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かっこいい大人になりたい、という気持ちでおしゃれをすることって、誰しもある経験。なら知りたいのは、僕らの憧れるかっこいい大人たちは、20歳頃、どんな買い物をしてきたのか? 兄貴たちに聞いた、あの頃の買い物履歴!
かっこいい兄貴に聞いた
僕を大人にしてくれた買い物
僕を大人にしてくれた買い物①
ISSEY MIYAKEの
ライトメルトンジャケット
新しい価値観を教えてくれた1着
20代の頃に憧れていたスタイリストさんの影響で、自然体でありながらも気品のある雰囲気をまとえる大人こそかっこいい、というのが僕の中にずっとあります。今思い返してみると、周りの友人や大人たちと意見を交換することで「何がかっこいいか」という視野が広がっていったと思います。若い頃は自分自身の世界を掘り下げることも必要ですが、それと同じぐらい周りの人とコミュニケーションをとって、異なる価値観に触れることも大切ですね。
人とのつながりから、新しい価値観の扉が開くのはファッションでも同じ。以前、イッセイミヤケのアーカイブを集めている知人にコレクションを見せてもらったときにこのジャケットに出会って、新しい発見があった。それまでの僕にとってファッション、あるいはおしゃれなもの、というのは「飾る・デコラティブである」つまり足し算で格上げする価値観と、「ミニマルである」引き算で格上げするという2つの軸でした。ところが、このジャケットを見たときにそのどちらのカテゴリーでもないかっこよさ、というのを知りました。自分が知らなかったデザインの着地点……こんなアウトプットの仕方があるんだと、新しい境地に連れていってもらえた。また同時に、その当時すでにアーカイブだったジャケットの「今見てもすごくかっこいい」という衝撃もあって。知人にお願いして買い取らせていただいたのですが、驚くべきことに、2024年の今見ても「すごくかっこいい」と思わせられる力が、この1着にはある。長年一緒に過ごすほどに、よさがわかるアイテム、というのは運命的な出会いから始まると思います。読者の皆さんにも、人とのつながり、そしてそこから広がる、自分の価値観を覆されるような服との出会いを大切にしてほしいです。
僕を大人にしてくれた買い物②
ブルックス ブラザーズのブレザー
王道ブランドで着て育てる、
自分のものさし
どんなアイテムも、いきなり着こなすことって意外と難しくて。ただ、それまでに自分に似合うようにと服と向き合って着こなしを模索してきた人と、そうではない人ではその「着こなす力」に差が出るんだなと日々実感しています。オトナ服、を「かっこいい大人につながるアイテム」と考えるなら、推したいのは王道ブランドのジャケット! 僕自身も23歳のときに買いました。なぜかというと、ブルックス ブラザーズでもラルフ ローレンでも、王道のブランドの定番のジャケットというのは、「万人にフィットする」一方で、「若すぎるとなんか似合わない」となるものなんです(笑)。そして同時に「服を着こなすためのものさし」を自分の中に教えてくれるもの。
『TAKE IVY』という一冊の本に魅了された僕は、23歳の頃、ブルックス ブラザーズへ入社して、オーダーでジャケットを作りました。その経験を含めて財産になったと思いますが、もっと大事なのは、最初はやっぱり「なんかしっくりこない」というところから、「じゃあ、どうやって着るか」を考えたというところです。制服のように毎日毎日着ることで、ちょっとずつ「ジャケットを着こなせる」ように成長させてくれたと思います。そして、着こなせるようになってくるうちに「ジャケットって本来こういうものなんだ」というものさしが自分の中にできた。そうすると、ほかのジャケットを着ていても「あ、ここがいいんだ」とか「ここがこのジャケットの個性だな」とわかるようになるんです。たぶん、1着目にオーバーシルエットのジャケットを買ってもそういうのってわからない。そして、ちゃんとジャケットを着てきた人の目には「この人はジャケットを着こなしてきた人かどうか」はすぐにわかってしまうので、「40歳になったから渋いジャケットスタイルに挑戦」というのはうまくいかない。20代から着ていないと出せない雰囲気や着こなしってあるんですよ……! 同じことは革靴でも言える。例えば、オールデンを最初に履いていれば、レユッカスを履いてみて何が違うか、何がよさかわかる。白シャツとかも同じ。王道を自分の中に取り込んでおくのが、20歳のいい投資だと僕は思います。
Photos:Naoto Usami Stylist:Takeshi Toyoshima Model:Daina Matsui[MEN’S NON-NO model] Interview:Sayako Ono
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