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服好きたちの私物のなかでも、とくに思い入れの強い「人生のベストバイ」を教えてもらう連載。ひとつには絞りきれないって? なら、3つ教えてください!
人生のベストバイ、3つ教えて!

今回の服好きゲストは、シップスでPRを務める蒲生 龍之介さん。
1.〈Cale〉のシャツ

「シャツはとくに好きな洋服です。このカルのシャツは、縫製などのつくりがドレスシャツみたいにものすごく綺麗なのに、身幅はゆったりしていたり、ボタンパーツもいわゆるドレスのものとはちょっと違ったりして、“ファッションしすぎていない”バランス」

「『ドビー』と呼ばれる、少しハリのある生地が使われています。いまはシップスのカジュアル部門にいますが、店舗に立っていた頃はドレス担当で、正直、その頃はちょっと敬遠していた素材なんです。いわゆるなサラリーマンが着ているような“ワイシャツ”に使われることが多い生地なので」


「このシャツを最初にパッと見たときも、『ああなるほど、ドビーね』って。でも、触って、着てみたら、その印象がガラッと崩されました。『こういうアプローチなら、むしろ着たいな』と、納得して。良質な素材がどういうアプローチで洋服のかたちに仕立てられるか、みたいなところは、洋服を見るときに特別気にするところかもしれません」

「僕のなかで、カルはめちゃくちゃ東京っぽいと思うブランド。ついこのあいだ展示会に伺ったとき、デザイナーの佐藤さんと初めてお会いしたのですが、ものすごく素敵な方で、ファンになっちゃいました。モノやルックの世界観でブランドを好きになることはあっても、そうやってデザイナーさん込みでファンになるなんて、僕にとっては初めての体験なんです」
2.〈J.M. WESTON〉の革靴

「これは『ハーフハント』というモデル。定番の『ゴルフ』より形はシャープで、でも同じようにラバーソールなので、多少の雨も平気。ウエストンのなかでもマイナーな存在だと思うし、正直、自分ではあまり選ばない形です。カラーリングも、同じく、自分にしては珍しいチョイス。でも、『選ばない』×2なのがよかったのか、むしろすごく気に入っています」

「入社してドレス部門に配属されたのも、革靴が好きだったからなんです。洋服のなかでモノとしても一番好きで、手放したり、買い足したりしながら、いまトータルで15足は持っていますね。ウエストンだけでも4、5足あります」

「革靴は、高校生の頃、父の靴箱から拝借して履いたのが最初だったと思います。父は、音楽なんかもイギリスのものが好きで、その影響で、当時から英国への憧れがありました。あと、映画で言うなら『ハリーポッター』とか『007』とか、好きなキャラクターの足元はいつも革靴。ちなみにスリザリン派です。パンクとかじゃない、“おぼっちゃま感に秘めた不良性”が格好よくて」

「そこから派生してフランスにも興味を持って、ウエストンも好きになったんだと思います。若い頃から趣味がオジサン臭かった、ってだけなんですけどね(笑)」
3.〈ETRO〉のヴィンテージスカーフ

「これはおそらく70〜80年代くらいのエトロのスカーフで、祖母から勝手に借りているもの。といっても、祖母は僕が小6の頃に亡くなっていて、母が祖母のクロゼットから勝手に拝借していたものを、さらに僕が実家でたまたま見つけて拝借したんです」

「使われている色は最小限ですが、僕の好きな色が全部入っています」


「母から聞いたところによると、祖母は、ネクタイとか宝石とかそういったものが好きなひとだったらしく、百貨店のワゴンセールなんかで掘り出し物をディグってくるみたいな、センスのよさもあったそうです」

「『父や祖父から受け継ぐ』、みたいなのって、わりと男性には多いと思いますが、僕は案外、母や祖母といった女性から引き継いでいるものが多いんです。レディースの感性がちょっと入ったものが好きなのかもしれません」

「コットンのアウターにシルクのストールを巻くスタイルは、シップスの定番スタイルみたいなところがあって、格好いい先輩たちがしているのもよく見かけます。カジュアル担当になったいまはネクタイを巻かないので、首元が寂しくならないように、こういうのを巻くことも多いんですよ」
Photos: Shintaro Yoshimatsu Composition&Text: Masahiro Kosaka[CORNELL]
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