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時代を超えて愛され続ける “定番”アイテムには、完成されたデザインとしての魅力が詰まっている。今回は未来の【永久定番】の呼び声も高い、ユニクロの定番アイテムにフォーカス。春夏シーズンにおすすめの定番ベスト3を短期連載でお届けする。第3回はユニクロの定番の中でもリピーターが圧倒的に多いオックスフォードシャツ。
ユニクロとは?
1984年に「ユニクロ」の第1号店となる「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」を広島市にオープン。カジュアル衣料品を仕入れて販売する小売店としてスタートし、1988年から「ユニクロ」をブランドとして展開。1998年にフリースが大ヒットして有名に。2013年からは「LifeWear(ライフウエア)」をコンセプトに掲げ、定番に注力。
1.ユニクロの
オックスフォードシャツの歴史
パターンから素材まで
老舗トラッドブランドにも
負けない90年代からのロングセラー
ユニクロがスタートした1984年はアメカジ・イタカジ(イタリアンカジュアル)といったカジュアルと並んで、プレッピーが脚光を浴びアイビーがリバイバルした時代でもあった。かっちりもカジュアルも、どちらにも着られるオックスフォードBD(ボタンダウン)シャツは、当時からスタンダードアイテムとして人気を集めていた。
1980年代後半から90年代にかけて一世を風靡した渋カジ(渋谷カジュアルの略称。渋谷界隈の付属高校生がファッションリーダーとなったストリートスタイル)では、ポロ ラルフ ローレンのオックスフォードBDシャツがマストアイテムとなる。やがて紺ブレブームが巻き起こるとブルックス ブラザーズのような老舗トラッドブランドのオックスフォードBDシャツにも注目が集まり、おしゃれな若者たちのユニフォームのような存在になった。
ちなみにオックスフォードシャツとは斜子織り(ななこおり)の平織(=オックスフォード)生地でつくられたシャツのこと。英国オックスフォード大学にちなんだ名称。ユニクロがあえて「BDシャツ」と謳っていないように、BDスタイルのシャツに使われるのが一般的だ。
参考までにBDシャツを世に広めたのはブルックス ブラザーズ。創業者の孫、ジョン・E・ブルックスがイギリスでポロ競技を観戦したとき、選手がオックスフォードシャツの襟を風にあおられないようにボタンで留めていたのを見てBDシャツを思いついき、1896年に「ポロカラーシャツ」として売り出したのが由来とされている。
ユニクロはジーンズ同様に90年代後半からオリジナルでオックスフォードシャツをつくりはじめている。新聞に広告を出しはじめた1999年、文字だけのジーンズの広告に続く第2弾としてブロードチェックシャツの写真を一面にレイアウトした広告を出している。「これは、かなり、こだわりました。ユニクロのシャツ、1900円」という、キャッチコピーの下には商品の商品のこだわりポイントがディテール別に引き出し線で示されていた。
素材の項目ではオックスフォードシャツについてもふれ、“最高品質のコットンを使用してつくられている”という内容が記されている。この広告ではシャツのディテールひとつひとつに解説を付けることで、ユニクロの“ものづくり”に対する真摯な姿勢をアピールした。
ほかの定番と同様に、ユニクロはオックスフォードシャツを、マイナーチェンジを繰り返しながらつくり続け、進化させててきた。シャツは学生やビジネスマンが毎日着るユニフォーム的なアイテムで、毎日着替えては洗う消耗品でもある。だからユニクロの商品の中でもまとめ買いする人やリピートする人が格段に多く、消費者からの意見も真摯に受け止め、製品づくりに反映してきた。
90年代からオリジナル生地を開発する中で、オックスフォードシャツは2010年代にベストな生地を完成させていた。「これ以上変えるところがない」とユニクロでは同じ生地を8年間使い続けたが、これは異例のことだった。だから2022年春夏に、マスターピースとして完成されていたオックスフォードシャツがリニューアルされたのは、SNSなどでも大きな話題になった。
「LifeWear」をコンセプトに掲げたユニクロは、完成された定番をさらに進化させることに取り組んだ。試行錯誤を重ねた結果、三子糸(みこいと)を使うということに。三子糸は文字通り3本の糸を撚って1本にした糸。単糸より双糸、双糸より三子糸のほうが強度は高くなる。ただしつくるのに時間とコストがかかるため、通常は縫製糸にしか使われていない。
しかしながら、このときユニクロは「よりタフに、しなやかに」というテーマを掲げていたため、撚りを加えるほどしなやかになる三子糸こそ最善と判断した。生地として、ほぼ流通していない三子糸のオックスフォードをつくるのは簡単ではなかった。それでも時間をかけて、素晴らしいオックスフォード生地を完成させる。
しなやかで品のある生地に合わせてパターンやディテールも一新することになり、現在のオックスフォードシャツが完成した。それまでのオックスフォードシャツは正統派のアメリカントラッドの雰囲気があったが、2020年からの新生「三子糸」オックスフォードシャツはキメが細かく、ハイブランドのシャツのようなルックス。この価格でラグジュアリーブランドに引けを取らず、難なくコーディネートできるのがユニクロの真骨頂だ。
2.ユニクロのオックスフォードシャツの
ディテール解説
オーセンティックなBDシャツをしなやかで
タフな三子糸オックスフォード生地で
正統派のオックスフォードシャツを上質な普段着として着られるように、オリジナルの生地で完成させた。2000年代のモデルは生地の目が粗く、空気を含んだような厚みがあったが、2022年からは三子糸を使用してなめらかで上品さが漂うシャツに。リラックス感がありながらクリーンに見えるシルエット、着丈やそのほかのディテールもよりモダンに更新された。サイズ展開はS・Ⅿ・L・XL(※オンラインストアではXS・XXL・3XL・4XLサイズの展開もある)。
〈オックスフォードシャツ(長袖)〉
64 BLUE
リラックス感のあるモダンなシルエット
64ブルーのオックスフォードシャツは、チノパンやカーゴパンツなどカジュアルパンツとも好相性。肩位置はしっかり合いつつ、リラックス感のある現代的なレギュラーシルエット。タックアウトしたときスタイリッシュに見える着丈にもこだわりが。
三子糸を使用したユニクロ独自開発のオックスフォード生地。丈夫で長く着られる服であってほしいという想いから、ヨコ糸に強くてしなやかな三子糸を採用。糸の太さや仕上げは試作をくりかえして、現在のバランスに。コットン100%は初代から変わらず。
ネクタイをしたときも、ネクタイをせずに第1ボタンを開けたときも、美しくS字ロールを描くようにデザインされた襟。第1ボタンと第2ボタンの間隔も第1ボタンを外したときにちょうどいいように、生地に合わせて調整されている。
脇から袖にかけての縫製は、高級シャツの仕立てで採用される折り伏せ縫い。縫い代を包んで縫う縫製方法で、肌にやさしく、洗濯をしても縫い代がほつれづらいという特徴が。快適な着用感と繰り返しての洗濯に耐えるタフさを両立。
ポケットの形状やサイズは時代によって変化してきたが、現在は角がアールになったラウンド型。
一般的に貝ボタンのほうが高級とされているが割れやすいという弱点があり、ユニクロでは貝ボタンのようなきらめきを再現したプラスティックボタンを開発。3層の樹脂を重ね、縁を削って丸みをつけることで留め外ししやすい形状に。
手首のフィット感を調整できるよう、袖口には2つのボタンが。カフスプラケットにもボタンがひとつ付き、腕まくりしたときに袖が落ちにくくしている。
2022年から加わったサイドガセット。強度が高まるだけでなく、タックアウトしたときの見た目もよくなる。
背面はアメリカントラッドのシャツに多いセンタープリーツ&ループ仕様。手間がかかるため低価格シャツだと省略されがちなディテールだが、オーセンティックなディテールとしてユニクロは尊重している。
●COLOR VARIATION
01 OFF WHITE
スーツやジャケパンの正統派な着こなしにマストな白はオックスフォードシャツの定番カラー。「白のオックスフォードシャツはユニクロ」というおしゃれ通も多く、絶大な信頼を得ている。キメが細やかだからモード系のトレンドとして脚光を浴びる白シャツ&細めの黒ネクタイスタイルにもマッチする。
06 GRAY
シーズンカラーとして展開されるグレーは、ニュートラルカラーやペールトーンと相性のいい色。ブルーに比べてトラッド感が薄く、モード系やストリート系のスタイルに合わせやすい。淡い色でもシャープさがほしいときにも活躍してくれる。
69 NAVY
シャツイチのコーディネートでもサマになるダークトーンもシーズンカラーとしてラインナップ。トラッド感もあるネイビーはホワイトジーンズと合わせてフレンチアイビー風のコーディネートにもハマる。注目のタイドアップも柄タイは、ネイビーに合せるとトライしやすい。
ネイビーはボタンもステッチもネイビーとワントーンなのがスタイリッシュ。ディテールに手を抜かないのもユニクロが支持される理由。
3.ユニクロのオックスフォードシャツの
バリエーション
オーセンティックなキャンディストライプや
機能的な形態安定加工タイプもラインナップ
オックスフォードシャツは無地だけでなく、アメリカントラッドスタイルに欠かせないキャンディストライプ柄も定番として展開。キャンディストライプも三子糸オックスフォード生地でつくられている。またビジネツシャツとして使いやすい形態安定加工タイプのファインクロスオックスフォードシャツも近年加わっている。
〈オックスフォードストライプシャツ(長袖)〉
65 BLUE
白地にパステルカラーを等間隔で配したキャンディストライプシャツは、アメリカントラッドに欠かせない。クリーンな印象の白×ブルーがユニクロの定番色。アイビー、プレッピーはもちろん、オーバーサイズを選んでストリート系コーディネートにも応用できる。
織りでストライプ柄を表現したオックスフォード生地を使用。スーツにマッチするストライプ柄は、タイとの相性を考えるのも楽しい。
●COLOR VARIATION
07 GRAY
ホワイト×グレーのストライプをシーズンカラーとしてラインナップ。無地グレーよりもトラッドな印象ながら、ブルーのストライプよりもコントラストが低いので、カジュアルにも応用しやすい。
72 PURPLE
ピンクよりも落ち着いたルックスのホワイト×パープル。甘すぎないからきれいめコーディネートに色を差したいときに大活躍。ワントーンよりも清涼感があって、女子受けも狙える。
〈ファインクロスオックスフォードシャツ
(ボタンダウンカラー・長袖)〉
00 WHITE
生地に形態安定加工を施した、綿100%でもシワになりにくいファインクロスオックスフォードを使用。オックスフォードシャツがオフホワイトなのに対して、こちらはビジネスユースを見据えた真っ白なホワイト。シルエットやディテールなども微妙に異なる。
見た目ですぐわかる違いは背面プリーツ部分のループがない点。ループがないほうがよりドレッシーな印象。
●オックスフォードシャツとの比較
通常のオックスフォードシャツと重ねてみた。下が通常のオックスフォードシャツで上がファインクロスオックスフォードシャツ。ジャケットのインナーでタックインして着ることを前提にしているため、袖やボディが細身で、着丈が長い。サイドガセットもなし。
問い合わせ先
ユニクロ
TEL:0120-170-296
4.みんなのユニクロ着こなし
「オックスフォードシャツ」スナップ!
おしゃれな人たちがユニクロのオックスフォードシャツをどんなコーディネートで着ているか? スナップとコメントでお届け!
ユニクロ「オックスフォードシャツ」の
正解着こなし①
佐々木翔伍さん
(フレッシュサービス スタッフ)
「定番で間違いのないクオリティがユニクロの魅力。だから毎日身に着けるような消耗品を買うことが多いです。オックスフォードシャツは生地の目が細かいので、いわゆるオーセンティックなアメトラのものよりもクリーンな印象。一番上までボタンを留めてかっちり着たくなるデザインです。ネックまわりにもほどよいゆとりがあり、着ていて苦しくなることがありません」
「アウターやパンツはビッグシルエットを着ることが多いんですが、オックスフォードシャツはジャストに近いLサイズです。きょうはフレッシュサービスのネイビーのパンツに足元はニューバランスの990v6、キャップはTHE H.W.DOG&COというコーディネート。幼く見えないよう小物をベージュやグレーといった落ち着いたトーンでまとめています」
ユニクロ「オックスフォードシャツ」の
正解着こなし②
中塚凌空(メンズノンノモデル)
「ユニクロはファッションとしてだけでなく、生活の必需品としても愛されているブランドだと思います。僕のような大学生にも手に取りやすい価格で、このシャツのようにきちんとした場所にも着ていける服が買えるって最高ですよね。コンパクトに見えてもリラックス感があって着やすいし、高見えするのも気に入っているポイント」
「ピンク系のオックスフォードストライプシャツは、よくあるような明るいピンクではない、大人っぽいパープルに惹かれました。ブラックネイビーでまとめた古着カーディガン&ヴィンテージスラックスのコーディネートに、パープルを差すことでスタイリングに奥行を出しています。韓国のブランド、ソンシンバルのスリッポンや自分のブランド、リウィロの手描きロゴ風キャップでモダンなムードを添えました」
ユニクロ「オックスフォードシャツ」の
正解着こなし③
荒幡征諄さん(スタイリスト)
「モテ服として間違いないネイビーのボタンダウンシャツが2,990円。驚異的なことですが、ユニクロでは当たり前のように売られています。だから老若男女、おしゃれ好きからそうじゃない人にもウケるんでしょうね。誰にもでも似合う定番がたくさんあって素晴らしい! 最近僕はシャツ・オン・シャツがマイ・ブームなので、このネイビーのオックスフォードシャツはXLを選びました。サイズ展開も充実しているから、着こなしに合わせて選べて最高!」
「70’sカルチャーが好きで、ラングラーの古着ベルボトムに古着のマルチカラーシャツ、足元はピンクのコンバースといったヒッピー風の着こなしが多いんですが、ユニクロのオックスフォードシャツを合わせるとだいぶ品がよくなるんですよ。古着ばかり着ている自分にとって、清潔感や好印象を足せるユニクロは本気でありがたいです」
Photos:Erina Takahashi(still&snap) Stylist:Toru Asano Composition & Text:Hisami Kotakemori
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