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お笑い芸人としてだけでなく、独特の視点とセンスで詠む短歌と俳句が話題の、フルーツポンチの村上健志さんの連載。メンズノンノWEBでしか読めない、季節感あふれる“恋”にまつわる俳句とエッセイ、そしてイラストを隔週でお届けします! 第31回は、居酒屋の隣の席から聞こえた何気ない会話が気になって。
「目玉焼きは何かける派?」と居酒屋で一人で飲んでいると、隣の席の会話が聞こえてきた。自分には聞かれていないが、心の中で「醤油一択でしょ」と勝手に答える。おそらく醤油派が多数。ソース派がどう立ち向かうのか?逆に皆なんで違うの?というすまし顔で塩こしょうと答える者が現れるのか?少し目立つ大きな声でケチャップ好きだけどなと言い出す者も現れるかもしれない。さあ、どうなる?レモンサワーを追加注文して隣の会話に耳を立てる。醤油、醤油、醤油、、、まさかの全員醤油。「みんな醤油なんだ。、、だよね。うん、そうだよね。うまいよ ね、、、」。話を持ち出した人が全員が自分と同じ考えだったにも関わらず、明らかに物足りないといった様子でモゴモゴしている。他の人達も、心なしかしらけている。わかる、わかるよ。目玉焼きに何をかけるかなんてどうでも良かったんだ。議論がしたかったのだろう。それぞれの味の良さを互いにぶつけ、ご飯に合うのは。パンに合うのは。と少し話が逸れたり、煌めくワードセンスや唸るような話の展開をさせたりして話を楽しみたかったのだろう、そして結局は誰かを納得させる必要もない好みを認め合い、どれもうまいよね。今度俺の言った味も一度試してみてと平和に話を終えたかったはずだ。だって議論は楽しい。
彼女と朝食を食べる。ハムエッグとご飯と味噌汁。醤油をかけると撥水性のある目玉焼きが醤油を弾いているのがなんかきれいだ。だけど、そんなことは言わない。前に座る彼女も当たり前に醤油をかけている。「おいしいね」。実に平凡で良い。
★Profile/1980年生まれ。茨城県出身。お笑いコンビ”フルーツポンチ”のボケ担当。TV『プレバト!!』(MBS系・毎週木19:00~)での大健闘が話題に。また、情報サイト『好書好日』の連載をまとめた『フルーツポンチ村上健志の俳句修業』(春陽堂書店)も好評発売中。インスタのアカウントは@mura_kami_kenji,
だが、センスが炸裂するイラストのアカウント@kenji_mura_oekaki,@birthdaychairもぜひフォローを。自身のYouTubeチャンネル『フルーツポンチ村上の俳句の部屋』での俳句実況もチェック!
Haiku & text & illustration : Kenji Murakami
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