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かっこいい大人になりたい、という気持ちでおしゃれをすることって、誰しもある経験。なら知りたいのは、僕らの憧れるかっこいい大人たちは、20歳頃、どんな買い物をしてきたのか? 兄貴たちに聞いた、あの頃の買い物履歴!
かっこいい兄貴に聞いた
僕を大人にしてくれた買い物
僕を大人にしてくれた買い物①
スタビライザーのselvedge straight
一緒にオトナに成長したデニム
9年前、ジャケットに合わせるパンツのアドバイスを先輩からもらったときに、リジッドのデニムをすすめられました。当時の僕はスラックス一択で、「デニム=大人がかっこよく着こなすもの」と思い込んでいたので、「まだ早いかな」と敬遠していたんです。でも、このスタビライザーのデニムは、スラックスのようにシルエットがきれいで、自分の体型になじんですごく気に入った。違うブランドのデニムもいくつか試してみましたが、自分の体に一番フィットするものはこれだなと。それと、大きな価値がもうひとつあって、僕はそれまで、いわゆる「ドレス」といわれるジャケットスタイルが自分の軸になっていましたが、デニムがワードローブに加わったことで、「アメカジ」のすごさを知る機会になったんです。それまでも服に関することは一生懸命勉強はしていたんですが、やっぱりちゃんと愛用してこそわかることがある。このデニムを育ててみようと決めてからは夏でも冬でも毎日はき続けていました。
2、3年たった頃に周りから色落ち具合を褒められたことがうれしくて、さらに愛着が湧きましたね。ただ、25歳を超えたあたりで体型が変化して、一時期はけなくなったりも(笑)。これが似合う自分でいようと思った経験も含め、このデニムと一緒に、自分が大人になったなと実感します。
僕を大人にしてくれた買い物②
コム デ ギャルソン・シャツ フォーエバーの
ワイドクラシック/ホワイト
マイ・スタンダードになった清水買い
タイムレスに愛されるコム デ ギャルソン・シャツの白シャツに出会ったのは大学生のとき。学生の自分からしたら、3万円台後半のシャツはかなりオトナな買い物でしたが、特別扱いをするのではなく、ベーシックなものこそ着こなすことができるように、と日常使いをしていました。僕は割と飛ばしたアイテムも好きなタイプですが、当時からコーディネートを組む際に意識していたのは品性。例えば、ズタボロの古着や、個性的なジャケットの下にも、アイロンをかけたこの白シャツを挟むとスタイリングがぴりっと締まる。一張羅として寝かせるなんてもったいないし、2~3年ほど着続けたら、ちゃんと自分になじんできたという感覚がありました。単に「スタンダードアイテムだから」という理由で買って、それがすぐに自分のスタイルになるか、と言ったらそんなことは絶対にないんですよね。そのアイテムが似合うようになるための試行錯誤にこそ意味があると思います。
今はスマホでいろんな着こなしがすぐに見られるし、それもダメではないと思いますが、「かっこいい大人」が「スタイルのある人」とするならば、自分で見つける、あるいはいろんなファッションを試すしかないと思います。マネするのが簡単な時代だからこそ、そういう鍛錬が、のちのちのその人だけのセンスになりますよ。とはいえ、かしこまる必要もなくて、僕も先輩から「今しか着られないアイテムってあるよ」と言われていたので、20代のうちに、価格やジャンルを問わず、気になったものをどんどん挑戦してみる、というのが一番大事かもしれません。その試行錯誤の先に、自分だけの「かっこいい大人」というものがあると信じています。
僕を大人にしてくれた買い物③
セント ジェームス ウェッソン・白/マリン
自分の好きに自信をくれた一生もの
1994年、僕が高校生の頃に買ったセント ジェームスのカットソーは、長い間つき合っていくうちに、自分の中で立ち位置に変化があったアイテム。買った当時はオーセンティックなものが流行っていて、僕は地元の近くのインポートショップで、店員のお兄さんに「一生着られる!」とすすめられて購入。ですがそのときは、ボクシーなシルエットやボートネックの着こなしを模索しながらコーディネートに試行錯誤……数年後、気づけば実家に眠らせてしまうことに。再び引っ張り出したのは2015年頃。すっかり大人になった頃に袖を通すと、ちゃんと無理なく似合ったんです。このカットソーは今もたまに着ていて、当時の自分と握手するような気持ちで着ています。それに、買った当時と今の自分の違いも感じ取れる。「服に自分が寄る」のではなく「自分の側に入ってきてくれる服」を選ぶようになったな、とか。
実は最近まで、「一生もの」という言葉には懐疑的でした。でも数年前にアダム・キメルのアーカイブの展示をしたことがきっかけで、自分が思う「好き」は一過性のものではなく、ほかの自分の「好き」とも掘るほどにつながりがあると実感したんです。そのときいいと思ったものを直観的に買うっていう行為もバカにできないと再認識しました。ただの高校生だった僕の買い物だって、雑誌に掲載してもらえるエピソードになっちゃうのだから。
僕を大人にしてくれた買い物④
ジル サンダーの白シャツ
憧れた大人を体現する白シャツ
中学生のときから「早く大人になって、スタイリストになりたい!」と思っていました。周りではストリートが流行っていましたが、僕はロンドンの映画やミュージシャンに憧れて、トラッドな格好をしていましたね。当時の流行りに対してアンチテーゼの気持ちもあった。アシスタントになる19歳の頃に、トラッドが流行り始めて、僕はみんなとは違う方向に行きたいな、と思うようになったんです。当時、仕事の現場で出会ったセンスのいい大人たちがその答えをくれた。みんな上質なアイテムをさらっと着ていてすてきだな、と思い、自分の中ではそんな方たちのイメージが「ジェントル」でした。それ以来、自分の好きなロンドンのカルチャーと、なりたい大人像の「ジェントル」をミックスさせたファッションを楽しむようになりました。
そんな19歳の頃の、思い出深い買い物がジル サンダーの白シャツ。成人式で着用するためのアイテムを買いに行って出会いました。主張が強すぎないデザインと、着たときに放つエレガントで上品な雰囲気が、まさに求めていたジェントルのイメージ! 今はまったく同じものは売っていませんが、当時から、ジル サンダーのデザイナーへの憧れも強かったですね。ちょっと背伸びしてるかも、と迷うときのアドバイスとして、その憧れのアイテムが、単に「流行っているから」ではなく、ちゃんと自分のめざす「スタイル」にマッチすれば、それは絶対に買いだと思います。
Photos:Naoto Usami Stylist:Takeshi Toyoshima Model:Daina Matsui[MEN’S NON-NO model] Interview:Sayako Ono
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