たちとの対話が、演じるうえでの大切な要素になりました。そのなかで印象的だったのは、自叙伝的な原作で描かれる主人公に対して、真逆の意見が出たこと。ある人は、実際の彼のキャラクターとは違う、理想の自分を書いたのではないか。ある人は、周りには見せていない本当の自分を書いたのではないか、と。いろいろな人が自分を違う見方で見ているけど、どれも間違ってはいなくて、それらすべてがひとつになって"自分"が表せられる。これって人間の真理なんだろうと思ったんです。
宮沢 僕が演じる龍太という役も、そういう意味で、人として嘘のない人物でいたいと考えていました。この作品でももちろん台本はありますが、演じるなかで出てくる僕たちが本当に伝えたい気持ちを、撮影前のワークショップからすでに松永(大司)監督が引き出してくれていたんです。「自分が入りたいときに入っていいよ」「しゃべりたいときにしゃべっていいよ」と、絶対役者ファーストで撮ってくださる。
鈴木 すごく役者がリラックスできるような撮り方なんです。事前にカメラをしばらく回していて、俳優のための時間をつくってくれますし、繰り返し撮る場合も、それによって初めてのように撮ってくれる。
宮沢 そうですね。だから、本番で出る表情や言葉にまったく嘘がない。同時に、何か別のものが混ざっていたら監督もすぐに見抜きますし、いっさい妥協を許さない。感情から素直に生まれる表現を重んじていたからこそ、純粋な二人の物語を撮れたのだと思っています。
鈴木 監督の「とにかくその人間でいてほしい」という想いを理解できましたし、僕もこういう撮り方だと知った時点で、何が起こるかも知らないほうがいいんだろうなと思ったから、セリフをあまり覚えずにまっさらな状態で撮影に臨んでいて。演じるシーンの前に起きたことだけを理解しておいて、あとはその場で起こることに、台本に関係なく対応していきました。
お酒を飲みながらふざけ合ったり、妙子と3人で食卓を囲んだり、どの場面も自然な空気が流れる。撮影を振り返り、「浩輔と龍太でいる僕たちの日常がたまたま撮られていただけ」と二人は口をそろえて語る。それは不思議な体験であり、俳優として幸せな時間だったという。
宮沢 撮影期間中は、現場以外でも、朝起きたときからずっと龍太。オフで素の自分になっているとか、オンで龍太になっているという感覚もなく、新しい感覚でした。現場では、「これからお芝居をする」といった境目を感じることなく、そのままの状態で、気がついたら周りでカメラが回っていて、僕たちの日常を追いかけるドキュメンタリーを撮っていただいている感じ。どんな役でも、究極はこんな感覚になれることをめざしたいと思うくらい。
鈴木 そうだね。俳優がいちばん求めているような、贅沢な現場だったよね。俳優である以上、演技を客観的に見ている自分を置かなくてはいけないんです。作品によって何割置くかは、それぞれが無意識に調整してると思いますが、それを限りなくゼロにして、とにかくその人間になりきっているだけでいい。もちろん簡単ではないですけど、僕たちは極端にいうとそれを求めてやっているので、これほど役者にとって理想といえる作品はないと思います。
二人はあのとき、紛れもなく浩輔や龍太であった。その証として、本編を観たとき、客観的に感想が言えなかったという。
鈴木 自分の半分以上が浩輔で、自分が生きていた時間を、まさにドキュメンタリーを観ているみたいで、気持ちはフラットなんです。ただ、すでに観た方ほぼ全員から、感動したという長文のメッセージが来る(笑)。例えば、親が子どもの成長を見てすごく感動するとき、子ども自身は特別な感情を抱いているわけではないんですよね。本人は一生懸命生きていただけ。ドキュメンタリーに近いからこそ、観た方と僕の気持ちが乖離しているんだと思いました。
宮沢 僕も映像を観たとき、自分の気持ちがフラットであることに不安を抱いていたんです。でも実際は、すでに観賞した知り合いや同世代の俳優仲間からいい評価をたくさんもらっていて、僕たちが思っていたとおりのすてきな作品に仕上がったんだと、少しずつ実感しています。
『エゴイスト』
14歳で母親を亡くし、田舎町でゲイであることを隠し生きてきた浩輔(鈴木亮平)。現在はファッション誌の編集者として自由に暮らしていた。ある日、母親を支えながら暮らすパーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)に出会い、本当の愛を知っていくが…。監督:松永大司 出演:鈴木亮平、宮沢氷魚、阿川佐和子
●2月10日より、全国公開
©2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
[鈴木]ニット¥88,000・パンツ¥132,000(ともにエンポリオ アルマーニ)/ジョルジオ アルマーニ ジャパン
[宮沢]ジャケット¥149,600・パンツ¥96,800(ともにナイスネス)/イーライト シャツ(スタジオ ニコルソン)¥49,500/インコントロ
Photos:Shinsaku Yasujima Hair & Make-up:Yasushi Miyata[THYMON Inc.](for Mr.Suzuki)
Taro Yoshida[W](for Miyazawa) Stylist:Takashi Usui[THYMON Inc.](for Mr.Suzuki)
Masashi Sho(for Miyazawa) Interview & Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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