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お笑い芸人としてだけでなく、独特の視点とセンスで詠む短歌と俳句が話題の、フルーツポンチの村上健志さんの連載。メンズノンノWEBでしか読めない、季節感あふれる“恋”にまつわる俳句とエッセイ、そしてイラストを隔週でお届けします! 第34回は、飲んだ後の「家くる?」が成功したのはいいけれど。
女の子が自分の家にやってくる。飯を食い、店を移し、一時間くらい経った頃。思い立ったかのように言った「家くる?」が成功した。そうとなれば、いち早く店を出て家に向かいたいが、焦ってはいけない。さっき隠したやましさがばれてしまう。バーテンの後ろのお酒を品定めするよう に見回し、もう一杯くらい飲もうかなという雰囲気を出す。もちろん飲んだりはしない。
女の子が家にやって来るとなってから家に着くまでの時間の高揚感。ウイニングランというにはまだ早いが、遠足の準備というわけでもない、県予選突破全国出場決定、準決勝勝利メダル確定。少し違う気がするが、成し遂げた充実感とまだ気を抜いてはいけないという緊張感が相まったゾーンな時間帯。買ったは良いけど全然使ってない間接照明がようやく本領を発揮する。読むためではなくオブジェとして本棚にある「空の写真集」をやはり買っておいて良かった。とこれまでの自分を労う。と同時に、水回りはきちんと掃除しただろうか?先日交換したリモコンの電池をカーペットの上に出しっぱなしにしていた気がする。と不安が押し寄せる。けれど、不安はワクワクにかけ消され、コンビニでおつまみとチョコを買って「甘いものとしょっぱいもの交互は、永遠だよね」なんて会話がしたいなとすっかり浮かれている。コンビニに寄ろうと思った刹那、不安が過ぎる。夜道の暗さからコンビニの明るさで我に帰った女の子がやっぱり明日早いし帰ろうかなと言い出すかもしれない。やはり、真っ直ぐ家に向かうべきなのか。そう思っている矢先、コンビニの前に差し掛かるとこぼれた明るさが二人を照らす。そして女の子が口を開く。
「コンタクトレンズのケースってあったりする?」
と、泊まる気だーーー。
★Profile/1980年生まれ。茨城県出身。お笑いコンビ”フルーツポンチ”のボケ担当。TV『プレバト!!』(MBS系・毎週木19:00~)での大健闘が話題に。また、情報サイト『好書好日』の連載をまとめた『フルーツポンチ村上健志の俳句修業』(春陽堂書店)も好評発売中。インスタのアカウントは@mura_kami_kenji,
だが、センスが炸裂するイラストのアカウント@kenji_mura_oekaki,@birthdaychairもぜひフォローを。自身のYouTubeチャンネル『フルーツポンチ村上の俳句の部屋』での俳句実況もチェック!
Haiku & text & illustration : Kenji Murakami
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