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時代を超えて愛され続ける “定番”アイテムには、完成されたデザインとしての魅力が詰まっている。ここでは、そんな永久定番名品のディテールから歴史までを深掘り。トラッドをベースに、ファッションだけでなく、憧れのライフスタイルを提案するブランドの先駆けとして知られるポロ ラルフ ローレン。人気定番として展開されるポロシャツは、今年50周年を迎えた。半世紀にわたり愛される理由とは?
ポロ ラルフ ローレンの
ポロシャツ
1967年にラルフ・ローレンがポロ・ファッション社を設立。当初はネクタイを販売していたが、1968年にメンズブランドとしてポロ ラルフ ローレンを始動。ポロポニーロゴがアイコンのポロシャツは1972年に登場。50周年を記念してその歴史を振り返る『RALPH LAUREN’S POLO SHIRT』も刊行された。
ポロ ラルフ ローレンのポロシャツの歴史
ポロポニーのワンポイントで
ブランドを象徴するアイテムに
アメリカンファッションを代表するブランドとして、世界中にファンを持つポロ ラルフ ローレン。ブランドのアイコンアイテムとして人気を集めるポロシャツは、50年前に誕生した。今では「トラッドブランド」と認識される存在だが、実はファッション界にさまざまな革新をもたらした先駆者。ポロプレーヤーをかたどったポロポニーのワンポイントもそのひとつだ。
ラルフ・ローレンは1939年にニューヨークのブロンクスで、ペンキ職人の父親のもと、4人きょうだいの末っ子として生まれた。ロックンロール全盛の10代の頃にフランク・シナトラ(アメリカを代表するエンターテイナー。『マイ・ウェイ』の大ヒットが有名)を愛し、ニューヨーク市立大学に進学すると、アイビーリーガーのようなファッションでブルックス ブラザーズやポール スチュアートに出入りした。若い頃から英国調のトラッドを好み、一目置かれる存在だった。
大学を中退しブルックス ブラザーズのセールスを経験した後、ネクタイメーカーの営業マンとして頭角を現す。細いタイが主流だった時代に、それとは真逆のクラシックな幅広のネクタイを提案してヒットさせる。これをきっかけに独立し、「ポロ・ファッションズ」という会社を設立。最高品質のファブリックを用いてハンドメイドで仕上げた高級タイを、1967年に「ポロ」というブランド名で発売する。
「ポロ」という名称は実兄のジェフリーが考案した。乗馬して行う団体競技「ポロ」は、英国王室の伝統のスポーツであり、上流階級の象徴でもある。英国トラッドとハイエンドなライフスタイルを提案したいと思い描いていた、ラルフ・ローレンの理想を見事に表していた。
翌1968年、ポロのクラシックなタイの世界観に合う初のメンズコレクションを発表。そしてそのデビューからわずか2年後の1970年には、アメリカ・ファッション界のアカデミー賞と称されるコティ賞を受賞し、高級百貨店ブルーミングデールズの中に「Polo by Ralph Lauren」ショップをオープンする。これはブルーミングデールズ史上初の試みであったことに加え、ラルフ・ローレンならではの徹底した空間づくりで、メディアでも話題になった。
1971年にビバリーヒルズの高級ショッピングストリート、ロデオドライブに初の路面店「Polo by Ralph Lauren」をオープン。同年、レディースのシャツラインを発表し、カフスに初めてポロポニーのワインポイントをあしらった。当時のレディースファッションになかったテイラードスタイルのシャツは、爆発的にヒット。翌1972年にはレディースのフルコレクションを展開する。
同じ年に発表されたのが、後にポロ ラルフ ローレンのアイコンとなるポロシャツだった。その頃のアメリカでは、ポロシャツといえばアイゾッド・ラコステ(アメリカのアイゾッド社がライセンス商品として生産・販売したラコステのポロシャツ)のワニのワンポイントが人気を集めていた。ポロ ラルフ ローレンのポロシャツは、ほかのアイテム同様に高価だったこともあり、発売当初はあまり注目されなかった。
1974年のクリスマスシーズン、「ポロプレーヤーの刺しゅうはラルフ・ローレンのフィーリングを擬人化したもので、アメリカの名士の象徴です」という内容の、本人のコメント入り広告を打ち出す。クオリティの高い商品に上昇志向のイメージをプラスしたことで、胸もとに「ポロプレーヤー」がついたポロシャツは、人々の憧れの存在になっていく。
やがて高級百貨店がポロ ラルフ ローレンのポロシャツを目立つところにディスプレイするようになり1978年、24色という豊富なカラー展開にからめたイメージ広告を打ち出す頃には、ステータスアイテムとして認知されるロングセラーに。
ポロシャツのデビューからブレイクまでの間には、映画『華麗なるギャツビー』(1974年)や『アニー・ホール』(1977年)などラルフ・ローレンが衣装を手がけた映画が大ヒット。レディースウエアでもコティ賞を受賞(1976年)し、殿堂入りを果たすなど、ブランドも大きく成長。さらに『ポロ』と『ローレン』、男性用と女性用の香水を同時に発売(1978年)し、ブランドのラインを増やすなど、新しいことにチャレンジしていた。
結果、スポーツウエアの分野では知名度の低かったポロ ラルフ ローレンが、ポロポニーのロゴとともに広く認知され、当時注目されていたプレッピーの流れともリンクしてブランドの人気が高まり、世界に広まっていく。
日本では1970年代にポロ ラルフ ローレンのブティックが西武百貨店に登場。1980年代後半から1990年代初頭の渋カジ時代、ポロシャツを筆頭にオックスフォードシャツや紺ブレが大ブレイクし、1990年代には毎シーズンのように、ポロ ラルフ ローレン特集がファッション誌で展開された。
ポロ ラルフ ローレンのポロシャツは今年50周年を迎え、その歴史を振り返る『RALPH LAUREN’S POLO SHIRT』ブックがリッツォーリ インターナショナル社から発刊された。ひとつのファッションアイテムでありながら、ラルフ・ローレンが提案してきたライフスタイルや世界観を描き出す「キャンバス」の役目を担ってきたことが、この書籍からも読み取れる。
スポーツ、政治、映画、音楽界などのスターやセレブがポロシャツを着用したポートレートはもちろん、クラシックモデルからオリンピック、全米オープン、ウィンブルドン選手権のコラボレーションなど、希少なポロシャツも多数掲載され、ヴィンテージファンにもたまらない一冊になっている。
この書籍の序文でラルフ・ローレンが「私はこのシャツが、身にまとう人々の生活の一部になってほしいと願っていました」と述べているように、このポロシャツはこれからも単なるファッションアイテムではなく、それ以上の存在として定番であり続けるに違いない。
※参考書籍/『ラルフ・ローレン物語』(集英社刊)
ポロ ラルフ ローレンのポロシャツのディテール
1972年に売り出され、永遠のアイコンとして君臨するポロシャツ。その魅力はポロポニーのワンポイントだけでなく、ラルフ・ローレンらしい製品への徹底した「こだわり」にある。発売当初のオーセンティックなディテールを踏襲しながら、今も時代に寄り添うアップデートを繰り返している。現在の定番「クラシックフィット」のホワイトポロシャツでディテールを見ていこう。
ベーシックなポロシャツはコットン100%の目の詰まった鹿の子編み。〈クラシックフィット〉ポロシャツ(ポロ ラルフ ローレン)¥18,700/ラルフ ローレン
ポロプレーヤーのアイコン「ポロポニー」は縦1.25インチ(31.75mm)に1100ものステッチで完成。緻密な作業ならではの高級感が。
リブ編みの衿は伸びにくい構造を採用。コンパクトなサイズ感で、衿を立てたときに美しいのも特徴。ボタンは取れにくいクロスステッチ。前立てはできるだけフラットに仕上げ、クリーンなルックスに。
洗濯による伸縮を防ぐためのバインディング処理が衿裏や肩部分に。ラルフ・ローレンが愛するエイジング(経年変化)を楽しむために縫製には細心の注意が払われている。
ナチュラルな袖のふくらみを実現し、着る人の体格を美しく見せるリブニットの袖。
ポロシャツをタックインした際、前屈の動きで裾が飛び出さないように後ろの裾は少し長め。
動きやすさ、着やすさに配慮したサイドスリットの裏もこのとおり丁寧な仕上げ。
定番ポロシャツのフィットは現在2タイプ
過去にはビッグフィット(1991年)やスキニーフィット(1994年)も存在したが、現在は1972年、発売当初のオリジナルに近いゆったりとしたシルエットの「クラシックフィット」と、2003年に登場した少しタイトな「カスタムスリムフィット」の2タイプが定番として展開されている。それぞれのフィットは衿もとの織りネームの下に記載されている。
参考までにブルーにゴールドの織りネームは2014年に登場した3代目。初代(1972年~)と2代目(1980~2013年)はブルー地にホワイトで、Poloのボックスロゴにby Ralph Laurenの文字が添えられている。
最新ポロシャツをチェック!
一年中店頭に並び、カラーバリエが多いことでも人気のポロシャツ。定番色に加えて、トレンド感のあるシーズンカラーやボーダー、グラフィカルな柄モノ、またフロントがファスナー仕様になったデザインものなど、その時々のラインナップが楽しめる。
王道の白と並んで鉄板人気のブラック。グレーのポロポニーにもモード感があり、落ち着いたルックスだ。リラックス感のあるシルエットだからバギーデニムと合わせて、モダンなスケータースタイルにも。
トレンドカラーのグリーンもラインナップ。ポロポニーがピンクという配色がポロ ラルフ ローレンらしい。ホワイトデニムにローファーやボートシューズといった、アイビーベースのコーディネートが今また新鮮。
隠れた人気カラーのパステル調ピンクは、ブルーデニムとの相性も抜群にいい。トップはコンパクト、ボトムはルーズシルエットという最旬コーデも、こんなカラーリングでトライするのが正解。
この秋注目のパープル系。ライトなラベンダーカラーなら初心者でも取り入れやすい。水色などパステルカラーボトムでジェンダーレスにまとめたり、グレースラックスにタックインでレトロに振ったりと、着こなしの格上げにも活躍。
シーズンごとにさまざまな配色で展開されるボーダー柄も人気が高い。新作でトラッド感の強いグリーン×ネイビー×イエローのボーダーが登場。チノパン&ローファーで、クリーンなカレッジスタイルに。
グレー×白のボーダーをファスナーフロントでアレンジした新作。オーセンティックなムードと今っぽいストリートっぽさを兼ね備える。細身のカスタムスリムフィットだから、ストリートに振りたいときは2サイズくらい大きめを選ぶのもアイデア。
問い合わせ先
ラルフ ローレン
TEL:0120-3274-20
https://www.ralphlauren.co.jp/
みんなのポロ ラルフ ローレン「ポロシャツ」コーディネート
安西一真/メンズノンノモデル
「自分が着られなくなっても、誰かに着てほしいと譲りたくなるようなアイテムが、僕にとっての永久定番。ポロ ラルフ ローレンのポロシャツは、間違いなくそれです。リーバイス®のデニムが自分のスタイルのベースということもあり、相性のいいポロシャツは何着か持っていたいと思って、3年前に古着で買いました。クリーンに着たかったので小さめのジャストサイズをチョイス」
「友達とカフェの運営に携わるようになって、シャツをタックインするきちんとした着こなしをするようになりました。足もとは革靴でカッチリ、アウターはジャケットで大人っぽくコーディネート。古着ベースの着こなしでもポロポニーがついていると品のよさがアップする気がします」
渕上カンさん/スタイリスト
「少年からおじいちゃんになるまで、いつ着てもサマになるアイテムが永久定番ですかね。去年はデニムやチノパンの王道合わせが気分でしたが、今年は少しテック感のあるパンツでほんのり軽いコーディネートを楽しんでいます。クリーンさは意識しているので、全体をワントーンで。またナイキのエア フォース 1にはゲンイザワのレザーシューキルトをつけて、トラッド感を盛りました。ちなみにパンツは大阪発のウィムジー、ミリタリーシャツはポロ カントリーの古着です」
「ポロシャツはTシャツよりよそ行き感が出るのがいいです。ポロ ラルフ ローレンのものなら、申し分ありません。サイズも近年はジャストが好みで、去年の春にこのカスタムスリムフィットを新調しました!」
瓜坂拓海さん/スタイリスト
「僕の中ではオックスフォードシャツのイメージが強いポロ ラルフ ローレンですが、今着るならやっぱりポロシャツが気分。ということで、古着でGETしました。鹿の子でなくパイル地でポロポニーがボディと同色のブラックという、こんなタイプもあったんだと感動したデザイン。永久定番だけあって、バリエーションの幅がめちゃくちゃ広いんですね」
「ポロシャツに90’sっぽいムードがあるので、タンジェント×トゥモローランドのカーゴショーツにティンバーランドの3アイモカシンで、渋カジ時代をなぞってみました。ナイスネスのベルトを垂らして自分流のストリートアレンジを入れたり、オメガのヴィンテージウオッチやショーツの素材感、全体の配色で大人っぽく見えるように整えています」
Photos:Erina Takahashi(still) Stylist:Takumi Urisaka Composition & Text:Hisami Kotakemori
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