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時代を超えて愛され続ける “定番”アイテムには、完成されたデザインとしての魅力が詰まっている。ここでは、そんな永久定番名品のディテールから歴史までを深掘り。ウェビングベルトやストレスなく開脚できるギミックを搭載したグラミチパンツ。今やカジュアルファッションにマストなこのパンツも、ルーツはアウトドアにあった!
グラミチ グラミチパンツ
グラミチはアメリカの伝説的なロッククライマー、マイク・グラハムによって1982年にカリフォルニアでスタートした。ガセットクロッチ(股の部分のマチ)はもちろん、片手で簡単に調整できるウェビングベルトは、その後のカジュアルパンツに大きな影響を与えた。
グラミチ グラミチパンツの歴史
ガセットクロッチとウェビングベルトが画期的!
90年代には日本のストリートシーンに登場
サカイのようなメゾンからステューシーのようなストリートブランドまで話題コラボも多く、セレクトショップでは毎シーズン、さまざまな別注が登場するグラミチパンツ。180度開脚できるガセットクロッチと、ウエストのサイズ調整が簡単にできるウェビングベルトというのが特徴。今のカジュアルスタイルのベースになったこのパンツは、ひとりの伝説的ロッククライマーによってつくられた。
世界有数の花こう岩の一枚岩、エル・キャピタンを擁し、アメリカのロッククライミングの聖地として知られるヨセミテ渓谷。アウトドアスポーツが盛り上がる1970年代の初頭、ヨセミテでフリークライミングという新しいカルチャーを生み出し、数々の初登攀(とうはん)を成し遂げた「THE STONE MASTERS(ザ ストーンマスターズ)」というクライマー集団がいた。そのメンバーだったマイク・グラハムは、クライミング用のギアを自作する名手としても一目置かれる存在だった。
マイクは1970年代後半にはポータレッジ(崖に吊るす携帯用簡易テント)をはじめ、当時はなかったクライミングギアをハンドメイドで次々と形にして仲間に販売していた。ヨセミテに集まるクライマーの中には、パタゴニアの創始者として知られるイヴォン・シュイナードもいた。マイクの才能を見いだしたイヴォンは、彼のビジネスをバックアップするために縫製工場を手配。マイクはパタゴニアのギア部門、シュイナード・イクイップメント(のちのブラックダイヤモンド)の委託を受けて、ハーネスやテントなどさまざまなギアをつくり、業績を上げていった。
やがて本当に必要だと思うクライミングパンツをつくるために、ウエアのブランドを立ち上げる。というのも当時はクライミングに適したパンツはなく、マイクたちはジーンズやセイラーパンツなどをはいて登攀(とうはん)していた。1980年代にアルパイン用としてナイロン生地のパンツも出回ったが、滑りやすくてクライミング向きとは思えなかったからだ。
マイクは脚の可動域を広げるために、耐久性のあるコットンツイルのパンツの股にマチを入れるアイデアを思いつく。1970年代、世界中にカンフーブームを巻き起こした、ブルース・リーの開脚する蹴り技を見てひらめいたという。さらにデイパックのストラップに着想を得て、簡単にサイズ調整ができるバックルとウェビングベルトをウエスト部分に採用。
マイク・グラハムのニックネームだったGramicci(グラミチ)をブランド名にして、売り出したこのパンツは大ヒット。コットンツイルの丈夫で動きやすいパンツはクライマーだけでなく、アウトドアのさまざまなアクティビティで好評を博した。やがてグラミチパンツはクライミングパンツの代名詞的存在となり、全米に広がった。
グラミチパンツは1990年代初頭、日本のファッションシーンにアウトドアブームの波が押し寄せた時代に、目利きバイヤーたちが買い付けて上陸。アウトドアショップだけでなく、セレクトショップの店頭にも並び、当時影響力のあったショップスタッフたちがファッションとして取り入れ、その魅力を伝えていく。ベルト先が垂れてアクセントになるキャッチーなルックスだけでなく、タフではき心地がいいユーティリティ面も高く評価された。
股部分にマチを入れる構造はその後、クライミングパンツやアウトドアパンツでも一般的になり、ウェビングベルトのディテールはストリートブランドにも広まった。2000年代以降はコラボや別注が急増。グラミチの評価は、トレンドや時代が移ろっても変わらず、今もファンを増やし続けている。
グラミチ グラミチパンツのディテール
太すぎず細すぎない絶妙なシルエット、
年中はけるコットンツイル素材も秀逸!
グラミチパンツの誕生からはや40年。このクライミングパンツが永久定番となったのはギミックだけでなく、デニムと同じようにデイリーにはけるコットンツイル素材、時代に左右されない独自のストレートシルエットを生み出した功績にもよる。2015年には新たなシルエットとして、グラミチパンツを細身にしたNN-パンツも登場。今も進化を続けている。
GRAMICCI PANT
シルエットのバリエーション1
[NN-PANT]
2015年に登場した細身の新定番シルエット
基本のディテールは同じまま、シルエットをすっきり細身にしたニューナロウ。細身でもガセットクロッチ入りだから、ストレスなくはけると大好評。きれいめスタイルとも相性がいい。春の新作では表面をピーチ起毛したシックな素材が登場。
シルエットのバリエーション2
LOOSE TAPERED PANT
ストリートにマッチするルーズテーパード
グラミチパンツを太くして、裾にかけてテーパードをかけた最新シルエット。クロップド丈が2000年代のスケーターファッションを彷彿とさせる。サイドポケットの形状もベイカーパンツ風にアレンジ。オーガニックコットンを使用している点にも注目。
最新コラボのグラミチパンツをチェック!
トレンド感のあるオリジナルデザインやシルエットがめじろ押し!
パンツのコラボレーションでは断トツの人気を誇る。セレクトショップなどの別注といわれるカテゴリーも、素材や色変えにとどまらず、最近では各社独自のデザインを打ち出している。
Gramicci × FREAK’S STORE
ショーツに変形できる2WAYカーゴパンツ
ひざ部分のファスナーでレングスを変えることができる。サイドポケットの位置を高めに設定し、ショーツもカーゴスタイルではけるデザインに。水陸両用の速乾性のある素材で、ポケット裏地はすべてメッシュにしているから、アウトドアのアクティビティにも応用できる。
Gramicci × Sonny Label
ワンタック入り&九分丈の
ソロテックス素材
NN-PANTに深めのワンタックを入れた腰まわりにゆとりのあるテーパードシルエット。ランニングマンの色をブルーに替えたベルトは、ベルトループをサイドにひとつ増やすことで垂らし方のアレンジができる。ストレッチ性に優れ、シワになりにくいソロテックス素材は、接触冷感作用も備え夏場も快適。
Gramicci for ADAM ET ROPÉ
旬の迷彩柄にシャカシャカ素材も気分
軽くて水に強いデュアラブルナイロンを使用して、グラミチパンツをテーパードシルエットにアレンジ。総柄迷彩はいつものコーディネートを一気にミリタリー、アウトドアに変えてくれるパワーアイテム。水陸両用スペックでフロントにはD環がつくなど、屋外でも大活躍。
N.HOOLYWOOD COMPILE
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Gramicci
スラックス感覚の大人っぽさが魅力
2WAYストレッチのトロピカルウール素材の、裾へのテーパードがきいたワイドスラックス。ドレッシーなコーディネートにも合わせられる上品さを備えながら、ウォッシャブル素材で気軽に洗えるという、N.ハリウッド コンパイルらしいコラボレーションになっている。
問い合わせ先
アーバンリサーチ サニーレーベル グランツリー武蔵小杉店 TEL:050-2017-9272
インス TEL:0120-900-736
ジュンカスタマーセンター TEL:0120-298-133
フリークス ストア渋谷 TEL:03-6415-7728
ミスターハリウッド TEL:03-5414-5071
みんなのグラミチパンツコーディネート
井田正明さん/スタイリスト
「永久定番といわれるものは全部持っていたい性格です。ただし自分の中にはスタンダードなゆるさとモードの端正さの2つの軸があって、どちらにもハマることが条件。グラミチパンツは自分軸にかなり響くアイテムで、オリジナルはもちろん、別注もたくさん持っています。きょうはオリジナルのグラミチパンツにベーシックなスローンのタートルネック、足もとはコンバース スケートボーディングのスニーカーという一見スタンダードなスタイル。Y/プロジェクトのジャケットはグリーンを選んで、春の気分とモード感を添えました」
「初めてグラミチパンツを買ったのは中学2年生の頃(2000年頃)。ビームスがファッションとして打ち出していたのを覚えています。20代はモードなスタイルにグラミチパンツを合わせるコーディネートにハマったことも。汎用性の高い黒は何回もリピートしています。最近のものはウェビングベルトにバックルがついていますが、黒はついてないバージョンと2本持っています。きょうは2年前に買った新しいほうのLサイズを選びました」
林 克哉さん/vendor ショッププレス
「グラミチパンツをノンネイティブらしい美脚シルエットでアレンジするコラボは、流行り廃りがなく長く使えるのが魅力。何本か持っていますが、どれも買ってからずっとはき続けています。きょうのは昨年12月に出たPOLARTEC® Wind Pro® (ポーラテック ウィンドプロ)のフリースを使ったクライマーイージーパンツ。少し大きめのノンネイティブの中綿ベスト&パーカにレッドウィングのワークブーツとノンネイティブ×ハーフテンのキャップでコーディネート。ストリート感を出しつつ細身のパンツでクリーンに。全体を落ち着いた色味でまとめたから、大人っぽくも見えると思います」
「POLARTEC® Wind Pro®は従来のフリースの4倍の防風性があります。だから強風や寒さが厳しい日はコレ。ストレッチ性もあって、しかもガセットクロッチだからスウェットパンツ以上にラクチン。家ではいても快適です。普段使いはもちろん、アウトドアにも使えて心強い。どのグラミチコラボも、マルチに活用しています!」
西村滋紀さん/アーバンリサーチ プレス
「いつでも買えるとは限らない定番以外でも『2つ買いしよう!』と思うものは、自分的に永久定番な気がします。ロウワーケース×グラミチのソフトサーモパンツ Ver2もそんなアイテムのひとつ。昨年発売された瞬間に『毎日はきたい!』と2本買いしました(笑)。ウール調だからクラシックなスタイルとも相性がいい。チンストラップのあるコートの衿を立てて着るのが好きで、きょうはキャプテン サンシャインのクラシカルなコートとナイスネスのハンドソーイングが印象的なベストを重ね着してグラミチパンツ。足もとはセモーのレザーブーツというコーディネート」
「パンツは基本黒しかはきませんが、最近はワイドパンツより細身のパンツが気になっています。このパンツはシルエットが計算されていて細身でも動きやすく、吸湿発熱素材のソフトサーモだから冬は手放せない! 革靴と合わせやすいのも今の気分にマッチしていて、毎日のようにはいてます」
Photos:Erina Takahashi(still) Stylist:Takumi Urisaka Composition & Text:Hisami Kotakemori
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