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おしゃれ好きにとって近年気になる頻出ワード「いなたい」。本来は「やぼったい」を意味する方言だったけれど一周回って今は違う! ポジティブな意味で、かっこいいものとして憧れる「いなたい」って何だ?
スタイリスト吉田周平さんに聞く
〝いなたい〟って何ですか?
Made in USAな大量生産のチープさ

[右]今でもMade in USAを貫くヘビーオンスのスウェット地。パーカ(キャンバー)¥15,950/ハイ!スタンダード
[左]ガシガシ使える堅牢さとジャストフィットが魅力のパタゴニアの名品。古着のフリース¥11,990/古着屋JAM 原宿店
主に1990〜2000年代の空気感

[右上]ロゴを主張して楽しみたい。ハット(各)¥9,790/カンゴール ヘッドウェア
[中]ストリートウェアの代表格のカーハートは、古着で差別化するのも手。古着のジャケット¥22,990/古着屋JAM 原宿店
[左下]春はブーツ以外にデッキシューズという選択肢も。靴(ティンバーランド)¥18,700/VF ジャパン
スポーツブランドをミックスしたスタイル

[右・中]大ブレイク中のアンブロ。セットアップで着るのがいなたい。パンツ¥20,900・ジャケット¥24,200(ともにアンブロ×ベルパー×ムウ ト アール)/ムウ ト アール
[左]ニットキャップでさりげなくロゴをきかせて。キャップ(オークリー)¥6,600/ダメージドーン 2nd
[下]ブランドの代表モデルでもある「996」。足もとでスポーティにハズすのも有効だ。スニーカー¥16,280/ニューバランスジャパンお客様相談室
ブロークコアもY2Kも包括する
〝懐かしいけどダサくない、
90~00年代のトレンド〟

ひと昔前に流行ったものが、リバイバルしてまた流行る、というのはファッションではよくあることですが、今人気の〝いなたい〟のポイントは1990~2000年代のトレンドであること。Y2Kよりは幅広いですが、それよりも古いと〝いなたい〟というよりも〝レトロ〟な印象になると思う。では、90〜00年代がどういう時代だったかというと…例えばですがアメリカが景気がよくて(フランスやイタリアなどのファッションと比べた意味での)、大量生産・工業製品のような感覚で生み出されるファッションアイテムがブームになりました。これはいい意味で言っていて、ある種の軽快さやモノとしての頑丈さが魅力だと思います。キャンバーのヘビーオンスのスウェットや、カーハートのワークウェアなどは、Made in USAのタフで気取らないムードがありますよね。
さらに、その時代を象徴するアイコン的存在が思い浮かぶアイテムを取り入れるのもおすすめ。〝いなたい〟は当時の空気を薫らせることが重要なので、70年代でも80年代でもなく、90〜00年代のアイコンがいるアイテムを投入してみてください。アディダスならリアム・ギャラガーやジャミロクワイのジェイ・ケイ、カンゴールならジェイ・Z、ティンバーランドならファレル・ウィリアムス、というようにそれ自体に90〜00年代のイメージが色濃くあるアイテムを調べて掘ってみるのも楽しいですよ。
もう一点、機能性の高いスポーツブランドのアイテムも〝いなたい〟の重要な要素。ニューバランスのスニーカーや、大ブームになったアンブロなど、本来ファッション的な目線で作られていないスポーティなアイテムをファッションとして日常的に着るのも、いなたさに必須なユースな空気感を後押ししてくれます。〝いなたい〟ってもともとは褒め言葉ではなかったように思いますが、それをファッションのテイストのひとつとして捉えて楽しめるのは、やっぱり若者ならではのエネルギーやフレッシュさがあってこそな気がします。また、〝いなたい〟を「古い」「90年代のコスプレみたい」…と思わせないコツは、どこかに品のよいアイテムや都会的なムードを足し算すること。〝いなたい〟が起点のミックススタイルを楽しんでください。
「いなたい」の正体 コーデ(実例)
ハイダメージな古着のカーハートをドレッシーに着る

「ペイントもダメージもてんこ盛りなカーハートのワークパンツ。古着ならではのインパクト大な1本は、ストリートなアイテムと好相性…でも、そこにあえてハイゲージのカシミヤのニットとドレスシャツを抜てきすると、たちまち“いなたさ”を立てつつも上品さまで欲張れる着こなしに」。
ニット(ボーディ)¥66,000/アルファ PR シャツ¥37,400/オーラリー 古着のパンツ¥31,790/古着屋JAM 原宿店 スニーカー(アディダス オリジナルス)¥15,400/アディダス コールセンター
太畝 のコーデュロイはモノトーンでキレよく

「素材自体にいなたいイメージのあるコーデュロイ。キューバシャツとダブルニーのショーツで懐かしさや抜け感も十分。でも実は、肝は配色にあり。ほっこりしがちなジャケットに、シャツとパンツはモノトーンでまとめるのがミソです」。
古着のジャケット¥7,700/プロップスストア アネックス シャツ¥46,200/エンジニアド ガーメンツ ショーツ(イントゥダスク)¥39,600/ジェットン ショールーム 靴(ティンバーランド)¥18,700/VF ジャパン ソックス/スタイリスト私物
土っぽいベストを都会的なネイビーで格上げする

「ベストってそれ自体がそもそもちょっといなたさがあるアイテム。ダック地ワークベストならなおのこと。そういうアイテムを取り入れるときこそ、頼もしいのがネイビー。僕、ネイビーはすごく都会的な色だと思うんです。同時にN.Y.とかの肉体労働の人たちのユニフォームとして使われる色でもある。だからワークアイテムをネイビーでまとめるのはなじみもいいし“いなたい”を格上げするにもいい。インナーはさりげなくカシミヤのバスクシャツできれいめに」。全身をネイビーでまとめて、土くささの中にもクリーンなムードを加味。足もとはスニーカーではなく黒のブーツというのもポイント。
古着のベスト¥5,390・古着のパンツ¥7,590/古着屋JAM 原宿店 バスクシャツ(ボーディ)¥88,000/アルファ PR ブーツ(ブランドストーン)¥29,700/シードコーポレーション
レザージャケットこそVゾーンにポイントを

「レザージャケットだってジャケット。Vゾーンにポイントをつくれば、艶っぽさが抑えられいなたくなる。ストライプのボタンダウンシャツに、グレーのカットソーをのぞかせて」。
ジャケット¥102,300/シーシーユー シャツ(マービンポンティアックシャツメイカーズ)¥39,600/オーバーリバー Tシャツ(クロ フォー フォル)¥19,800/ジャーナル スタンダード 渋谷スクランブルスクエア店 古着のジーンズ¥6,490/古着屋JAM 原宿店
ネルシャツを着るならダークトーンでまとめる

「ネルシャツは絶対ダークトーン、できれば寒色がおすすめです。モノトーンやネイビーとも相性がいいので、都会的なスタイリングに着地させやすい。古着はジャストサイズのものが多いので、その分パンツは太めにしてメリハリを意識しました」。
古着のシャツ¥7,700/プロップスストア アネックス 肩に巻いたスウェット¥24,200・パンツ¥22,000(ともにフォル)/ジャーナル スタンダード 渋谷スクランブルスクエア店 Tシャツ(ボーディ)¥27,500/アルファ PR ブーツ¥51,150/レッドウィング・ジャパン
淡いブルーのデニムをピークドラペルでシックに

「デニムonデニムっていなたいですよね。けど、特に薄いブルーのほうがよりユースなムードがあっていい。せっかく着るならピークドラペルのジャケットや、細ベルトなど、ドレッシーなアイテムとミックスすると緩急がついて今っぽいバランスになりますよ」。足もとはオフ白の“オーセンティック”で抜け感をプラスすれば上級者。
ジャケット¥104,500・ジーンズ¥83,600(ともにアワー レガシー)/エドストローム オフィス シャツ(リーバイス® ヴィンテージ クロージング)¥24,200/ジャーナル スタンダード レリューム ルミネ新宿店 ベルト(フォル)¥19,800/ジャーナル スタンダード 渋谷スクランブルスクエア店 スニーカー(ヴァンズ)¥9,350/ハイ!スタンダード
全身をオーバーシルエットで組み合わせる

「“上がタイトで下がワイド”がY2Kっぽくて流行っていますが、いなたいアイテムを主役で着るときは、上下ともにルーズなシルエットでまとめるのが新鮮。Vガセットのグレースウェットって、それだけでとってもいなたいですよね。ルーズなスウェットに、オーバーサイズのシャツ、ワイドなデニム。シャツの衿もとも、広めに開いたスウェットの衿ぐりに合わせて開ける。細部も大事ですが、根本のシルエットにも“いなたさ”は宿せます」。シックで気負わない、大人の余裕すら漂う2025年の“いなたさ”が実現。
スウェット(ナイスネス)¥55,000/イーライト ハーフジップシャツ(ベン デイビス)¥13,200/ハイ!スタンダード ジーンズ¥38,500/ノア クラブハウス
「いなたい」に差がつく視点を知る
L.L.Beanはコットンカシミヤを掘る

「古着のL.L.Beanでぜひ掘ってほしいのはコットンカシミヤのニット。実はアメリカのL.L.Beanでは一番人気の素材で、古着のものは裾のリブと身頃の幅がちょうどいいんです。リブがしっかりきいているのでブラウジングしてももたつかない。あと、ハーフジップも個人的にはいなたさを加速させてくれると思っています」。
[右]古着のニット¥5,500・[左]古着のニット¥6,600/ダメージドーン 2nd
アディダスの古着はパフォーマンスロゴを

「90年代に生まれた3本線のパフォーマンスロゴ。デザインもトレフォイル(三つ葉)ロゴよりスポーティで、“レトロ”じゃなく理想の“いなたい”をかなえてくれる」。フランスのフットボールの県大会ユニフォームを発見。
古着のトラックジャケット¥9,790/古着屋JAM 原宿店
シャツはオーセンティックに徹する

「チェックシャツのいなたさもいいけれど、みんなもう持っていそうなので。次にぜひ狙ってほしいのはボタンダウン、オックス生地、キャンディストライプの思い切りオーセンティックな1枚。重ねても1枚でもいなたくキマりますよ」。
シャツ¥27,500/ノア クラブハウス
Photos:Yuki Kumagai Yoshio Kato Stylist:Shuhei Yoshida Model:Rio Takahashi[MEN’S NON-NO model]
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