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「写真との出会いは、ストリートスナップから」エルメスのドキュメンタリーフィルムにも出演した写真家・木村和平にインタビュー

「写真との出会いは、ストリートスナップから」エルメスのドキュメンタリーフィルムにも出演した写真家・木村和平にインタビュー

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ファッションが大好きだった学生時代に、ストリートスナップをきっかけに写真と出会った。現在は映画、音楽、ファッションを中心に撮影活動を行いながら、自身の記憶や体験をテーマに作品制作を続けている。最近もエルメスのドキュメンタリーフィルム『HUMAN ODYSSEY ―それは、創造を巡る旅。―』に出演するなど、注目度は高い。写真との出会いから、写真を撮ること、写真を通じて表現したいことなど、クリエイションにまつわるあれこれをインタビュー。

木村和平さん

PHOTOGRAPHER

1993年、福島県いわき市生まれ。大学2年生のときに写真と出会い、活動をスタート。2018年に第19回写真「1_WALL」審査員奨励賞(姫野希美選)を、20年に「IMA next #6」でグランプリを受賞。現在はファッションフォトやアーティスト写真、映画のビジュアルなど、多岐にわたり活躍。主な写真集に、『袖幕』『灯台』(ともにaptp)、『あたらしい窓』(赤々舎)がある。

写真との出会いはストリートスナップから

――写真に興味を持つようになったのはいつ頃なんですか?

大学2年生のときですね。ちょっと遡(さかのぼ)ると、僕は高校3年まで福島にいて、それまで10年ぐらいテニスをやっていたんです。プロにはなれないにしても、指導者になるなり、何かしらテニスに関わって生きていけたらいいなと当時は思っていたんですけど、高校3年のときに大きなケガをしてしまって。そのまま結果も残せず、高校テニスは引退となったとき、スパッとテニスをやめたんですね。テニスしかやってこなかったから、これから何をして生きていこうみたいな状態になって、とりあえず田舎を出て東京に行きたいなと思って、東京の大学に行くことにしたんです。そのときは本当に何か1回人生が終わって、ここからまた新しく始めようみたいな気持ちでしたね。

――東京に出てきたばかりの頃はまだ写真とは出会ってないと思うんですが、その頃は何をしていたんですか?

キャンパスが渋谷にあったので、授業が終わると毎日のように原宿に行ってました。当時は『TUNE』とか『FRUiTS』とか、ストリートスナップがすごく盛り上がっていて、表参道のローソン前には10mおきぐらいにカメラマンがいるような状況で。僕は高校生のときに服が好きになって、その頃は安い古着をいろいろごちゃごちゃ着たりとか、わりとヘンテコな格好をしていたから、撮られることがちょいちょいあったんです。そのうちカメラマンの方とも顔見知りになって、だんだんと写真に興味を持つようになりました。だから、この写真家に憧れてとか、ファッション誌の写真を見て感動してとか、そういう入り方ではなくて。手首にカメラのストラップをぐるぐる巻きつけて、じっと街の人たちを鋭い目で追っているカメラマンのお兄さん、お姉さんたちがすごくかっこよかったんです。それであるとき、仲よくなったひとりのカメラマンから古いカメラを譲っていただいて、そこから自分でも写真を撮り始めていったという流れですね。

――始めた頃はどういうものを撮っていたんですか?

最初はストリートスナップをやってみようと思ったんですよ。ウェブ系の媒体にお手伝いで入って、ストリートで声かけをやったんですけど、人見知りなところがあるから、これはムリだと思って一瞬でやめました。でも、カメラはすごく楽しいし、ひとりでできるのがうれしかったので、原宿で出会ったモデルとか役者の卵みたいな人たちを遊びながら撮らせてもらったりして。それをSNSにあげたりしていたら、そこから運よくお仕事につながっていったという感じです。

――そのときにもう写真で生きていこうと決めたんですか?

そうですね。特に学びたいことがあって大学を選んだわけではなかったので、4年の間に何か見つけて楽しく生きていけたらいいなと思っていたら、本当に運よく写真と出会えて。就職という選択肢も考えたんですけど、写真は続けたいし、写真で食べられなくてもバイトをして楽しくやっていこうと思ってましたね。そうやってものづくりを続けている友人がたくさんいたし、今も彼らのことを本当にかっこいいと思っているので。


自分の作品に関してはすべて自分の言葉で話せるものにしたい

――ファッションをはじめ、映画や音楽などの分野で撮影活動を行いながら、写真集の制作にも力を注いでいますよね。自分の作品を撮りたいと思うようになったきっかけは何ですか?

写真との出会いがあんな感じだったので、最初は写真家とかもあまり知らなかったんです。アラーキーも名前しか知らないみたいなレベルだったんですけど、ちょっとずつ学んでいくうちに、それこそ作品をつくって発表するという生き方があるんだってことを知って。それで自分もやりたいなと思ったんです。当時は僕と同年代だったり、少し上の世代の人たちの新しい表現や技法が注目された時期で、「自分もそういうのをやってみたい」「誰もやってないことをやることが表現だ」みたいな謎の焦りがあっていろいろやってみたりしたんですけど、これは本当に自分がやりたいことじゃないってことに気がついて。それよりももっと素直につくるべきなんじゃないかと考えるようになって、「じゃあ、自分の体験からひたすら引っ張ってくることをやってみるか」と思って、そこから作品づくりの大きなテーマが決まっていきました。

――自分ができること、自分が本当に興味あることにちゃんと目を向けたわけですね。

今は新しいものが評価される時代だし、誰も見たことがないものはやっぱり目立ちます。でも、自分はタイプ的にそうじゃないし、僕がつくる作品に関してはすべて自分の言葉で話せるものにしたい。僕は自分が体験してきたことにすごく興味があるから、そこからエピソードを引っ張ってきたら、たとえそれが真新しいことじゃなくても、じっくりと丁寧に続けていくことで自然と自分の表現みたいなものになっていくんじゃないかなと思ったんです。

「たとえそれが真新しいことじゃなくても、
じっくりと丁寧に続けていくことで
自然と自分の表現になっていく」

――具体的には、どういうやり方をしているんですか?

実家にあるアルバムを見たり、親から話を聞いたりということは定期的にやっていますね。そういうものからエピソードを引っ張ってきて、それを広げてひとつの作品にするというやり方です。まだまだたぶんそのやり方でつくれるものはたくさんあると思うので、しばらく続けようかなと思っています。


見た人が誰でも自由に感じ取ることができる

――写真をやるうえで、養分になっているものって何ですか?

FUTATSUKUKURIという大阪の服飾ブランドがあるんですが、彼女のものづくりからは絶大な影響を受けています。「記憶」や「憧れ」、そして「エッセイ」といったものをキーワードに、学生時代の体験から制作したり、子どもが生まれたら子ども服を発表したりしていて、僕が今のやり方にたどり着いたのも、彼女と出会ったことが大きいのかなと思います。

――自分の写真を特徴づけるとしたら、どんな写真だと思いますか?

何でしょう。けっこう髪の毛ばかり撮っているかな。髪の毛に光が当たっているのがめちゃくちゃ好きで、人の顔より人の髪の毛を撮るほうが好きなんですよね。あと、自分の写真は静かだなと思います。静けさの中に、はっとする何かがあるものが好きなんですよね。これは写真だけではなくて、例えば音楽も、人との会話もそうです。

――写真を撮ることの楽しさだったり、面白さだったりというのは、どういうところに感じているんですか?

僕の場合、どっちかというと、撮る行為よりも、撮ったあとの作業のほうが好きかもしれないです。それこそプリントしたり、並べたりという行為のほうが、たぶん撮る瞬間そのものよりも好きかもしれません。もちろん、撮っているときは何かしら気持ちがうれしくなって撮っているはずなんですけど、それよりもそのあとの編集的な作業のほうが好きですね。最近はカメラを持ち歩くようにはしているんですが、1枚も撮らないで帰る日も多いので、撮るという行為にあまり執着がないタイプなのかもしれません。

――写真で何を表現したいと思っているんですか?

僕は、作品づくりは果てしないめっちゃでかい自己紹介だと思っていて。すごくパーソナルなことが、実はいちばん他者に影響を与えるし、社会に広がっていくと思うんです。超個人的な体験のはずなんだけど、それがほかの人にとっても自分のことのように受け取れる。そういうものが好きだし、そういう部分が自分の強みなのかなと。パーソナルな自己紹介だからといって、「自分はこういう者です」と押しつけたいわけではなくて、見た人が誰でも自由に感じ取ることができる。そうした余白を残すことはすごく考えていますね。

――将来的にこうなっていたいとか、こういうことをしたいという目標みたいなものはあるんですか?

作品づくりに関しては、やりたいことがまだまだたくさんあります。そのために、今もずっと過去の記憶や出来事をじわじわと洗い出していて、形になったものから順に世に出していこうかなと思っています。あとは、もうちょっと海外の人たちに自分の作品を知ってもらえるように動きたいなというのはあります。海外にもいくつか好きな出版社があるので、そういうところから本を出すことが目標です。仕事の部分に関しては、正直言ってあんまり野望みたいなものはないです。そもそもがむしゃらに働くタイプではないんですよね。作品づくりがベースにあって、それができるぐらいのボリュームで仕事を続けたいです。たぶんそれだと一生お金持ちにはなれないですけどね(笑)。でも、それが自分的にはいいバランスなんだと思います。

 

Photos:Nico Perez Composition & Text:Masayuki Sawada

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