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時代を超えて愛され続ける “定番”アイテムには、完成されたデザインとしての魅力が詰まっている。今回は未来の【永久定番名品】の呼び声も高い「ユニクロ」の定番アイテムにフォーカス。春夏シーズンにおすすめの定番ベスト3を短期連載でお届けする。第1回は今シーズン、ユニクロの推しアイテムでもあるスウェットシャツを深掘り。
「ユニクロ」とは?
1984年に「ユニクロ」の第1号店となる「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」を広島市にオープン。カジュアル衣料品を仕入れて販売する小売店としてスタートし、1988年から「ユニクロ」をブランドとして展開。1998年にフリースが大ヒットして有名に。2013年からは「LifeWear(ライフウエア)」をコンセプトに掲げ、定番に注力。
1.ユニクロのスウェットシャツの歴史
ユニクロがグローバルに打ち出すコンセプト
「LifeWear」を体現する新定番
広島市に1号店を出店してから、今年で40周年を迎えたユニクロ。今では国内外に2400 店舗以上(2024年2月現在)を構え、日本を代表するグローバルなファッションブランドになった。ユニクロは柳井 正によって立ち上げられたが、今も本社を置いている山口県の宇部市で1949年に創業された紳士服専門店「メンズショップ小郡商事」がルーツだ。
「独自のカジュアルファッションを売る店」が原点
1984年に父から家業を引き継ぎ、代表取締役社長に就任した柳井 正は、山陽地方随一の繁華街だった広島市の袋町に「ユニーク・クロージング・ウエアハウス(UNIQUE CLOTHING WAREHOUSE」を出店。店名には「ほかでは買うことのできない独自のカジュアルファッションを、自由に選んで買うことができる倉庫のような店」という意味を込めた。
その後は郊外のロードサイド(幹線道路沿い)に倉庫のような大型店舗を出店し、ファミリー層に人気を博した。アメカジやイタカジ(イタリアンカジュアル)がファッションシーンを席巻していた80年代中期、ユニセックスでカジュアルウエアを取り扱う店はまだ少なく、ユニクロは西日本で成功を収める。
1991年に、社名を小郡商事から現在のファーストリテイリング(FAST RETAILING)に変更。ユニクロをオリジナルブランドとして展開するようになり、店舗数も増やしていった。90年代にはユニークな広告でも注目を集めるが、アウトドアファッションがストリートに浸透した1998年に、アウトドアブランドでは1万円以上した高級品のフリースを1,900円という驚きの価格で販売し、大ヒット。同年11月にはユニクロ原宿店をオープンし、東日本でもブランドとして認知されるようになった。
ユニクロのフリースはロゴなどがなくカラーバリエーションが豊富で、2000年には51色を展開し、老若男女問わず爆発的に売れた。機能的なウエアを日常着として提案して、世の中に定着させる。フリースにはユニクロの原点があり、現在の「LifeWear」につながる道筋をつくった。
グローバルな展開の中心に
“究極の日常着”を据える
90年代後半にはGAPやZARAといった海外のファストファッション・ブランドが日本に上陸。グローバル化の波に乗って2000年代はユニクロも海外に進出する。2001年の英国ロンドン店を皮切りに海外の主要な都市に出店。
その後もヒートテック、エアリズムなど機能的なウエアやカットソー、ジーンズといった定番アイテムをヒットさせ、その「高品質」なものづくりでステータスを築く。また2009年にはジル・サンダーとの取り組みによって「+J」がスタート(2011年に第1期終了)。
ファストファッションとデザイナーとのコラボレーションがたびたび話題をさらった当時、ユニクロが「上質なミニマル」を打ち出していたジル・サンダーとのタッグを組んだのは衝撃だった。2011年にいったん「+J」は終了するが、2012年からユニクロが打ち出したコンセプト「LifeWear」に昇華されたと感じている人は多いはずだ。
ユニクロは「LifeWear」を「あらゆる人の生活を、より豊かにするための服。美意識ある合理性をもち、シンプルで上質、そして細部への工夫に満ちている。生活ニーズから考え抜かれ、進化し続ける普段着」と定義。ユニクロの看板商品となった機能的な服=ヒートテック、ウルトラライトダウンなどとともに日常着のベースとなるベーシックなデニム、シャツを「LifeWear」の主力商品=定番として打ち出す。
定番を見直してよりよいものに進化させる
トレンドを鑑みつつ、定番をブラッシュアップしていく作業に以前にも増して注力するようになった。そのひとつが今回紹介するスウェットシャツだ。ユニクロのスウェットシャツはフリースが大ヒットした当時からラインナップされ、長年、定番として位置づけられてきた。
定番のスウェットシャツは、ヴィンテージスウェットに見られるようなフロントのガセットがアイコンだ。サイズ感やフィッティングは時代の変化などに合わせて数年ごとにデザインを見直しているが、ガゼットはそのまま残っている。近年の大きな変化としては、20年からラグランスリーブがセットインスリーブに。また2022年には生地がよりなめらかなタッチのものにアップデートされた。
ユニクロがほかの低価格帯ブランドと一線を画しているのは、現代の【永久定番】をつくろうとしているところだ。いわゆる「ファストファッション」に分類されるブランドは、トレンドを素早く落としこんで手ごろな価格で店頭に並べる。対してユニクロは、素材開発などに時間をかけるスロウなものづくりを実践して、“長く着られる定番”を大量生産することで価格を抑えている。
シンプル、ベーシックを掲げるスタンダード・ブランドの大半は、どこかにロゴやタグ、ワンポイントが付いている。ユニクロはフリースが大ヒットした時代から徹底してロゴを排除してきた。このアノニマス性も現代では高く評価されている。
2010年代中盤に流行したノームコアが最近またリバイバルしているが、ユニクロはその中核をなすブランドとしても、重要な存在に。今ではファッションの真価がわかるおしゃれ通に支持されているのも、この歴史があってこそだ。
2.ユニクロのスウェットシャツの
ディテール解説
ガセットがアイコンの
クラシックなルックスも魅力
ユニクロの定番スウェットシャツは、ラグランスリーブだった時代もあるが、2020年からは現在のセットインスリーブのデザインに。2022年には、表地は太めの単糸を使用することでなめらかに、裏地は2本撚った毛羽立ちの少ない糸を使用して、やわらかいタオルのような肌ざわりのスウェット生地にアップデートされた。サイズ展開はS・M・L・XL(※オンラインストアではXS・XXL・3XL・4XLサイズの取り扱いもある)。
〈商品名:スウェットシャツ(長袖)〉
05 GRAY
リラックス感のあるモダンなシルエット
ジャストサイズがスタンダードになった今のファッションに合わせて、肩もドロップしすぎず、身幅もワイドになりすぎない“ちょうどいい”バランスに。リブはやや長めにして、締まった表情に仕上げている。定番の05グレーは霜降りで、アメカジやストリートスタイルと好相性。
1950年代頃までのヴィンテージスウェットに見られる、ガセット(フロントの三角の切り替え)がアイコン。襟元はタグレス仕様で、ボディにロゴを直接プリントしている。ロゴがきれいに見えるように、首裏部分だけ表地を貼り合わせている。
1950年代のオーセンティックなスウェットシャツをベースにしたセットインスリーブ。裏地の肌当たりがよくなるなるように、縫い代が膨らみにくい「またぎ2本針裏振り」で縫製されている。
スウェットの印象を決めるリブ。密度は細かく、やや長めと、改良を繰り返してベストバランスを追求した。やさしく手首をグリップしてくれる。
ボディはコットン100%だが、リブ部分は伸びダレしないようにポリエステルの混紡に。リブの全体がワントーンに見えるように染色にもこだわった。
ロゴのプリントを美しく見せるために表地を貼り合わせた首裏のステッチが、ユニクロのスウェットを象徴するディテールに。
目が細かくなめらかな表面。染色にこだわった糸を使用して上品な霜降りカラーを実現。
「裏毛」と呼ばれる細かいループが連なる裏地。表面は霜降りだが、裏面はナチュラルなオフホワイトのループに。コットン100%でタオルのようなふんわりとした肌ざわり。
3.ユニクロのスウェットシャツの
カラーバリエーション
定番もシーズンカラーも
霜降りと無地をバランスよく展開
霜降りのグレーと単色のブラックが年中店頭に並ぶ定番色で、ネイビーとオフホワイトを準定番色として展開。シーズンカラーはトレンド感のあるラインナップに。展開数は決まっていないが、毎シーズン、トータルで10色前後をそろえる。
〈商品名:スウェットシャツ(長袖)〉
定番カラー
09 BLACK
ユニクロでは色出しにもこだわっており、定番カラーでも複数ラインナップすることがあるため、カラーをナンバリングしている。スウェットの定番の黒は09ブラック。シャープな印象で、モードカジュアルにも合わせやすい。
準定番カラー
69 NAVY
69ネイビーはダークトーンが特徴で、トラッドからノームコアまで幅広く対応。ホワイトデニムにローファーやデッキシューズでフレンチアイビーやマリン系のコーディネートも今シーズンは気分だ。
単色のスウェットは裏面も表面と同色。裏面は毛羽立ちの少ない糸を使うことで、中に着た服に毛羽がつきにくいのもうれしいポイント。
01 OFF WHITE
真っ白ではなく、ナチュラルでどんなトーンにもなじむオフオワイトを準定番に。春夏にトライしたいカラーパンツや柄パンツも、このオフホワイトのスウェットシャツなら品よくこなしてくれる。
シーズンカラー
64 BLUE
くすんだトーンが今っぽい64ブルー。ニットのような感覚でスラックスと合わせて大人っぽく着こなすのがおすすめ。シャツ・インでタイドアップのようなトラッドな着こなしもモダンに演出してくれる。
31 BEIGE
濃くもなく薄すぎない、ニュートラルな31 ベージュ。ブラック、ネイビー、ブラウンといった定番ボトムと相性のいいカラー。淡いベージュパンツを合わせたワントーンでノームコアなスタイリグも粋。
71 PURPLE
71パープルは、ミックス調のピンク系カラー。くすんだトーンのニュアンスカラーで、1点取り入れるだけでおしゃれの格が上がる。グレーのスラックスで大人っぽくいくもよし、ジーンズでレトロアメカジを狙うもよし。
編地を見ると複数のカラーが濃淡で使われているのがわかる。こだわりの染色がモード感のあるニュアンスカラーをつくりあげる。
52 GREEN
052グリーンもニュアンスのあるメランジカラー。印象派の絵画のようなロマンティックな空気感をまとう。モノトーンから同系のグリーン、Y2Kなポップカラーまで意外に相性がよく、着こなしの鮮度を上げてくれる。
問い合わせ先
ユニクロ 0120-170-296
ECサイト
4.みんなのユニクロ
「スウェットシャツ」スナップ!
おしゃれな人たちがユニクロのスウェットシャツをどんなコーディネートで着ているか? スナップとコメントでお届け!
「ユニクロ」のスウェットシャツの
正解着こなし①
吉沢成夏さん/会社員
「SNSではトレンド寄りのアイテムがバズッていますが、僕にとってユニクロはハイクオリティでスタンダードなアイテムを好みのカラーやサイズで見つけるブランド。定番のスウェットシャツは軽くてやわらかくて、春にサラッと着るのにちょうどいい感じ。ジャストサイズはLですが、大きめのカウラムのシャツに合せたくてXLにしました」
「黒スウェット×紺デニムのベーシックなコーディネートは、春らしいブルーのストライプシャツがアクセント。ラフになりすぎないように足元はパラブーツのシャンボードで、品よくまとめました。気温が上がってきたときは、スウェットをこんな風に肩にかけて温度調整しています」
「やわらかくて肌当たりのいいスウェット素材だから、巻き方のアレンジもしやすいんです。ユニクロのスウェットシャツはルックスもクリーンで、カジュアルだけでなくきれいめコーディネートにもマッチして気に入っています」
「ユニクロ」のスウェットシャツの
正解着こなし②
稲井孝太朗/メンズノンノモデル
「最近黒ばかり着ていたので、春は少し軽さのある着こなしがしたいなと思ってグレーのスウェットをチョイス。ヴィンテージっぽいスウェットってヘヴィウェイトのものが多いんですが、ユニクロのは厚すぎず薄すぎず、ちょうどいいあんばいでコーディネートがしやすいんです。アウターを脱いでスウェットイチになったとき、部屋着っぽく見えないように、チェーンアクセサリーを着けました」
「きょうはANIKIで買った古着の革ジャンとアワーレガシーのユーズドっぽいコーデュロイパンツでグランジを意識したコーディネート。足元はラストリゾート エービーのスニーカーで今の気分に寄せました。自分にジャストサイズのXLのスウェットシャツは着丈も短めでバランスがすごくいい。霜降りグレーのスウェットは原点にして頂点といったイメージがあって、一枚は持っていたい思っていました。奇をてらわないユニクロにして正解でした」
「ユニクロ」のスウェットシャツの
正解着こなし③
後藤留維さん/スタイリスト
「普段、色はあまり使わないんですが、カラーアイテムに挑戦したいと思ったとき、ユニクロならためらわずに買えるのがありがたいです。カーキグリーンの古着のパンツをきれいめに見せたくて、このグリーンのスウェットシャツをコーディネートしました。短めの着丈が今っぽくて、裾のリブがしっかりしているので折り返してベルトにかける着こなしもキマりやすい」
「春はコーディネートに軽さがほしくなります。グリーンが映えるようにFROGISALIEN(フロギサリアン)のニットキャップやスニーカーは白でまとめました。スウェットシャツとパンツのワンツーコーディネートは、襟元から白Tシャツやネックレスのチェーンをチラリとのぞかせるなど、ネックまわりにも気を配ります」
Photos:Erina Takahashi(still&snap) Stylist:Toru Asano Composition & Text:Hisami Kotakemori
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僕らの永久定番名品ファイル