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服好きたちの私物のなかでも、とくに思い入れの強い「人生のベストバイ」を教えてもらう連載。ひとつには絞りきれないって? なら、3つ教えてください!
人生のベストバイ、3つ教えて!
今回の服好きゲストは、スタイリストの瓜坂拓海さん。
1.〈NICENESS〉のウールスラックス
「ナイスネスのスラックスは、去年の春夏シーズンに買ったものです。スラックスはわりと好きなアイテムのひとつなんですが、これはなかでも気に入っています。『それどこのですか?』って、この業界のひとから聞かれることも結構多いんです」
「黒地に、金色の糸が織り込まれていて、それが光の当たり具合でストライプ柄のように見えます。シンプルだけど当たり前すぎない、そのバランスに惹かれました」
「靴は、結構何にでも合わせちゃいます。革靴もいいしスニーカーもいいし、夏場は、リカバリーサンダルでハズしたりするのもいい。そうやって何でも受け止める洋服って、それ自体がぼんやりしたものが多いですが、これはそういうものとも違うというか。やっぱり、ちょっとひねりが効いているのが魅力です」
「仕事柄、スタイリングにはよさそうだけど自分では着ないなって洋服もあれば、自分が心から着たいと思えるアイテムもあって。そこは、考え方が違ったり、明確に棲み分けがあったりするんですけど、このスラックスは、まさに仕事抜きで着たいと思えたもの。そっちの比重が大きいほど、のちにベストバイだと感じることが多い気がしますね」
2.〈YUICHI TOYAMA〉の眼鏡
「もともとセルフレームの眼鏡を探してショップへ買い物に行ったとき、試しに掛けてみたらすごくしっくりきて、目的そっちのけで買ってしまった眼鏡。予想外の買い物でしたが、手持ちのどの眼鏡よりも自分にピッタリだと感じました」
「ツーブリッジで少し尖ったデザインで、モノだけ見ると、奇をてらった印象を受けますし、顔周りに変化は出ますが、でも、飛ばした感じにはならないというか。意外と曲線的で、やわらかいフォルムだからでしょうか」
「最近久しぶりに髪を短くしたのですが、長髪でも短髪でも、どんなヘアスタイルにもハマるような気がしています。そういう眼鏡はずっと探していて、ようやく巡り会えました。自分のなかでは、毎日かけられる眼鏡の終着点と言えるかもしれません。フレームがゴールドのタイプもあるので、買い足しも検討中です」
3.〈LEMAIRE〉の柄シャツ
「このシャツも衝動買いでした。たしか一昨年くらいのコレクションで、インドネシア人アーティストとのコラボシリーズ。ショップで見つけたとき、まずシャツの柄に直感的に惹かれて、そのあとでルメールだと気づいて、『ルメールにこんな柄シャツあるんだ!』って、その意外性に惹かれたんです」
「紹介した3点は、どれもわりと近年買ったもので、買ったきっかけは衝動的なものです。もしかしたら“ベストバイ”として挙げるアイテムとしては、珍しいチョイスかもしれません。ただ実際、たとえばウェブでしっかり下調べをしてから買った洋服よりも、直感で買ったものの方が、飽きずに長く着られることが多いんです」
「仕事に関しても似たようなところがあります。最初に直感でスタイリングを組んでみて、でも不安もあるからいろいろと考えていくつかのスタイリングを用意してみる。ただ、結局は、最初に思いついたスタイリングに帰ってくることが意外と多いんです」
「学生時代やアシスタント時代に買った洋服もわりと取ってあるので、ほかに迷ったアイテムもありますが、いまの気分にも正直に選んでみた3点です」
Photos: Shintaro Yoshimatsu Composition&Text: Masahiro Kosaka[CORNELL]
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