▼ WPの本文 ▼
昨年11月に初のランウェイショーを披露したオリミ。インディペンデントなセレクトショップ、ジ エレファント(THE ELEPHANT)のオーナー兼バイヤーでもあり、ファッションシーン全体を俯瞰する目をもつデザイナー折見健太がショーを終えて思うことは?
ORIMI
BRAND PROFILE
2020年に始動し、2021年春夏シーズンに初展示会を開催。以後「Superfine garment for all the outsiders(すべて異端者のための極上の洋服)」をコンセプトに掲げ、創作を展開。2025年春夏は初めてランウェイショー形式で発表し、今の東京のムードを反映する気鋭のブランドとして脚光を浴びる。Instagram: @kentaorimi
https://theelephantmarket.com/collections/orimi
ORIMI/KENTA ORIMI
DESIGNER INTERVIEW
1_ファッション業界に入るまで

UKロックと古着から入って
ファッションに明け暮れた大学時代
――折見さんがファッションを意識するようになったのはいつ頃ですか?
自分で服を選ぶようになるのは早かったんですが、決定的だったのは高2のときに初めて来たこの原宿です。とにかく店がたくさんあって、街のパワーや人のスタイルも全然違う。当時住んでいた千葉県の実家から電車で40~50分とそれほど遠い場所ではないのに…と、すごく衝撃を受けました。
――原宿に行こう! というきっかけは何だったのでしょう。
クラスにひとりふたり、洋楽を聴いたりファッションが好きという友だちがいて、連れてきてもらいました。少ない音楽仲間と洋楽の話をしつつ、同時に古着を見に原宿、渋谷へ足を運び…。高校時代は月1回ほどだったのが、大学に入ってからは週1回ペースになって。19歳のときに古着屋で販売のアルバイトを始め、1年後にはバイヤーもやっていましたね。
――高校時代はどんな音楽を聴いていたのですか。
UKロックがちょっと流行り出した頃で、iTunesも登場してダウンロードで気軽に音楽が聴けるようになったんです。その影響でインディペンデントなロックバンドがバッと出てきた瞬間でもあり、オアシスのようなメインストリームではないところを掘って、好きなアーティストを見つけては聴いていました。音楽発見系のブログやアマゾンのCDレビューを参考にして、TSUTAYAでCDを借りてMDやiTunesに入れるという、絶妙にアナログな時代感ではありましたが、自分で能動的に情報を掘って、たくさんのインディーズのアーティストに触れることができる環境でした。
――具体的にはどんなバンドが好きだったんでしょう。
ザ・ホラーズというUKのゴス系ロックバンドや、同じくUKのディス・ヒートというプログレッシブロック(前衛的なロック)というジャンルのバンドをよく聴いていました。


――ビジュアルやアートワークもクールですね。
ザ・ホラーズはビジュアル系ながらイギリスなのでパンク・スピリットも持ち合わせてていて、細身のジャケットに細身のパンツをはいて頭がフワーッとしたルックスが印象的なんですが…。ショーを終えてバックステージの写真を見ていたら、ザ・ホラーズのジャケ写を思い出したんです(笑)。リファレンスにしたワケじゃないけど、10代の頃から親しんだものには知らず知らず影響されているんだなって、痛感しました。
――大学時代は古着屋でバイト三昧という感じですか?
大学は卒業するための必要最低限の単位をとって、それ以外はバイトして、ほかの古着屋さんでめちゃめちゃ買い物もして、夜はクラブで遊んだりとか。交友関係も広がって、今もその頃の友人は多いです。まだInstagramのようなSNSもなく、リアルに会う友だちばかりでしたね。


2_ショップオープンとオリミの立ち上げ
100%自分が表現できる店をつくり
リメイクから服づくりをスタート
――大学を卒業した後は?
大学を卒業するタイミングで、当時バイトしていた古着屋の元店長がショップを出すということで、手伝うことにしました。そこでは主にバイイングを担当して、6年いましたね。
――そのショップ内でブランドをやろうということにはならなかったのでしょうか。
服はつくりはじめていました。古着をリメイクしたり、簡単なトラウザーをつくったりしていたんですが、やりはじめたら100%自分でディレクションした場所、ブランドとして表現したい、見せたいと思うようになって。私生活の面でもライフスタイルが変わったこともあり、結果的に独立という選択をしました。その当時、アパレル会社から外部ディレクターのようなお声かけもいただきましたが、自分で、インディペンデントでやりたいという気持ちが強くて、ジ エレファントを始めたんです。


――ちなみにファッション業界でやって行こうと思ったのは、いつ頃でした?
21歳ぐらいと、わりと早かったと思います。古着屋でアルバイトを始めて2年くらい経ったときには「これからも僕は洋服の世界で働いていく」と確信していました。しかしながら、その頃は自分がデザイナーをやって、ショーをやるなんてまったく想像もしていなかった…。
――お店を持ちたいという気持ちはあった?
そうですね。お店を持ちたいという気持ちはその頃から多少あったと思います。が、独立自体は目標ではありませんでした。
――ジ エレファントという店名にしたのはどうしてですか。
感覚的につけました。わりと直感で決めちゃうほうなので、あまり面白い回答じゃなくて恐縮ですが。

――大きな存在をイメージしたんでしょうか。ジ エレファントは古着と先鋭的な新しいブランドをラインナップしたセレクトショップとして、折見さんの世界観が色濃く出たお店だと思います。
2018年7月にオープンして、その年からジ エレファント カスタムという名前で古着のリメイクを始めました。今はpickyou(ピックユー)というフリマアプリの取締役になっている河合航大君(現在はKOTA KAWAI名義でアーティストとしても活動中)が当時文化生(文化服装学院の生徒)で、僕がこいうことをやりたいとディレクションしたものを彼が製作してくれていました。

――具体的にはどんなものをつくっていたんですか?
パーカとシャツとかシャツとシャツとか、とにかくいろんなアイテムをドッキングさせて、シルエットで遊んでいました。服から服が生えてくるみたいなつくり方が特徴的で、それが国内外の大手セレクトショップの目に留まって、自分のショップ以外でも販売されました。
――リメイクというよりも、モードの再構築的な発想ですね。
ある意味マルジェラとかコム デ ギャルソン的な趣向で、パーカやシャツなどの古着をアメリカから大量に取り寄せて、アトリエで製作していました。


こちらはジ エレファント 大阪店が2023年7月にオープンしたときに、特別につくられたジ エレファント カスタムのアーカイブ。

――オリミをスタートした経緯は?
ひとつはコロナ禍があって、お店を閉めなきゃいけない、お客さんが来なくなった時期があったので、時間的余裕が生まれたということ。あとはリメイクである程度、洋服をつくるリズムのようなものをつかんだこともあります。セレクトショップが買い付けてくれたことで、ブランドを始める資金もできていました。自分の世界観をよりダイレクトに表現するために既製服をつくって、展示会を開いて発表してみようと思ったんです。ステップを一段上げるような気持ちで。
――それが2020年の終わり?
2020年の11月に展示会で2021年春夏のコレクションを発表して、オリミをスタートしました。


――初期は今ほどつくりこんでいませんでしたよね? どこか古着感がある今っぽい服という印象でした。
そうなんですよ。
――どんどんデザイン性が強くなって、フォルムまで変わって…モード方向にシフトしてきました。
本当にその通りで、もともと古着が好きということもあって、最初の3シーズンは映画や音楽、カルチャーから着想したコレクションで、「映画をつくるような気持ちでブランドをやろう」と思っていました。ファーストシーズンはアメリカのロードムービーみたいなイメージで、ルックも福生の米軍ハウス界隈で撮ったりして。恥ずかしくなるぐらいアメリカへの憧れを表現していたんです。



――気持ちはわかります。
その後は日本人デザイナーとして、なるべく東京的なものを表現したいと思うようになって。そうしてやっていく中で新しいシェイプとか、あまり見ないディテールを入れた表現ができるようになり、シーズンごとに制作の方法を変え、挑戦していった結果、デザイン性の強いものになっていきました。

――テーマよりも、よりブランドとしてのアイデンティティにフォーカスしていったんですね。
シーズンのテーマも大事ではありますが、ブランドとしてのオリミを確立したいと気持ちが強くなりましたね。「オリミってこいうブランドだよね」という、点から線への進化というか…。言葉にするのは難しいんですが、例えばエディ・スリマンと言われたら、そのファッションや人間像が浮かびますよね? そういうブランド特有の空気感が表現できるブランドになればいいなと思っています。
3_2025SS ランウェイショー
歩いて見せる服づくりにシフトして
表現できたことが自信にもつながった
――4年目にしてランウェイショーを開催しました。
きっかけとして大きかったのは先シーズン(2024年秋冬)のルックを撮影したときに、チームの中で「そろそろ歩かせて見せたほうがいいよ」という話になりまして。僕はオリミを縫製する工場なんかもブランド設立の頃からのお付き合いなんですが、ビジュアル制作も初期からずっと同じチームでやっています。だからその現場での盛り上がりはごく自然なことで、今後もブランドに携わっているチームとともに成長していけたらと考えています。
――2025年春夏のテーマはなんでしょう?
「DISARM(武装解除)」です。今回テーマは最初にあったのではなく、コレクションを制作する過程で、ふと浮かんだワードをテーマにしました。初めてのファッションショーだから、自分の中でいつも以上に力が入ってしまうだろうと予測できたので、そこに行かないように、行かないようにと自分の表現欲を抑えながらつくったシーズンで、そんな自分を表した言葉です。

――制作しているときの自分の在りようを表現したんですね。
ランウェイには採用されなかったんですが、あえてこんなTシャツワンピースのような、単純に心情をただぶつけた英単語だけがプリントされた、少し力が抜けたようなアイテムもつくっていました。





――思い入れのあるルックを5つ選んでいただきましたが、トラッカージャケットが逆さまになったファーストルックは衝撃でした。
ショーで見せるということで、初めて「モデルが着用して動きがある中で立体的に見せる」ことを意識して服をつくりました。スチール写真でルックやイメージビジュアルを制作する際は、どこか平面的なイメージで取り組んでいましたが、今回は立体的に動くことを意識したので、アプローチもいつもと違っていました。

――このグレーのスカーフは針金が入っているんですよね?
これはモデルが歩くポージングありきで制作した、スカーフがドッキングされたジャケットです。ジャケットのポケット位置をすごく高くしているのは、モデルが手を入れて歩くこと想定して、いちばん体がきれいに見えるバランスにしたからです。本来なら揺れるスカーフが、そのまま止まっていたら面白いだろうなと、これも動きに合わせてデザインを考えました。
――今まではアイテム単位でつくっていたんですか?
そうです。アイテムを制作して、最後にコーディネートを組むパターンでした。今回はランウェイを意識して、生地の揺れ方やモデルが動いている前提で、服の見え方を考えながら制作したので、自分でサンプルを着て歩いてみたり、トルソーに古着を着せてピンでつまんだり、裁断したりしながらトワル(試作)をつくりました。結果的により手ざわり感のある作品が完成して、楽しみながら取り組むことができました。
――このルックもずり落ちたようなデニムが目を引きました。
思い入れがあるのはまさにパンツのほうです。オリミはルック撮影のときに古着を混ぜたりしているんですが、先シーズン、アメリカ古着のウエスト40インチ超えのビッグデニムを、スタイリストの初沢(大地)君と前を折りたたんでベルトで留めてモデルにはかせてみたらすごくよくて。それに着想しています。これは今季、一番人気の商品になりました。

――ボーダー状の加工もきいています。
デニムってすごくオーセンティックなものじゃないですか? そこにデザインされた雰囲気をつけたかったので、加工もちょっと人工的です。
――自然なヒゲやアタリとは違うところがモードですね。次はこのキラキラした象のバッグを持っているルック。
オリミは毎シーズン、尾州でオリジナルのウール生地を別注しています。今季はラメを混ぜたウールをつくったので、象のバッグにも使いました。ほかにチェック柄もあります。

――動物型のバッグが流行っていますが、象をモチーフにしたのはジ エレファントだからですよね。
今まではジ エレファントの中にオリミがあるということをあまり知られたくなかったんですね。オリミが「ショップのオリジナル」のように見えてしまうのがイヤで。今回ショーを開催したことで、僕が本気でコレクションブランドとしてオリミをやっているという姿勢も見せられた。それで象のモチーフを出してもいいかなと思えたシーズンになりました。

――成長の証でもあるわけですね。最後は和の染め柄のようなセットアップ。ランウェイで見たとき、どんな素材か気になりました。
これは尾州ウールに一点一点、僕がペイントしています。
――え? ペイント?
はい。アトリエで、ショーの前夜にペンキをローラーでペイントして。量産も手作業でやることにしたので、ほかの製品よりもちょっと価格が高めです。

――すごくなじんでいるから、ハンドメイド感がないですね。
前もってスワッチ(生地見本)でテストはしていて、ちゃんとなじみのいいウール生地を選びました。インナーに合せたシャツは、骸骨の手のモチーフの刺しゅうによってネクタイが縫い付けられていて、これもつくるのに手間がかかっています。即興っぽい感じのつくり方もデザイナーズブランドのよさだと思っています。オリミぐらいの規模だとまだやれるので、ショーで見せるときも「アルチザン(職人の手仕事感)」のようなことは意識しました。

――メゾンブランドも近年、そういう手仕事感を大切にしています。
大量生産とは違うというスタンスですよね。
――どこかにマスではなくインディペンデントな気持ちがある?
あると思います。僕の青春期って音楽にしてもファッションにしても、インディペンデントなものが取り上げられて大きくなっていった瞬間だったので、自分はずっとそこをやり続けている感覚があります。自分がクールだと思うことを貫く姿勢へのリスペクトがあるんです。

――今シーズンは靴も初めてつくったんですよね。
はい。シューズは新たなカテゴリーだったので、最初は一番自分らしい靴をつくろうと思って、自分が履きつぶしたエンジニアブーツをオマージュしました。そのブーツは黒だったのが剥げてきて、もともとのブラウンの色が出てきたような状態を、今回このブーツでも表現しています。
――赤の上に黒を塗った革を使って、加工しているんですか?
浅草の職人さんが、ひとつひとつ手作業で加工するので個体差が出ます。

――折見さんが履いているのがもうひとつの新作シューズ。
ドレッシーなエナメルのポインテッドトウシューズのシューレースを、ベルベットのリボンにしてちょっと反骨精神を入れています。


4_オリミのこれから
世界に見せるべき「原宿」を切り取って
ファッションの楽しさを伝えていく
――今回はオフスケジュールのショーでしたが、将来的にはファッションウィークに参加することも考えていますか?
これからも東京でのショーは続けていく予定で、環境が整ったらパリでショーをやろうと思っています。買い付けでパリのファッションウィークには何度も行っていますから、そこが本場なんだという感覚はあって、次はそこを目指そうと。
――パリではショーを見たりもしているんですか?
今回、三原康裕さんのショーをパリでは初めて見させていただきました。演出家さんが共通だったり、お世話になっているPR会社さんも現場を手伝っていて…憧れの世界ではあるんですが、自分がパリでショーをやることが、少しだけリアルになった瞬間でもあって。三原さんの背中というのは自分的には大きいのです。

――折見さんの青春期だった2000年代はミハラヤスヒロや裏原宿を含め、原宿・渋谷でスタートしたブランドが世界に出ていった時代でした。
当時僕はメンズノンノを読んでいたので、N.ハリウッドやアンダーカバー、ナンバーナイン、もちろんミハラヤスヒロもリアルに影響を受けていました。同時に『TUNE』『FRUiTS』といったスナップカルチャーにどっぷり浸かった世代でもあるので、ストリート発のカジュアルな古着とモードの世界が交じり合ったようなファッションに惹かれていて。
――きょうは影響を受けた写真集も持参くださいましたが…。
それこそ『(un)FASHION』という本は民族衣装とか礼服やユニフォームを着た人たちの写真集で、写っている人はファッションとして着ているわけじゃないんですけど、僕にはすごくモードに見えるんですよね。

――ヒントがたくさん詰まった写真集ばかりですね。
ファッションとしてつくられていないような、何でもないものが美しく見える瞬間が面白いと思うんです。古着好きな人は持っている感覚だと思うんですが、何でもない洋服が組み合わせ次第ですごくモードに見えたり。

――折見さんが原宿を拠点にしているのは、初期の衝撃もそうですが、憧れの先輩たちがいる場所でもあるからですか?
はい。世界にも響いている日本のブランドの多くは、原宿を拠点にしています。裏原カルチャーなど、世界的に見ても、ファッションにおいて原宿は、特別な街だと思っています。今後は僕も、東京の原宿にベースを置いているデザイナーとして、世界に見せるものは何か? を考えて、コレクションで見せていきたいんです。
――今の原宿や東京を切り取っていきたいと。
自分にはバイヤー的な視点もあるので「今だったらこういう見せ方をしたほうがいい」とか、俯瞰して見ちゃうところがあるんですよ。今、こういうデザイナーがパリでショーをしたら面白いんじゃないか? みたいなプロデューサー的な視点もあったりして。
――バイヤーして惹かれるのはどんなブランドですか?
オリジナリティがあること。このブランドだからこその表現をしているかどうか? その中で、ちゃんと時代感にマッチしていることが重要ですね。
――これからオリミの展望を教えてください。
必要以上に大きくしたいとは思っておらず、なるべくクオリティをキープしたまま、適正に広げていきたい。海外にも取引先をつくりたいですね。お店もブランドも、自分やスタッフがいいと思うものをパッケージにして伝える手段だから、この輪をもっと広げていきたい。
――オリミを通して伝えたいことは何ですか?
シンプルな言葉にはなりますが、ファッションは楽しいということですね。僕がやっている、機能ではなくて着飾ったりするような服が必要なものかどうかはわからないけれど、みんながファッションを楽しいと思ってくれることを僕は希望します。オリミはそれが感じられるブランドでありたいし、ジ エレファントもそういう店でありたい。僕が初めて原宿に来たときの初期衝動が、大人になってもずっと続いていて、それを人と共感したいということが、仕事をする上での最大のモチベーションです。

THE ELEPHANT TOKYO
SHOP INFO
ジ エレファント 東京店
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前2-31-2 factory_01 B1F
Google Map
TEL:03-6455-4710
営業:13:00~20:00 無休
Photos : Kenta Watanabe
Interview&Text : Hisami Kotakemori
▲ WPの本文 ▲