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俳句とイラストで綴る恋の風景【フルーツポンチ村上健志の17音のラブストーリーズ】Vol.25

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お笑い芸人としてだけでなく、独特の視点とセンスで詠む短歌と俳句が話題の、フルーツポンチの村上健志さんの連載。メンズノンノWEBでしか読めない、季節感あふれる“恋”にまつわる俳句とエッセイ、そしてイラストを隔週でお届けします! 第25回は鼓動が聞こえるような初々しいキスがテーマ。

キスを奪ったことがない(と思う)。いつだって伺ってからしてしまう。 

別れ際、「じゃあね」と言って帰って行くはずの男が女の方に一歩近づいてする、サプライズキッ ス。「〇〇ちゃんの映画の感想ってほんと面白いね。他の人となんか違うこと感じてるよね」。「そうかな」。「うん、独特ですごく良い」。「なんか嬉しいな」。「うん」。「うん」。 「・・・」。「・・・」。沈黙が合図になり目を合わせた二人は、夕陽が沈むくらいのスピードで顔を近づけ唇を重ねる。そんな経験はない。壁ドンからのキスなんておとぎ話だ。だって、断りもなく顔を近づけ拒絶されたら、惨めじゃないか。「な~んちって」と冗談めかせばなおさら滑稽だ。だから「キスしていい?」と伺ってしまう。それだって「ごめん」と言われれば情けないが、キス顔を見られなかっただけ幾分かマシな気がする。 

でも、憧れている。雷が大きな音をたて停電になり、君がひゃっと驚いて僕の腕を掴む。暗さと雷のドキドキが味方してくれればなんとかなるかもしれない。来い雷。「ピカ」と遠くで雷が光る。音はない、部屋も全然暗くなっていない。けれど、「あっ、かみなり」と声が揃い、同時に窓の方も向いた二人が今度は顔を合わせる。一瞬の沈黙。これが口づけの合図だ。顔
顔を近づける。あと数センチ。「キスして、、、良い?」。あちゃー、聞いてしまった。野暮中の野暮。本来オッケーだったものもダメになるくらいの雰囲気ぶち壊し臆病野郎。君が首を縦に振る。 オッケーだった。ドラマチックじゃないがキスはキスだ。だったら最高だ。 


★Profile/1980年生まれ。茨城県出身。お笑いコンビ”フルーツポンチ”のボケ担当。TV『プレバト!!』(MBS系・毎週木19:00~)での大健闘が話題に。また、情報サイト『好書好日』の連載をまとめた『フルーツポンチ村上健志の俳句修業』(春陽堂書店)も好評発売中。インスタのアカウントは@mura_kami_kenji,
だが、センスが炸裂するイラストのアカウント@kenji_mura_oekaki,@birthdaychairもぜひフォローを。自身のYouTubeチャンネル『フルーツポンチ村上の俳句の部屋』での俳句実況もチェック!

Haiku & text & illustration : Kenji Murakami

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