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服好きたちの私物のなかでも、とくに思い入れの強い「人生のベストバイ」を教えてもらう連載。ひとつには絞りきれないって? なら、3つ教えてください!
人生のベストバイ、3つ教えて!
今回の服好きゲストは、Steady Study プレスの坂巻凜太郎さん。
1.〈Lewis Leathers〉のライダースジャケット
「3年前くらいだったか、上野の革ジャン屋で買ったルイスレザーのライダースジャケットです。上野は当時から好きでよく通っていて、そのときはタイミング的にというか、『今日買おう』って即決でした」
「冷静になってみれば、たぶん、原宿のとんちゃん通りにあるルイスレザーへ行って、カスタムオーダーでサイズなんかを調整しながら買うのが普通だと思います。でも僕はわりと、“思い立ったが吉日精神”で買い物することが多いんです」
「ルイスレザーが欲しいと思ったきっかけは、ポール・マッカートニーが着ている写真をなにかで見かけて、それが記憶に残っていて。そのスタイリングを真似て、マフラーをインして、グローブをつけて出かけたこともあります。あと、日本アカデミー賞で、スタイリストの猪塚(慶太)さんが菅田将暉さんをスタイリングしていて。たしか、タイドアップしたシャツの上にルイスを着せていたんですけど、それもカッコよかったですね」
「買ってからは、どこへ行くにも、毎日、狂ったように着ました。その頃は、501®︎のビッグEとサイドゴアブーツを合わせたりして。最近はスウェットのセットアップなどカジュアルなスタイリングも多いのですが、たまにこの革ジャンを引っ張り出して着ると、やっぱり背筋が伸びますね」
「買ってからかなり着倒したつもりですが、まだまだ綺麗な状態です。古着屋で見かける雰囲気のあるルイスレザーとか、あの感じになるまでは、これからさらに相当着ないといけないんでしょうね。まさに一生モノです」
2.〈Godard Haberdashery〉のフレアスラックス
「ゴダール ハバダッシェリーの笹子(博貴)さんには、日頃から本当にお世話になっていて、すごく好きなショップです。これは、そんなゴダールのオリジナルスラックス」
「パーソナルオーダーして、大阪のラクアアンドシーというテーラーで仕立てられたものです。生地はデッドストック。ストレートのスラックスを、無理やり絞ってフレアにしたような独特のシルエットが気に入っています。シャツもジャケットもいけるし、もちろんルイスレザーもいいし、フーディにキャップを被っても『逆に』みたいなところがありますし。すごく汎用性が高くて、おまけに褒められ服でもあります」
「セットアップでのオーダーも可能でしたが、あえてスラックスだけにしました。というか、ゴダールとしても、スーツスタイルありきで提案していないんですよね。『ハバダッシェリー』は“洋品店”という意味で、だからあくまでスーツ屋ではないよっていう。そういうところも面白いですよね」
「洋服を買うときって、わりと『〇〇が欲しい』と目がけて買いに行くことが多いんです。でもゴダールだけは、仕事終わりにちょっとだけ寄って、おしゃべりするとか、そういう場所で、個人的にはほかのどのお店とも違うんですよね。笹子さんの提案するものっていつも一歩二歩先を行っているので、仕事のインスピレーションをもらったりすることも多いですし」
3.〈The Row®〉のテーラードジャケット
「ザ ロウってなにがすごいんだろうって考えたとき、とにかく、ハンガー面が綺麗なんですよね。誤解を恐れずに言うと、ヘタしたら着ているときよりも。たぶんそれって、“プロダクト”として美しいから。そういう風に僕は捉えてるんですけど」
「また、最高の生地で作られた普通の服、というバランスにも惹かれます。だから、生地や縫製などのディテールを見ると、思わず圧倒されますし。とくに、ここ数年のメンズは素晴らしいと思いますよ」
「生地はウール/シルクで、スルッとした手触りです。光沢があって、ハリと滑らかさもならではで、チョコレートブラウンみたいな色味もいいんですよね。ボックス型なので、そういう意味ではすごくアメリカらしさを感じさせますけど、でもザ ロウがやると、ものすごくモダンに見えるのが不思議です」
「これまでは、体にしっかり沿うフィッティングのジャケットを着ることがほとんどでした。それに比べると、これは肩も大きいし、袖も僕にとっては長くて、だから新鮮なバランス。モード文脈のジャケットというか。それもあってか、ばっちりハマるコーディネートがいまだに見つけられなくて……。まだ1回も着ていないんです(笑)」
「もちろん『いいな』と思って買ってるんですけど、これもルイスと同じく衝動的に買っちゃった服のひとつですね。イメージは湧いてないけど、とりあえず買っちゃうか、って」
「気分で買うにはかなり高価なものですが、清水の舞台から飛び降りるようなヒリヒリする買い物が自分には合っていると思うし、本当にいいと思うモノには気持ちよくペイできる。それに、そうやってスパッと決めたものって、意外と人生のベストバイに上がってくる気がします。だから、未来の自分を信じたベストバイですね」
Photos: Shintaro Yoshimatsu Composition&Text: Masahiro Kosaka[CORNELL]
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