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時代を超えて愛され続ける “定番”アイテムには、完成されたデザインとしての魅力が詰まっている。ここでは、そんな永久定番名品のディテールから歴史までを深掘り。下着として誕生したヘインズのTシャツが若者のファッションのマストアイテムになった歴史と、バリエーション豊富な現代のパックTについて詳細に解説する。
P・H・ヘインズ ニッティング社は1901年に、アメリカ・ノースカロライナ州にて設立された。1924年に「ヘインズ」のブランドロゴを赤ラベルに。1947年には、複数枚のTシャツをリーズナブルに提供するパックTシャツを発売し、一時代を築く。
1.ヘインズのパックTシャツの歴史
120年を超えるヘインズがパックTシャツの
プレミアムブランドになった進化の過程
| 1901年
アメリカ南東部のノースカロライナ州で、プレザント・ヘンダーソン・ヘインズとその弟ジョン・ウェスレイによって、「P・H・ヘインズニッティング社」が設立された。紳士用のアンダーウエアを製造する会社としてスタートし、工業化が進展したこの時代に、優秀な技術者を集めて縫製工場を稼働させ、事業を拡大していった。
▲創立者のヘインズ兄弟。ふたりはもともとウィンストン・セーラム地区でタバコ製造事業を経営していたが、売却して繊維産業に進出する。
| 1913年〜1920年代
ヘインズは画期的なアイデアで新しい商品を次々と開発。1913年にワンピースタイプの斬新なアンダーウエア「ユニオン・スーツ」を発表し、大ヒットを博す。1920年代には全国キャンペーンを展開し、アパレル業界でも有力なメーカーに成長。
▲大ヒットした「ユニオン・スーツ」の広告。$1.00と記載があるが、現在の$20~25くらい。HANESロゴは黒囲み、下にはP.H.HANES KNITTING CO.の文字も。
1924年になると初代となる“赤ラベル”を発表し、ヘインズ社のすべての商品を「ヘインズ」ブランドに統一。商品に赤いブランドロゴを付けることで、ブランドとしてのイメージを定着させることに取り組む。同時に全米での広告展開も開始して、ヘインズを世間に浸透させていく。
▲1900年代初頭はモノクロ印刷に続いて、赤を使用する3色印刷が流行したため、赤ロゴはカタログや広告とも相性がよかった。
| 1930年代
1930年代にはアンダーウエアブランドとして誰もが知る存在に。1932年に現在のブリーフの原型となるニット素材の紳士用ブリーフ「スポーツ」を発売。当時はまだ珍しかったカラーバリエーションを豊富に展開して、成功を収める。
▲1927年の広告。パッケージにも赤いロゴがしっかり印刷されている。
| 1940年代
1940年代になるとボーイズアイテムの展開にも手を広げ、アンダーウエアだけでなくアウターとして着られるようなTシャツもリリースするように。アンダーウエアのバリエーションもタンクトップ、トランクス、ブリーフと増え、商品数や幅を拡大していった。
▲左/1941年春のカタログ。今も色あせないイラストの表紙。右/中ページにはモデル着用のカットを掲載。ボトムスもバリエーション豊富に展開。
ヘインズは「コンフォート(快適さ)」を大切なコンセプトとして、魅力的な製品を開発し続けた。そしてアメリカ経済の成長期でもあった、第二次世界大戦後の1947年。ヘインズのアンダーウエアで毎日を快適に過ごしてほしいという願いから、複数枚を手頃な価格で提供できるパックTシャツを発売。「衣類をパッケージに入れる」という当時なかった発想で、エポックメイキングなアイテムに。
▲1940年代のディスプレイケース。ブリーフとタンクトップをセットで並べ、どちらも手に取りやすく工夫している。
| 1950年代
1950年代に入るとヘインズはロゴのデザインを一新。商品のクオリティの高さが広く認知され、アメリカのアンダーウエアのマーケットで不動の地位を確立した。広告ではイメージだけでなく、ハードに着こなしても、洗い続けても着心地は変わらないというメッセージも打ち出して品質のよさもアピールしていく。
▲ヘインズの2代目ロゴ。フォントが変わり、形状も白縁なしに変更。
▲ヘインズTシャツのタフさをアピールした1950年代の広告。新ロゴが採用されている。
| 1960年代
1965年に、ストッキングや靴下で成功を収めていた同族の会社、ヘインズホージャリー社と合併して、ヘインズコーポレーションとなり、さらなる収益を上げていく。1960年代にはサーマルTシャツ、伸び縮みを抑制する独自のコットン素材を使用したTシャツ、アウター志向のMr.Muscle T-shirtなど、さまざまなTシャツを発売。
▲1960年代に発売されたMr.Muscle T-shirt。筋肉質の体型にもフィットすることを訴えるイラストが添えられている。下の社名はHANES CORPORATIONに。
| 1970年代
1970年代に入り、ヘインズは再びロゴを変更。アメリカではヒッピー・ムーブメントが盛り上がり、Tシャツがファッションアイテムとして市民権を得る。メッセージを伝えるプリントTが流行し、ヒッピー文化の象徴に。ヘインズはそのボディ用Tシャツとして肉厚な「BEEFY-T®」を開発した。
▲1970年代のヘインズのロゴ。ブランド名が大文字小文字のミックスになり、形状も変化。
日本でも1970年代にはアメ横や神戸高架下など輸入品に強いエリアで、ヘインズのパックTシャツが売られるようになっていた。1975年に当時のアメリカ製品を紹介したムック本『Made in U.S.A catalog』が発行されると、アメリカ製品への注目が集まり、巷にアメカジブームが起こる。
▲1970年代に登場した首回りが型くずれしにくい、“Double Plyneck”仕様のパックTが登場。
| 1980年代
原宿ローラー族に代表される50’sリバイバルとアメカジブームの相乗効果で、ジェームズ・ディーンよろしくリーバイスのジーンズにヘインズの白Tシャツを合わせるファッションがストリートでブレイク。ヘインズのパックTシャツが、日本のファッションシーンにも定着していった。
▲1996年のオリンピックではオフィシャルTシャツのボディとしても採用され、記念のロゴ入りピンバッジも多様なデザインで製作された。90年代にもロゴの変更があり、Hヘインズロゴが使用されている点に注目。
| 1990年代
Tシャツブランドとして世界的に有名になったヘインズは、1994年にアメリカで開催されたFIFAワールドカップのオフィシャルTシャツのボディに抜擢され、1996年のアトランタ・オリンピックの際には公式スポンサーにも選出された。
▲「No More Scratchy Laber!!(チクチクするラベルはナシ!!)」というキャッチフレーズとともに、タグレスロゴを「TAGLESS COMFORT」としてアピール。2002年のスタート時はHロゴだった。
| 2000年代
世界的に成功を収めるグローバルカンパニーになってからも、ヘインズは進化を続ける。2002年にタグ式だったネームを熱転写ネームに刷新。首筋の違和感を解消した「タグレス3P-Tシャツ」を全米で発売し、ヒットさせる。
▲Hマークのボックスロゴから現在のフラッグのロゴに。
2005年に現在のフラッグロゴにリニューアルされ、定番のタグレス3P-Tシャツがパッケージデザインをリニューアルして新登場。この頃には赤・青に加え上位モデルのゴールドパックもラインナップしている。
▲2005年にリニューアルされたパッケージ。現在も使われている「Look!No Tag!(見て! タグなし!)」のキャッチフレーズが。
| 2010年代
アメリカを代表するブランドとして存在感を増した2011年には110周年を盛大に祝い、パックTシャツ発売から70周年を迎えた2017年には、アニバーサリーパックTシャツも発売に。2010年代中盤にはノームコアファッションの流行もあって、ヘインズのパックTシャツが再びファッションシーンで脚光を浴び、別注やコラボなども増加。
▲70周年の際には赤青を混合にした3枚パックT、タンク・半袖・長袖を3枚セットにした「レイヤードパック」も発売。
その後も「ヘインズジャパンフィット」、今年発表の「ヘインズT-SHIRTS SHIRO」などの新製品も増え、パックTのプレミアムブランドとして支持されている。
2.ヘインズのパックTシャツの
ディテール解説
スタンダードから最新モデルまで
おさえるべきはこの6タイプ
3枚1パックが基本だが、ヘインズジャパンフィットのような2枚パック、ビーフィーTのような1枚だけのパックTもある。基本の赤パックはボディのディテールを詳細に、そのほかはパッケージとボディをベースに特筆すべきポイントを押さえていく。
〈3P赤ラベルクルーネックTシャツ〉
1947年に開発したパックTシャツの代表格
Tシャツ¥2,640/ヘインズブランズ ジャパン カスタマーセンター
メンズアンダーウエアの不動の地位を確立した3パックTシャツ。その代表的アイテムの赤ラベルはスタンダードなコットン100%の3枚入り。
パッケージの裏面には1901年からというヘインズの歴史とともに、商品の特徴がわかりやすく書かれている。
大きすぎず、タイトすぎないベーシックなフィット感&タックインもできるほどよい着丈。両サイドに縫い目のない丸胴編みで、コットンのソフトな肌ざわりも心地よい。
ヘインズを代表するタグレスの熱転写ネーム。ヘインズのフラッグロゴ横のサイズ表示は、パッケージと同じ赤で印刷される。
袖口と裾は、表からステッチが見えにくいブラインドステッチ仕様。丁寧に縫製されている。
両脇に縫い目のない丸胴仕上げで、裾もブラインドステッチ仕様。
ネック部分は甘めに生地を編んでいて、着こむほどに出る独特のクタリ感が特長。
〈3P青ラベルクルーネックTシャツ〉
ポリエステル混で伸びにくいタイプ
Tシャツ¥2,860/ヘインズブランズ ジャパン カスタマーセンター
コットンにポリエステルを25%ブレンドした青パック。シルエットやほかのディテールは赤パックと同様だが、肌ざわりは少しドライタッチだ。
パッケージの裏面には「PREMIUM BLEND PERFORMANCE WITH MORE COTTON COMFORT(コットンの心地よさに化繊混の機能性)」の文言が。「Stays White Without Bleach(ブリーチをせずとも白いまま)」の点も、ポリエステル混の特徴としてコメントされている。
丸胴編み、ブラインドステッチ仕様も同様。ヘインズのフラッグロゴ横のサイズ表示は、パッケージと同じ青文字。
〈3PゴールドラベルクルーネックTシャツ〉
編地を変えたコットンの上位モデル
Tシャツ¥3,520/ヘインズブランズ ジャパン カスタマーセンター
表面に凹凸感が生まれる交編(こうへん)生地を採用し、より表情豊かに仕上げた上位モデル。肌ばなれのよさにも優れた、よりソフトタッチのTシャツを3枚セットに。
「100% SUPERIOR COMFORT-SOFT COTTON(上質で気持ちいいソフトなコットン)」の文字が赤パックと違うところ。
シルエットや仕様は同じながら、コットンの質感が赤パックよりもさらにやわらかなのが魅力。ヘインズのフラッグロゴ横のサイズ表示は、パッケージと同じゴールド文字。
〈BEEFY-T Tシャツ〉
1975年に登場した1枚で着られる肉厚タイプ
Tシャツ¥2,200/ヘインズブランズ ジャパン カスタマーセンター
牛の顔をデザインしたパッケージでおなじみ。一枚で着ても透けない肉厚なビーフィーT。アウターTシャツとして現在も人気が高い。3枚パックのシリーズとはディテールも異なる。
身幅の広いボックスシルエットで、肩も大きめ。着丈は3パックシリーズよりも少し短めに設定されている。
ネックの仕様も3Pタイプとは異なる。タグレスのネック部分にはビーフィーTのアイコンが黒でプリントされている。
袖もしっかりダブルステッチ入り。目立たないようにあつらえつつ、強度は高い。
丸胴編みで、裾はダブルステッチ。肉厚だがやわらかいので着心地に定評がある。
ネックから肩にかけて肩テープ仕様のしっかりしたつくり。
〈2P Japan Fit クルーネックTシャツ〉
2019年登場の「透けにくい5.3オンス」
Tシャツ¥3,520/ヘインズブランズ ジャパン カスタマーセンター
日本人の体型に合わせたシルエットで開発された2枚入りTシャツ。ビーフィーTほど厚手でなく、1枚で着ても透けにくい5.3オンス生地を採用している。ガーメントウォッシュ加工を施し、着た瞬間から肌になじむ。
着丈が短めで、アームホールなどを細身にしたシルエット。丸胴編みで、ネックから肩にかけては肩テープ仕様。
〈Hanes T-SHIRTS SHIRO
クルーネックTシャツ〉
最高の白Tを追求した最新Tシャツ
Tシャツ¥2,750/ヘインズブランズ ジャパン カスタマーセンター
今年登場した最高の白Tと謳う新作。真っ白ではなく、ナチュラルな白を追求したオフホワイトのTシャツ。ピクトグラム&ロゴの、紙のパッケージにも時代感が漂う。1枚入り。
赤パックTシャツと同じコットン糸を双糸にして編み立てた、透けない厚み&ソフトさを損なわない7.0オンス生地を使用。肩と身幅がゆったりとしたアメリカンスタイルのシルエット。
襟のタグレスネームも白。オリジナルネームデザインを採用している。
3.ヘインズのパックTシャツの
最新別注をチェック!
セレクトショップ独自のアレンジに注目
セレクトショップの別注も多いヘインズのパックTシャツ。パックTのプレミアムブランドという地の利を生かしつつ、各ショップの独自性が出たパックTは秀作ぞろいだ。
Hanes × BEAMS
〈別注 Japan Fit 2pack T-shirts〉
Tシャツ(ヘインズ×ビームス)¥3,630/ビームス公式オンラインショップ
ジャパンフィットを白黒2色で別注
透けにくい5.3オンスの生地を使用して、日本人のために開発されたジャパンフィット。ビームスでは、白と黒の組み合わせで別注。パッケージもビームス仕様になっていて、「improved RIBリブ強度UP」は、ビームスからの提案で実現したこだわりポイントだ。
シルエットやディテールはそのまま、2023SSシーズンからリブの強度を高め、首元の形状安定性に優れたアイテムへとアップデート。タグレスネーム部分にはオレンジで「BEAMS」のロゴも。
Hanes × BEAUTY&YOUTH
〈別注Hanes 3PACK T-SHIRTS〉
Tシャツ(ヘインズ×ビューティー&ユース)¥6,930/ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ 丸の内店
2プライヤーンで上質なパックTに
2プライヤーン(双糸)を使用しつつ、通常のパックTのボディよりも目を詰めて編むことで透けにくく、1枚で着てもOKなTシャツに。襟元のリブも太めにして、重ね着などでネックを見せるときにも美しいTシャツに仕上げた。シャツを畳んだサイズの3枚入りパック。
シルエットなどはオリジナルの3パックTを踏襲。肌ざわりがよく、光沢もあって見た目にも高級感のある仕上がり。黒Tだけでなく、白Tの3パックも展開。
Hanes for BIOTOP
〈別注Hanes for BIOTOP EX USA コットン モックネック プルオーバー〉
ロングスリーブTシャツ(ヘインズ フォー ビオトープ)¥6,930/ジュンカスタマーセンター
Tシャツ以上スウェット未満のモックネックT
ヘンイズへの別注が定例のビオトープ。今シーズンは、長袖のモックネックTシャツが登場。オリジナルパッケージを採用した1枚入り。
リラックス感のあるサイジング&袖口のリブにはサムホールを設けたビオトープのオリジナルパターンで製作。裏面にパイル地を用いたソフトな肌ざわりの素材を採用し、主役トップスとしても着やすい一着に。
問い合わせ先
ジュンカスタマーセンター TEL:0120-298-133
ビームス公式オンラインショップ www.beams.co.jp
ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ 丸の内店 TEL:03-6212-1500
ヘインズブランズ ジャパン カスタマーセンター TEL:0120-456-042
4.みんなのヘインズ
「パックTシャツ」コーディネート
最後はヘインズのパックTを愛用しているオシャレな人たちの正解着こなしをまとめてお届け!
ヘインズ「パックT」の正解着こなし①
安西一真/メンズノンノモデル
「透けない厚めの生地感が好きで、ヘインズのビーフィーTを愛用しています。普段、古着ばかり着ているので、Tシャツは白でクリーンな印象に。今日もリーの古着ジーンズにドリズラータイプのジャンパーとコンバースのハイカットというコーディネート。ビーフィーTはジャストなSサイズですが、リーのジーンズは少し大きめを合わせているのがポイントです。シンプルで無骨な感じの服装が性に合うんですよね」
「歴史がある【永久定番】は、当たり前ですが、古着と相性がすごくいいです。何枚も常備していおきたい、白Tシャツのようなアイテムは手に入りやすくて、飽きないヘインズのような王道ブランドに惹かれます。特にビーフィーはタフなイメージがあって、気兼ねせずガシガシ着られる点も気に入ってます」
ヘインズ「パックT」の正解着こなし②
マッツィーリ エリックさん/KIT PRプレス
「ヘインズのパックTシャツをそのときどきの時代感に合わせて、サイズを変えて着ています。中でも赤パックTは、インナーとしてもアウターとしても使いやすい絶妙なオンス感が好きです。ディキーズのセットアップのインナーには、ジャストサイズのL。パンツの裾をカットオフしたラフなコーディネートですが、タックインして、ブロームのコンビローファーやクラシックなワンスリーコンパウンドフレームの眼鏡、ハットでクラシックな雰囲気に」
「いろいろなパックTを着てきましたが、ヘインズのパックTはどれもコスパがいいのが高ポイント。以前は大きめサイズをラフに着ることが多かったけれど、最近はインナーがダボつかないジャストサイズ。スッキリ見せられるサイズ感にハマッています」
Photos:Erina Takahashi(still) Stylist:Takumi Urisaka Composition & Text:Hisami Kotakemori
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