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服好きたちの私物のなかでも、とくに思い入れの強い「人生のベストバイ」を教えてもらう連載。ひとつには絞りきれないって? なら、3つ教えてください!
人生のベストバイ、3つ教えて!
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今回の服好きゲストは、ビームスでバイヤーを務める飯塚 昂さん。
1.〈LEVI’S®︎〉のGジャン
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「19歳のとき、地元・横浜にある『パセリ』という古着屋で買ったリーバイス®︎のGジャンです。高校生の頃から古着はめちゃくちゃ好きで、なかでもこれは、初めて買ったヴィンテージ古着。ブランケットの裏地が付いた、2ndタイプです」
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「たしか、39,800円で買いました。かなりボロボロだったのと、サイズがわりと小さかったのもあって、当時にしても破格の安さで。掘り出しモノでした。でも、このタイトなサイジングはいまの気分にも合うし、毎年かならず1回は着ています」
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「自分にとってのヴィンテージ集めの、まさにルーツですね。洋服屋で働きはじめてから、お金がないときでも、このGジャンだけは売ったりできませんでした」
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「これを買ったのをきっかけに、1stも3rdも買ったし、ヴィンテージ古着のこともさらにいろいろ勉強するようになりました。リーバイス®︎は、ビームスに入ったいま、自分が担当するブランドさんでもあって、そういう意味でも、自分にとって欠かせない存在です」
2.〈DAIRIKU × SUGARHILL × BEAMS〉のリンガーT
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「このTシャツは、自分がバイヤーとしてひとり立ちするとき、なにか大きなものを仕掛けたいなと思い、初めて企画した商品です。バイヤーになるよりずっと前から、このふたつのブランドは拝見していて、両ブランド同士も仲がいいのを知っていましたし、僕も含めてみんな同世代で。そういう若いブランドを、自分が率先して発信していきたいと意気込みました」
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「バイヤーになるタイミングで取り扱いを提案できるのは、大抵1ブランドだけのことが多いんですけど、どうしても、2ブランドを同時にスタートさせたくて、プレゼンの場でも、先輩バイヤーたちに熱い気持ちをぶつけました。ちょうど70’sのカルチャーも流行りはじめていた頃で、そのときの両者のコレクションも、ともにヒッピーカルチャーに焦点を当てたものでした。自分もそうしたカルチャーは昔から好きだったので、もう絶好のタイミングだったというか」
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「Tシャツのプリントは、ウッドストックのフォントを使ったもの。着古したような色合いを表現した生地と合わせて、気分だったリンガーTの形に落とし込みました」
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「発売時には、メンズノンノのYouTubeでも紹介してもらいました。先輩たちに大口を叩いただけに、『売れなかったらどうしよう……』と思っていましたが、発売日の開店1時間後には完売。首がつながりました(笑)」
3.〈RED WING〉のエンジニアブーツ
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「古着を好きになったきっかけは、高校1年生の頃に後ろの席だった同級生。オシャレだったそいつに影響されて、休みの日に下北や原宿に行くようになって。のちのち、そいつもビームスに入って、少し遅れて自分もこの会社に。あと父親の影響もあって。アメカジブランドが好きで、リーバイス®︎とかコンバースとかバンドTシャツとか、子どもの頃には勝手に借りて着ていました」
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「レッドウィングも、小学生の頃、そんな父親に無理やり履かされていたんです。でも、いまでも男クサイものや着こなしがすごく好きなのは、その頃に見てきたものが大きいですね。そういう意味でも、こうしたエンジニアブーツを、やっぱり一番よく履くんです。これは、3年前、バイヤーとしてレッドウィングを担当するようになってから買ったもの。良いのを一発持っておこうと、もう生産されていないヴィンテージを見つけて買いました」
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「2023年、フューチャー アーカイブというプロジェクトを立ち上げました。そこでディレクションしている企画があって、その初回でレッドウィングを取り上げたのですが、いまの若い世代にもこうしたブーツのよさを伝えたくて、これと同じ型をどうにか再生産できないかと掛け合ったんです」
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「あいにく再生産は叶いませんでしたが、アメリカ本社に眠っていたデッドストックを15足も取り寄せることができて、ソールを張り替えたオールブラックの記念モデルとして販売することができたんです。先ほどのリンガーTもそうですが、バイヤーとしての自分のルーツです」
Photos: Taiki Kasuga Composition&Text: Masahiro Kosaka[CORNELL]
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