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先輩たちの体験談をつづったインタビュー。ここでは、就活生のバイブルともいえる小説『何者』の作者、朝井リョウさんに直撃。役に立った対策や失敗など参考にしたいアドバイスが盛りだくさんだ。
氏名:朝井リョウ
年齢:32歳(2012年度入社)
職種:会社員 → 小説家
1989年生まれ、岐阜県出身。『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2013年、『何者』で第148回直木三十五賞受賞。最新作は、2021年の『正欲』。
ハタチ前後の能力で、
人生は決まらない!
大学在学中の2009年に執筆した『桐島、部活やめるってよ』で作家デビューするも、就職活動を行い、3年間の会社員経験を持つ朝井さん。
「小説家になるという生涯の夢が予想外に早くかなっただけで、私にとって就職はとても自然なことでした。当初は、執筆時間を確保するために多忙すぎない企業を主に受けていましたが、希望の業界に入れず苦い思いをした3つ上の姉から、〝一度しかない新卒時に消去法で企業を選ぶなんてもったいない。純粋に、その会社にいる自分を想像して気分が上がる企業を受けたら〟と助言されまして。結局、消去法でなくダメ元で受けた企業に、幸運にも入社できました。今振り返ると、消去法で企業を選んでいたことを含めて、ハタチ前後の私の視野や判断力なんて未熟そのもの。自分の人生にとって大切なものってコロコロ変わります。いい意味で、新卒時の自分の決断なんて、甘く見ておいていいと思うんです」
そんな経験を含めて、就活を通してもっともためになったのは、身近な大人の意見だったと語る。
「OB・OG訪問もしましたが、個人的にぐっとくる言葉をくれたのは姉や父など、身近な大人でした。後に自分が訪問される側になって実感しましたが、赤の他人に企業の内情や本音はなかなか明かせない。自分の性格を理解したうえで助言してもらえるという点でも、深い信頼関係で結ばれた人に意見を求めるのがベストだと感じます」
面接の緊張をほぐすために
俯瞰で見ている自分を想像!
企業研究やES(エントリーシート)、面接などの実践面では、小説家ならではのユニークな取り組み方を教えてくれた。
「その企業が発信しているメッセージを自分に重ねて物語を作り、ESや面接で披露する、という感覚でした。面接は、小説家として受けていたインタビューが練習になっていたのかあまり緊張はしませんでしたが、緊張をほぐすためには俯瞰性を持ち込め、という『宇宙兄弟』の教えは効果的でしたよ。あえて変な柄の下着をはいていったりして、面接会場に“面接を受ける自分”以外の自分を持ち込むんです。不思議なほど冷静さを保てるので、オススメ」
就活はあくまでいち教科。
向き不向きにとらわれないで
また、入社後に得た学びも。
「よくも悪くも雰囲気は重要だと思います。会社員時代、不機嫌な人はそれだけで連携を取るのが億劫でしたし、そういう人の存在は業務を滞らせます。ジョブ型雇用では資格や語学など明確に名のある能力が重視されると思いますが、私の経験に限れば、つねに機嫌がいい人にステキな成果が宿っていた印象です。周囲に“この人がいるとその場の雰囲気がいいな”という人がいれば、振る舞いを参考にしてもいいかも」
『何者』では、就活を“ひとつの教科”と表現した朝井さん。働き方や職業が多様化している今、改めて、「もっと軽くとらえてほしい」と語る。
「就活はあくまで“就活”というひとつの科目で、人格や能力を丸ごと測る物差しではない。だから不得意でも殊更落ち込む必要はないし、逆に得意でも全能感を得るべきではないです。繰り返しになりますが、ハタチ前後の能力で人生は決まりません。私の就活時には珍しかった転職や副業が当たり前になったように、今後さらに働き方は変わるはず。とりあえず一回乗り切ろう、それくらい気楽に臨みましょう。どうせ時代はまた勝手に変わります」
Illustrations:Shunpei Kamiya Composition & Text:Ayano Nakanishi
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