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【丸山ゴンザレス インタビュー】テレビ番組「クレイジージャーニー」で一躍有名に。命を懸けた裏社会取材とは

【丸山ゴンザレス インタビュー】テレビ番組「クレイジージャーニー」で一躍有名に。命を懸けた裏社会取材とは

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テレビ番組『クレイジージャーニー』(TBS系)に出演し、世界中のスラム街や犯罪多発地帯を取材するジャーナリストとして一躍有名に。2020年2月に、自身のYouTubeチャンネル「丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー」を開設し、ヤクザ、半グレ、芸能の怖い話、反社会的勢力などについてわかりやすく解説する内容が支持を集め、登録者数は約70万人という人気チャンネルとなっている。世界はワルくてアブなくて、だからこそ面白いというこの人にインタビュー。

丸山ゴンザレスさん

JOURNALIST

1977年、宮城県生まれ。國學院大學文学部、同大大学院修了。無職、日雇い労働、出版社勤務を経て、独立。國學院大學学術資料センター共同研究員。主な著書に『アジア「罰当たり」旅行』『アジア親日の履歴書』『GONZALES IN NEW YORK』『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』『世界の混沌(カオス)を歩く ダークツーリスト』『世界ヤバすぎ!危険地帯の歩き方』『MASTERゴンザレスのクレイジー考古学』など。現在、『黒蜜』で連載中の漫画『こんな人生は絶対嫌だ』の原作を手がけるほか、YouTubeチャンネル「丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー」を配信。


「割に合わないところにライバルはいない」

――テレビ番組『クレイジージャーニー』の出演で全国的に知られるようになり、今や国内外の危険地帯を渡り歩くジャーナリストとして活躍されています。そもそも丸山さんが裏社会に興味を持つようになったきっかけは何だったんですか?

大き2つあって、ひとつは人が見ないところが元から好きで。それって場所だけじゃなくて人もそうなんですけど、人がアクセスしない場所にいるような人たちの話を聞くのはやっぱり面白いですし、世の中の見え方というのは本当に一面ではわからないんだなってことが学べて楽しいんですよ。もうひとつは割に合わないからですね。

――割に合わない!?

この仕事をしていて同業者やライバルが増えないのは、難易度が高いし、簡単に行けないし、続けられないからというか、まぁ、割に合わないからだと思っているんですよ。例えば僕のことを批判する人がいたとして、「じゃあ、代わりにどうぞ」と言ってもやらないと思うんですよね。尊敬するライターの吉田豪さんが「割に合わないところにライバルはいない」と言っていて、本当にそのとおりだなって。人が少ないとジャンルってなかなか成立しにくいから、ライバルは多いほうがいいんですけどね。

――2年ほど前にYouTubeチャンネルを開設しました。裏社会についてわかりやすく解説する内容がウケて、登録者が70万人近くいます。人気の理由は何だと思いますか?

僕は世の中に絶対の真実はないと思っていて。物事は常に多面的に成り立っているというか、固い友情のように見えても、はたから見たら悪が結束しているようにしか見えなかったりということがあるわけです。角度や距離によって見え方は違うわけだから、どういうニーズがあって、どこから見るかということは常に考えて出すようにしています。個人で発信する人って独善的になりがちなんですよね。「俺の話を聞け」的な感じになったり、あとは客観視されてない状況とか、エビデンスがないものだったりするので、変に偏らないように、いろいろな視聴者がいることを想定しながらバランスよくつくるように心がけています。そうやってとっつきやすくなっているところが観てもらえている理由なのかなと。

――最終的にYouTubeはどういうものにしたいと思っているんですか?

まずは100万人をめざしたいですね。テレビの理屈に巻き込まれるのも、ネットメディアの理屈に巻き込まれるのもイヤなんですよ。もう若くもないので、自分がやりたいことをやれる場所をつくりたいというか。ネットメディアでも資本の大きなところは普通のテレビとそんなに変わらないので、僕のやりたいことはたぶん入り口ではねられちゃうと思うんですよね。自分のやりたいことをやれる場所を自分の手の届く範囲で持っていたいから、そのためには100万登録あったらいいよねという感じです。


ルールとかやり方を守れば基本的には怖くない

――これまでにいろいろな現場や修羅場を見てきたと思いますが、その中でも「これはヤバかったな」っていうのは何ですか?

どんなやつがいいのかちょっと考えてるんですけど、そもそも危険とかバイオレンスはセットなので、あまりないんですよね。襲われたとかでヤバいと言っていたらこの取材できないですから。基本、命を懸けるのが前提なので、そのつもりで行ってるとヤバいと思うことはほぼなくて。飛行機に乗り遅れそうになったとか、そっちのほうがよっぽどヤバいというか。だから、飛行機に乗り遅れるかもしれなくてヤバいというのと同じ階層に、撃ち殺されるかもしれない、さらわれるかもしれないというのがある感じですね。

「基本、命を懸けるのが前提なので、
そのつもりで行ってるとヤバいって
思うことはほぼないんですよね」

――すごい! ヤバいの認識が我々と全然違いますね。

ほかの人にとってリスクと思えるようなことは僕にとってはリスクじゃないというのが正直なところですよね。むしろそれは僕にとってチャンスでしかなくて。そんな治安の悪いところやトラブルが多いところってたぶん普通の人は来ないですから。それにヤバいところであっても、ルールとかやり方を守れば基本的には怖くない。ギャングが多いエリアとして有名なニューヨークのサウスセントラルとかも入り方さえ間違えなければ大丈夫です。ちゃんと仲介者を通して街のボスに会いに行けば次からはお客さんとして行けるわけで。プロセスをちゃんと踏まずに肝試しみたいにわーって歩いていたらやっぱり襲われますよね。

――海外と日本では裏社会の流儀とかは違ったりしないんですか?

ちょっと違う部分はありますけど、基本は同じですね。例えば日本のヤクザ組織だと、下っ端の紹介で行けば下っ端の人間の客人として低く見られるけど、親分や幹部の知り合いの紹介で行ったらその人より下の人たちはみんな上役のお客さんとして扱ってくれる。この考え方はどこの裏社会の人たちと接しても共通ですね。ただ、これはピラミッド状に組織の上下関係が存在している場合であって、それが存在してないような街の不良ギャング的な人たちだと、「え、あいつの紹介だから何なの?」みたいに全部がフラットだったりするので、そこは状況によって判断する必要があります。

――基本的にはプロセスとかルールとか仁義みたいなものを守れば大丈夫ってことなんですね。

そうですね。むしろやることやってダメだったら諦めます。極端な話、家を出て、海外を回って、日本に戻ってくるまでの行程をすべて事前にシミュレーションするんですよ。ここまで準備万端にやって起きる不測の事態ならもう甘んじて受けるしかないというか。だから、まったく何もない状態で何かが起きているわけではないんです。もし本当にヤバいと思うようなことが起きちゃったら、たぶんそこが僕の旅の終わりなんだと思います(笑)。


表社会と裏社会は映し鏡の関係性

――最近の犯罪事情について伺っていきたいのですが、今は何が流行っているんですか?

もう詐欺ばっかりですよね。今は外に出歩くことが減っているじゃないですか。ぼったくりとか恐喝って人と人がフィジカルで対面しないとできないことですけど、詐欺ってどこにいてもネットや電話を通じてアクセスできるので。コロナ後の日本の景気が突然よくなるはずもないですし、景気が悪いときほど裏社会の人たちも活発に動きますから、この先も詐欺絡みの犯罪は増えていくでしょうね。

――具体的にどんなものですか?

具体的にと言われると難しいですけど、詐欺ってべつに実行犯にならないパターンもあるんですよね。よくSNSで「フォローしてくれたら○○」とか、「リツイートしてくれたら○○あげます」みたいなのがあるじゃないですか。そういうのでアカウントだけ集めて、ほかの詐欺師に売ることもできる。なので、一見してこれが詐欺に使われるということがわからない形で巧妙に巻き込まれていくことは今後もっと増えてくると思います。ハッキリ言って小さい詐欺なんてよっぽどでもないかぎり、警察は動きません。証拠を集めるほうが大変なので。でも、ひとつひとつは少額でもそれが集まれば大きな額になるので、そのギリギリを探りながら巧妙に仕掛けてくる詐欺師は多いと思いますね。

――あと、若い世代だと、新宿の歌舞伎町にたむろする「トー横キッズ」も最近話題になっています。

トー横キッズとかは社会の歪(ゆが)みから生まれていると僕は思っていて。家庭や学校とかに居場所がないというか、10代や20代の若い子たちが本来属するべき集団の中でケアされていないから出てきていると思うんですよね。たまり場ができると、そこに同じような子が集まってきて、もちろん違う動機の子もいるかもしれないけど、ほとんどは既存のシステムの中でケアされていない子たちで、それって社会のシステムが歪んでいるから出てくるんですね。親の責任とか、本人の問題だけではなくて、システムの歪みから生まれたものなので、そういうところはケアしてほしいなと思います。

――なるほど。表社会の映し鏡みたいなことですね。

裏社会とかアンダーグラウンドの出来事ってそういう側面が間違いなくありますよね。しかも、その差を分けるのは紙一重だったりします。さっきトー横キッズは社会の歪みから生まれたと言いましたけど、こういう社会のシステムに関わる問題は時間がかかるというか、そう簡単に解決しないと僕は思っていて。個人でできることには限界があるし、一人ひとりと交流することはできないけど、こぼれ落ちた人たちをケアできるシステムをつくったほうがいいよねと言うことはできるじゃないですか。そこが僕の役目なのかなと思っています。

 

Photos:Gonzales Maruyama Composition & Text:Masayuki Sawada

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