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卓越したトークスキルで、バラエティにとどまらず、数多くの番組で大活躍している。若くしてその才能を高く評価され、一見すると順風満帆な人生だが、中学時代はひきこもりで、26歳のときにバイク事故を起こして生死をさまよい、つい最近も股関節の難病にかかるなど、実はけっこうハードだったりする。「起こったことはシーンではなく、ストーリーとして見る」。そう語るこの人にインタビュー。
千原ジュニアさん
COMEDIAN / CHIHARA JUNIOR
1974年、京都府出身。89年、実兄の千原せいじとお笑いコンビ「千原兄弟」を結成。94年に「第15回ABCお笑い新人グランプリ」優秀新人賞、「第29回上方漫才大賞」新人賞を受賞。現在、数多くの番組にレギュラー出演するほか、YouTubeで「ざっくりYouTube」(小籔千豊、フットボールアワーと共演)と「千原ジュニアYouTube」を配信中。また、週刊SPA!で四コマ漫画「囚囚囚囚(トラトラトラトラ)」も連載中。
困難にぶち当たったときの乗り越え方とは?
――ジュニアさんといえば、バラエティはもちろん、ニュース番組にも出演され、各所での発言がすぐにネット記事で取り上げられるなど、常にその動向が注目されています。今のご自身の立場みたいなことについてはどう思っているんですか?
どうなんですかね。世間にこういうふうに見られているかなとか、こういうふうに見られるようにしようかな、みたいなことは一切考えてないですね。呼ばれたところに行って自由にやらせてもらっているだけで、「明日この仕事かぁ…イヤやな」みたいなのもないですし。「ちょっと大変そうやな」とか「きっちりやらないとケガするな」はありますけど、「やりたないな」というのはまったくないです。
――ジュニアさんのこれまでの人生を振り返ると、中学時代はひきこもりで、芸人になってからはバイク事故で死にかけたり、つい最近も股関節の難病で手術を受けたり、本当にいろいろなことがあったと思います。そういったいわゆる困難にぶち当たったときは、どうやって乗り越えてきたのですか?
例えば「難病です」と言われて、「股関節が壊死(えし)する病気で、5万人にひとりぐらいの割合で発症します」となったときに、「なんでそれが俺に当たんねん」とは正直思いますよ。でもまぁ、結局はそれをどう見るかだと思うんですね。シーンとしては確かに大変ですけど、ストーリーで見るとそれがあったからこっちに行けたみたいなことがあって。バイク事故で死にかけたときもそうですし、その前に急性肝炎で死にかけたこともあって、そのときもほんまに大変でしんどかったですけど、ストーリーとして見たら、「あんなにしんどかったけど、あってよかったかな」とどこかで思っている部分はあるので。だから、若い人もいろいろあると思いますけど、起こったことをどアップで見るんじゃなくて、ストーリーで見たら結果的に乗り越えられるんじゃないかなと思いますね。
「どアップで見るんじゃなくて、
ストーリーで見る」
いつかこれがネタになるから若いうちはどんどん振り切っていく
――今のジュニアさんからは全然想像できませんが、若手時代はとにかくトンガっていて、“ジャックナイフ”と呼ばれていたというエピソードは有名です。その当時はどういうことを考えていたんですか?
それこそ10年後とかに昔の自分の写真を見たときに、「うわ、恥ずかしい!」みたいになるぐらいフルスイングしていこうと思ってやっていたところはありましたね。どこかでネタを振るというか、あとでいじられるぐらいのほうが絶対におもろいと思ってたんで。なので、若い子とかでもすごく奇抜な格好をしている子とか見るともうどんどんやれと思いますね。10年後、20年後に見て、「うわ、やめて! 恥ずかしい」ってなるぐらいのほうが絶対におもろいじゃないですか。
――本当にそうですね!
僕、15歳で吉本に入ったんですけど、そのとき自分で勝手にルールを決めて、アルバイトは3か月ごとに変えるってしたんですよ。売れたときにそっちのほうがいろいろなネタができてしゃべれるからと思って。それと同じ感覚ですよね。いつかこれがネタになるから、若いうちはどんどん振り切っていこうって。そっちのほうが間違いなくおもろいことにつながっていきそうじゃないですか。
――だとして、今現在はどういうことを考えているんですか? 10年後に向けたネタ振りみたいなものはあるんですか?
なんか40歳を過ぎたぐらいから、そういうのがなくなってきたんですよ。なので、まぁ、時代とか状況もありますけど、ほんまに若い人たちと同じところで、ちゃんといじったりしてもらいながらやっていけたらなという感じですかね。
――時代ということで言うと、時代が変わって、それに伴って価値観やルールも変わって、お笑いが窮屈になってきているなんてことをよく言われていますが、そのことに対してジュニアさんはどう思っていますか?
舞台とかで、テレビが入ってないから放送禁止用語を言って、みたいなことで笑いを取るとか、そもそもそういうことをやってないですし、与えられたルールの中でやればいいと思っているので、そこにあらがおうという気はないですね。お客さんも同じ時代に生きてはるから、昔ならウケていたものがウケなくなったりとかは当然あると思うんですよ。
――昔のほうがよかったとか言われがちですけど、その時代時代に面白いものは必ず生まれるってことですか?
生まれてくると思いますね。ただ今はテレビをつけた瞬間に番組のタイトルから何から、今コメントでしゃべっている文言まで全部わかるという時代なので、「あとはそちらで感じ取ってね」みたいな笑いは難しくなっていくやろうなという気はします。ちゃんと隅々までわかっていただいたうえでジャッジを委ねるというか。例えばお茶のペットボトルでも漢字で商品名を書いて、平仮名でふりがな振って、成分を零点何パーセントまで書いて、それでキャップに矢印で開ける閉めるって書いてあって。冷静に考えたら狂気ですよね。でも今はここまでやらないといけない時代というか、そういうことが当たり前の時代に生きているお客さんに対して笑いをつくらないといけない。僕らの頃と比べて今のほうがツッコミがはるかに上手になっているというのはそんな理由もあると思いますね。説明する側がすごくテクニックを求められますから。だからツッコミの技術はどんどん上がっていくと思います。
――10年とか20年ぐらい先の未来の漫才ってどんなふうになっているんでしょうね。
どうなんでしょうね。それが行き切っちゃうと、もしかしたら揺り戻しみたいのがあるかもわからないですけど、1回狭められたルールが広げられることはないでしょうね。昔のバラエティみたいに、ゴールデンタイムにトップレスの女性が出てくるようなことをまたオーケーにしていこうぜ、とはならないと思います。
まさか自分がYouTubeを2つもやるなんて
――ジュニアさんは、プライベートでは何をしているときが楽しいですか?
2年前ぐらいは、まさか自分がYouTubeをやるとは思ってなかったですし、しかも2つもやるなんて想像もしてなかったですけど、いざやってみると、「あぁ、こういうことをみんな楽しんでやってはるのか」みたいなことがわかってきて。休みの日があると、「何撮ろうかな」という感じになりましたね。なので、YouTubeを撮ったりしているときが楽しいです。キャンプに行ったり、バイクでツーリングに行ったりするのも撮っているので、もう何でもありなんですよ。テレビとかが仕事で、YouTubeがプライベートみたいな感じですね。
――YouTubeは将来的にどうしていきたいというのはあるんですか?
何も考えてないです。そのときに面白そうだなと思ったことを気楽にやっていけたらいいかなって。例えばあの人に会いたいなと思ったとき、YouTubeだとすごく名前の大きい人でも楽屋のドアをノックして、「今度出てもらえませんか」って言ったら実現するわけで。これが地上波の番組でやろうとしたら企画書を何枚も書いて、それで結局いつできんねん、みたいな感じじゃないですか。そういう意味ではフットワークが軽いというか、面白いシステムやなと思いますね。
――では、ジュニアさんが今注目していることって何ですか?
そうですねぇ。ウクライナどうなんねんとか、コロナどうなるんやろとか、そういうことは気になりますよね。あとは僕、ボクシングが好きなんですけど、今は日本にすばらしい選手がむちゃくちゃいるので、そのあたりを楽しみに後楽園ホールに通わせてもらってますね。
――具体的にどの選手に注目しているんですか?
ワタナベジムに重岡兄弟(優大、銀次朗)というのがいるんですけど、彼らは近い将来必ず世界をとるやろうなと思います。二人ともミニマム級で、ミニマム級って17階級の中で一番小さくて軽いから判定決着とかが多いのに、重岡兄弟はガンガンKO勝ちしてて、ほんますごいんですよ。
――ジュニアさんにとってボクシングの魅力って何ですか?
なんか不思議なんですよね。好きだから長く観ていたいはずなんですけど、1ラウンドKOってめちゃくちゃ盛り上がるんですよ。ほんまに好きやから12ラウンドまで観たいはずなのに、1ラウンドとか2ラウンドで終わったら興奮して立ち上がっている自分がいる。これって何なんやろって考えたとき、めちゃめちゃ好きな人とのセックスみたいな感じなのかなって。ほんまはずっとやっていたいのに、すぐイってまうみたいな。そんな感覚が味わえるところなんですかね。
Photos:Kyouhei Yamamoto Hair:Masaki Takada Composition & Text:Masayuki Sawada
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