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メンズノンノウェブ限定の新連載「ウィークエンド・インタビューズ」では、 編集部が気になる人に会いに行き、仕事からプライベートまで、じっくりインタビュー。第2回目の後編は、成田さんの人生観や休日の過ごし方を深掘りしていきます。
常にアンテナを張っているのは
平凡さと奇抜さの真ん中あたり
―成田さんといえば愛用されている眼鏡も印象的ですが、洋服などはどんなものが好きですか?
変で、かつ悪目立ちしないものが好きです。単純に変なゲテモノって、いくらでもやれるじゃないですか。だけど、目立たない変なものを作るのは結構難しくて。そういうのをやってる人を見ていたいなという思いもあって色々買ってますね。僕の眼鏡も左右で形が違うことを気づかない人もいる。これが星型の眼鏡だったら、ただ悪目立ちするだけじゃないですか。そんな平凡さと奇抜さの真ん中あたりを探るっていうのがやりたいことですかね。
―成田さんがこれまで経験した中で、これは役立ったなという経験や知識とはなんでしょうか。
生活でもビジネスでも、立ち行かなくなって破綻するのは、経験としてはすごくいいんじゃないかなって気がするんですよね。破綻して何の価値もなく誰にも必要とされなくなった時に、それがどれくらいやばいのかやばくないのか、体感値としてわかるのは重要なんじゃないかなって思います。終わるっていう体験を個人とか家族とか会社とかどこかで経験するのは大事だと思いますね。全部が終わると人生が本当に立ち行かなくなるので一部でいいと思いますが(笑)。終わることができないオワコンみたいになってる人や仕事が多いですし。
―人間力が試されそうです。身につけるべき知識やスキルについてはどうでしょうか。
知識っていう意味でいうと、汎用性とか普遍性みたいなものが高いOS的な能力を身につけるのは大事かもですね。個々のアプリではなく、数学とか統計みたいな知識とか、基本的なプログラミングとかコンピュータサイエンス(アルゴリズムとデータ構造)の知識って汎用性が高い言語の典型だと思うんですよ。あとは契約書や法令の条件分岐を読み解くみたいな言語能力とか。そういうのって色々な問題を解くためのOSみたいなところがあるじゃないですか。それが1個でも身についていると、問題に直面した時に対処しやすいのかなという感じがしますね。突然すごく普通なことを言ってますが(笑)。
偏見もありますが、学校で習う国語とか社会とか化学の知識って汎用性が低い言語だと思っていて。その知識をいくら詰め込んでも他の問題が解けるようにはなりにくいじゃないですか。というか国語の作者の心情読解とか悪影響も多そう。
ただまぁ、そういうとすごい実用教育みたいに誤解されがちなので、同時に問題解決にはなんの役にも立たないけど単に好きってことを煮詰めればいいんじゃないかと。普遍性が高い言語と何の普遍性もない愛情を同時に育む方が中途半端な間をいくよりいいってことなのかも。
―成田さんの今後のビジョン、やってみたいことを教えてください。
ないですね。できるだけライフスタイルやビジョンを固めなくてもいいような生き方したいです。会社員でも芸能人でも学者でも、大体その世界におけるステップアップの仕方って、決まってるっちゃ決まってるじゃないですか。退屈だなと(笑)。昔のフランス映画で『勝手に逃げろ/人生』という作品があって、そのタイトルのまま、無意味にいろんな方向に散らばって、まぁ散らばったままくたばれっていう感じの作品があるんですよ。何の教訓もなく、知名度も低いし、ニッチな作品ですが好きですね。
―では、最後に悩み多きメンズノンノ世代に向けてメッセージをお願いします!
なんか、今の若い人たちってすごくしっかりしていて、何をやるべきかスピーチできて、それに向けて具体的なアクションを起こしていて、みたいな時代じゃないですか。みんな小粒なドキュメンタリー番組になりそうっていうか(笑)。だけど、若者ははっきりとしたビジョンも実現力もなく、たまたま出会ったことを好きなようにやって停滞して迷走している。そんな感じでいいんじゃないかな。
成田悠輔 YUSUKE NARITA
夜はアメリカでイェール大学助教授、昼は日本で半熟株式会社代表。専門はデータ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の創造とデザイン。ウェブビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、企業や自治体と共同研究・事業を行う。混沌とした表現スタイルを求めて、報道・討論・バラエティ・お笑いなど多様なテレビ・YouTube番組の企画や出演にも関わる。マサチューセッツ工科大学(MIT)にてPh.D.取得。
『22世紀の民主主義:選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(SB新書)
Photos:Kiyono Hattori Interview & Text:Kohji Ogata
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