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服好きたちの私物のなかでも、とくに思い入れの強い「人生のベストバイ」を教えてもらう連載。ひとつには絞りきれないって? なら、3つ教えてください!
人生のベストバイ、3つ教えて!
今回の服好きゲストは、エディフィスでプレスを務める桂 大地さん。
1.〈J.M. WESTON〉のローファー
「エディフィス歴でいうと、いよいよ10年目に差し掛かっているところなんですが、このウエストンのタンカラーのシグネチャーローファーには、すごく思い入れがあるんです」
「というのも、ウエストンは『フランスの高級靴といえば』なブランドで、エディフィスのスタッフたる者、だれもが入社して一足は手にするっていうのが伝統みたいなところがあって。僕にとっては、このローファーがその1足目でした。ただ、洋服屋あるあるですが、金銭的な理由で数年後に手放しちゃって……」
「それからしばらく時間が経った3年前、エディフィスというブランドを体現するべきプレスという役職に就いたとき、改めて買い直したのがこれなんです。人生の転機に、ふと脳裏に浮かんだというか」
「王道に少しひねりを加える文化やスピリットが、エディフィスにはあります。だから当時の僕も、この茶色すぎも赤すぎもしない絶妙なカラーリングに魅力を感じました。固すぎない洒脱なフレンチ感があるというか。履いてみると、意外と合わせやすいんです。それでいて、黒よりも圧倒的に洒落て見える。茶靴を履きこなせるひとが一番オシャレ、って言いますし」
「この靴に対する印象は、当時もいまも、いい意味でぜんぜん変わりません。当時と合わせるブランドが代わっても、違和感がない。いつ、どんなシチュエーションで見ても、これはこれというか。それが魅力であり、名品たるゆえんかもしれません。マイスタンダードですね」
2.〈COMME des GARÇONS〉のシャツ
「最近出張で京都へ行ったときに、BARDというセレクトショップに立ち寄りました。ブランドセレクトはすごくストイックに絞ってあって、内装は、京都らしさもありつつモダン。その空間にめちゃくちゃシビれて。大きな平台に整然と並んでいたコム デ ギャルソンのシャツを手に取ったんです」
「話は変わりますが、学生時代、あるセレクトショップでバイトしていました。めちゃくちゃ尖ったスタッフが多くて、なかでも店長は、社内のスタイリングコンテストで毎回1位を獲るような服好きでした。朝礼では、その日のスタイリングのテーマを全員言わされて、ロクなことが言えないと、『お前もう明日から来なくていいよ』とかって叱られて。それだけプロ意識も高かったし、服への造詣もすごくて。そこで、洋服屋としての基礎を叩き込まれました。洋服の世界の原体験です」
「そのセレクトショップがアメリカテイストの店だったのもあって、その店長は、ギャルソンシャツをアメリカっぽく着こなしてて。それがめちゃくちゃカッコよかった。『服は散々買ってきたけど、服好きはギャルソンに戻ってくる』っていう言葉も、強烈に残っていて」
「このシャツが“いいモノ”っていうのは、もうわかりきっているんですけど、あの京都のショップ空間にあると、より素敵に見えたというか。どこに行っても同じ洋服が変えるいまの時代だからこそ、“どこで買ったか”にセンスが問われると思います。この業界にいるとなおさら、そういうことが気になるし、気にしていきたいと思っています」
3.〈KOOKY ZOO〉のデニムパンツ
「学生時代はアメリカ古着が好きでした。だからヴィンテージデニムも、それなりに持っていて。通っていた吉祥寺の古着屋の店主に勧められてリーバイス®︎の501®︎を買ったのが最初で、517や646、50sのペインターなんかも持っています」
「クーキーズーは、友人がPRをやっていて、誘われて展示会へ行ったのが最初です。正直なところ、ぶっちゃけデニムなんて死ぬほど持ってるし……って思っていたんです。ヴィンテージの子ども服をデザインソースにしているっていうのも、わりと古典的というか、いわゆるリプロダクト系かな?とか思ったりもして」
「ただ、展示会に立っていたクーキーズーのデザイナーさんのスタイリングがめちゃくちゃカッコよくて。洗いのかかったクーキーズーの上下に、6センチヒールくらいあるブーツを合わせていました。そして、いざ並んでいるアイテムをまじまじ見ると、知識や経験が半端ないことにも気づいて。それで、もう一気に持っていかれちゃいました……。ギャルソンの話もそうですけど、服よりまず“ひと”に食らっちゃうことが多いですね」
「それからは、まんまとこればっかり穿いちゃってますね。現行のデニムブランドのなかだったらダントツで好きなブランドだし、むしろ、ヴィンテージを穿かなくなっていて。ある意味これが本物だなって思ったりもしますね。ジジイになっても穿いていたいデニムです」
Photos: ITCHY Composition&Text: Masahiro Kosaka[CORNELL]
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