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時代を超えて愛され続ける “定番”アイテムには、完成されたデザインとしての魅力が詰まっている。ここでは、そんな永久定番名品のディテールから歴史までを深掘り。おしゃれ男子に愛用者の多い、ディッキーズ874パンツ。近年ではコラボの話題が絶えないが、もともとはワークウエアがルーツだ。ストリートカルチャーによってファッションに昇華されたディッキーズ874の歴史をたどる!
ディッキーズの「874」ワークパンツ
1922年にアメリカ・テキサス州フォートワースでWilliamson-Dickie Mfg. Co.(ウィリアムソン-ディッキー製造会社)が設立される。1923年に「874」の原型となるKHAKI(カーキ)パンツの生産がスタート。1941年の第二次世界大戦時にはアメリカ陸軍の制服を生産した。1967年に「874」ワークパンツを発表。
ディッキーズ「874」の歴史
ロープライスのワークパンツが
80~90年代にストリートでブレイク
現代のメンズファッションの定番となっているアイテムの多くは、ワークウエアやミリタリーにルーツを持つ。ディッキーズの「874」もしかり。今年でブランド誕生100周年を迎え、シュプリームなどコラボの話題が絶えないディッキーズも、スタートはワークウエアだった。
いとこ関係にあったC.N.ウィリアムソンとE.E.ディッキーは数名の仲間たちと、テキサス州フォートワースに1918年、ディッキーズの前身となるU.S.オーバーオール社を設立する。自動車を筆頭にアメリカの産業が発達した1920年代はワークウエアが発展した時代でもあった。1922年には社名をWilliamson-Dickie Mfg. Co.(ウィリアムソン-ディッキー製造会社)と変更し、現在のディッキーズが誕生した。
C.N.ウィリアムソンとE.E.ディッキーはそれぞれ社長、副社長に就任するが、ふたりは全米各地の“働く現場”を回って、職業別に作業着の特性を調査した。その知見を生かして、労働者のニーズに合わせて工夫をこらしたワークウエアを展開する。こうした流れの中で、1923年に「874」ワークパンツの原型となるKAHKI(カーキ)パンツが生まれ、1933年頃には共生地トップスとのセットアップスタイルがアメリカ全土へ浸透していった。
確かなものづくりで名を上げたディッキーズは、1941年にアメリカが第二次世界大戦に参戦すると政府の要請を受けて、アメリカ陸軍の制服を生産。その数は900万着以上に上った。戦争が終わって、兵役を終えた人々がアメリカに戻りはじめると、再びワークウエアの需要が高まった。
1950年代、地元テキサスの石油労働者向けにカーキのワークウエアを売り出すと、爆発的なヒット商品に。やがてテキサスの石油労働者(オイルワーカー)が中東へ赴任し、そこでもカーキのワークウエアを愛用したことから、ディッキーズはヨーロッパを筆頭に世界各地の働く現場に広がっていった。
ディッキーズは当時、“Men of Production(ものづくりに関わる男たち)”というスローガンを打ち出していた。さまざまな体型や職業の“WALKING MAN”をアイコンにしたポスター広告を製作し、「丈夫で汚れにくくどんな体型の人にもフィットする」ワークウエアというイメージを定着させていく。
なかでも「874」の原型となるカーキパンツはロングセラーとなり、ディッキーズのポリシー「Fit you...fit your job」を体現するアイテムとして、日常的に愛用されるように。1950年代から1960年代にかけてはティーンエージャーがファッションシーンで重要な存在となり、アイビーリーガーを筆頭に大学生がファッションリーダーとして脚光を浴びた。ディッキーズは彼らをターゲットにしたカジュアルクローズにも参入していく。
1960年代には南米やカリブ海など生産拠点を海外に拡大。1967年に大ヒット商品のカーキパンツを進化させたシグネチャーパンツ「874」を発表する。パーマネントプレス(シワになりにくい加工)とX-it stain release(X-it社の防汚加工)が施されたパンツは、ディッキーズの大人気商品として市場を席巻。1970年代の終わりには、ディッキーズはアメリカのワークウエア界のニーズを独占するまでに成長した。
ワークウエアNo.1ブランドとなったディッキーズは、1970年代にベルボトムのようなファッション性の高い商品ラインを試験的にスタートする。するとディッキーズをファッションとして楽しむ人々が登場するように。1980年代にはカラー展開を増やし、広告でもカジュアルブランドとしての側面を打ち出す。1980年代後半から有名なラッパーがディッキーズをはきはじめ、ストリートシーンに進出。
ヒップホップと時を同じくしてスケートカルチャーが盛り上がり、西海岸のスケーターたちの間で丈夫かつ価格も手頃なディッキーズがブレイク。スケートカルチャーにひもづいて、世界中のユース層に広まっていき、日本でも1990年代に本格的販売がスタート。「874」をプッシュする広告が展開され、認知されるように。2000年代には世界100か国以上で販売されるビッグネームブランドに成長した。
日本でディッキーズのファッションブランドとしてのステータスが上がったのは2000年代後半。セレクトショップを筆頭にコラボレーションが盛んになる中、2008年にベドウィン(現在はベドウィン アンド ザ ハートブレイカーズ)が「874」をベースにしたハンパ丈パンツを“トリップスター”と名づけて発表。西海岸のスケーターや自転車乗りがディッキーズをカットオフしてはいていることに着想したコラボレーションだったが、日本にハンパ丈パンツブームを引導し、ディッキーズのファッションシーンにおける存在感も増した。
2011年、日本にWilliamson-Dickie Japan Limited(ウィリアムソン・ディッキー・ジャパン・リミテッド)が設立され、2012年のブランド誕生90周年ではベドウィン アンド ザ ハートブレイカーズを筆頭にアンリアレイジ、カバン ド ズッカなど多様なブランドとのコラボレーションが展開され、深くファッションシーンに進出。
ちなみに本社を構えるテキサスのフォートワースには、2019年に14,000席の多目的施設「ディッキーズ アリーナ」をオープン。音楽コンサートやスポーツイベントを開催している。一方、現在も自動車、土木、物流などさまざまな業界にワークウエアを提供。1994年にスタートしたアメリカの医療テレビドラマ『ER 緊急救命室』にも登場しているが、ディッキーズは医療用スクラブ(色や柄を取り入れた医療用ユニフォーム)の最大手でもある。
ディッキーズ「874」パンツの
ディテール
発売当初からほぼ変わらないシルエットとディテールで、現在も展開される「874」ワークパンツ。買いやすい価格もそのままだ。チノパンとしてコーディネートに取り入れる人も多いベージュでディテールを見ていこう。ウエストが腰位置のほどよい股上、シルエットはテーパードのないストレート。
チノパンとして認識されることも多いディッキーズ。ベージュは「874」を代表する色。フロントはフック&ファスナー、太いベルトループが特徴的。ウエスト裏地の「874」プリントは2013年から登場。
ディッキーズを代表する「T/Cツイル」素材。ポリエステル65%・コットン35%の混紡で、綿の風合いをキープしながら光沢感があり、縮むのを防ぎ、汚れにくくシワになりにくい特性を持つ。フロントにはセンタープレスが施され、ワークパンツながらクリーンな印象。
ヒップは片玉縁ポケットが両サイドに。左ポケットはボタン留め、右ポケットの上にはDickiesのロゴパッチがつく。
ディッキーズ「874」のカラーバリエーション
本国では10色を超えるカラーが定番として展開されているが、日本では現在、ベージュ・ブラック・チャコールグレー・ダークネイビー・ダークブラウンの定番色に加え、ハンターグリーン(ダークグリーン)・リンカーングリーン・ベージュ・タイム・マッシュルーム・ミリタリーグリーンが展開されている。2023年春にはエアフォースブルー・マルーン・シルバーなど展開色が増える予定。
落ち着いたカラーのトレンドもあって、この秋注目のダークブラウン。クラシックな印象のある色だが、投入すれば着こなしの鮮度がアップ! トレンドのブリティッシュ系チェックをトップスに合わせて、モッズ風に着こなすのもあり。
中間色ブームに伴って脚光を浴びるチャコールグレー。ブラックよりもマイルドで、ベージュよりもモダンなルックスに仕上がるのが魅力。旬のレトロアメカジアウターとも好相性で、着こなしを今っぽくスライドしてくれる。
万能カラーとして最強のブラック。モード感のある着こなしや、かっちりとしたジャケパンスタイルにもフィットする。2~3インチアップして、ワイドパンツ的なシルエットを楽しむディッキーズファンも多い。
定番カラーと相性抜群で、ミリタリー感のあるグリーンは、コーディネートに取り入れやすい色。また今季注目の英国調のチェック柄にも合わせやすく、トレンド感の演出にもおすすめだ。カラーパンツ初心者はトライする価値大。
最新コラボのディッキーズ「874」をチェック!
大人っぽいアレンジに心が動く!
人気セレクトショップからは毎シーズン「874」の別注やコラボモデルが登場。素材やカラーだけでなく、シルエットやディテールをアレンジしている場合も多く、今季は大人っぽい別注モデルがそろった!
Dickies × SHIPS
ジャケットに合う大人顔のデニム「874」
ジャケットにも合わせやすい大人のスラックスをめざす、別注シリーズの最新作。少しテーパードをかけてレングスや股上を調整して、ライトオンスのデニム素材に。キーリングなどがかけやすいように左前ループを細く、またディッキーズタグはベルト部分に配し、ベルトをすると見えなくなるようにデザイン。ブラックのほか、ブルーデニムの展開も。
Dickies × Firsthand
革靴に合うドレッシーなルックスが魅力
ファーストハンドは、フリークス ストアを手がけるデイトナ・インターナショナルによるサステナビリティを重視するコンセプトストア。ディッキーズ別注では、ポリエステルをサージにしたウールライクな素材「エステルサージ」を使用。「874」にワンタック入れることで上品なスラックス風に仕上げた。
Dickies × BEAMS
ウエストゴム&ドローコードのイージー仕様
シルエットをややワイドにアレンジし、ポリエステル100%のツイル素材でアレンジ。ナチュラルなストレッチ性のあるT400という糸を使用し、ウエストもゴム&ドローコードに変更することで、快適なはき心地と美シルエットを両立。ウエストの裏地に両ブランドのロゴプリント、ヒップ部分のディッキーズネームを取り外せる面ファスナー留めにしているのもビームス流。
問い合わせ先
ディッキーズ http://dickies.jp/
シップス 渋谷店 TEL:03-3496-0481
ファーストハンド レイヤードミヤシタパーク TEL:03-6805-1828
ビームス 原宿 TEL:03-3470-3947
みんなのディッキーズ「874」
コーディネート
中田圭祐/メンズノンノモデル
「ファッションを好きになってからずっと買い続けているディッキーズ『874』。アメリカンなアイテムがやっぱり好きで、きょうはNYヤンキースのキャップ、墨黒のあせたグラフィックのTシャツにちょっと短めの『874』、足もとはヴァンズ オーセンティック。白ソックスをチラッと見せて軽さを出しました。タート オプティカルのサングラスとアークテリクスのバックパックをアクセントに」
「タフでシンプルな『874』は、どんなスタイルにも合わせやすく、いつでも、どこでも同じものが買えるところが魅力。色違いやサイズ違いも持っていて、好きな色はリピートすることも。この茶色は2代目です。スタイリングのアクセントになる色で気に入ってます」
浅野 亨さん/スタイリスト
「半年ほど前に、初めてディッキーズを購入。『874』はワークやストリート由来のアイテムなので、シュプリームのチェックシャツを合わせつつ、武骨にならないようにナマチェコのジャケットやレユッカスのレザーシューズで大人っぽく仕上げました」
「シンプルなスラックスやチノパンを探しているときにディッキーズに出会って、トライしたらはき心地やシルエットに惹かれました。仕事柄、動きやすくてガシガシ洗えるのも魅力的だなと。身につけたときにラクに感じられる、自分を飾らなくていいアイテムが自分にとって永久定番かもしれません」
高橋璃央/メンズノンノモデル
「グレーのパンツが欲しいなと思っていたら、たまたま入ったお店でこのディッキーズ『874』を見つけたので買いました! パステルトーンが入った古着のカーディガンにはグレーのパンツが合いますよね。古着感が出すぎないように、白Tとドクターマーチンのキルトタッセルローファーでクリーンな着こなしを意識」
「ストリートなイメージが強かったディッキーズですが、中田(圭祐)さんがストリートじゃないコーディネートをしてるのを見て、ひとつ買っておくと便利だなと思っていました。今年2月に買ってからヘビロテしています」
Photos:Erina Takahashi(still) Stylist:Takumi Urisaka Composition & Text:Hisami Kotakemori
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