▼ WPの本文 ▼
時代を超えて愛され続ける “定番”アイテムには、完成されたデザインとしての魅力が詰まっている。今回は未来の【永久定番名品】の呼び声も高い、ユニクロの定番アイテムにフォーカス。春夏シーズンにおすすめの定番ベスト3を短期連載でお届けする。第2回はブランドスタート時から力を入れてきた看板アイテム、ジーンズを深掘り。
ユニクロとは?
1984年に「ユニクロ」の第1号店となる「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」を広島市にオープン。カジュアル衣料品を仕入れて販売する小売店としてスタートし、1988年から「ユニクロ」をブランドとして展開。1998年にフリースが大ヒットして有名に。2013年からは「LifeWear(ライフウエア)」をコンセプトに掲げ、定番に注力。
1.ユニクロのジーンズの歴史
ユニクロの定番として90年代から注力し
今も進化を続けるブランドの看板アイテム
1984年に広島市からスタートしたユニクロ。ユニセックスなカジュアルファッションの店ということもあり、仕入れ店舗の時代からジーンズは主軸となるアイテムだった。1998年にフリースが大ヒットして原宿に出店し、ブランドとして知られるようになった翌1999年。「ユニクロはなぜジーンズを2900円で売ることができるのか」という文字だけの新聞広告を出して話題を呼んだ。
当時、デニムブランドの定番ジーンズは7~8,000円ほどだったので、2,900円のジーンズはインパクトがあった。しかもこの広告には「ユニクロのジーンズは13.75~14.5オンスの国産デニム100%。厳選したデニム用のアメリカ綿を中心にブレンドし、ピュアインディゴを使って伝統的な『ロープ染色』の手法で染め上げ、縫製、加工までを自社で管理しています」と、製法が詳細に記され、ユニクロのジーンズが高品質であることをアピールした。
実はユニクロは1998年から、広島県のデニム専業メーカー「カイハラ」と生地製造・開発でタッグを組みはじめていた。「カイハラ」は備前絣の産地として栄えた福山市で、1893年に創業した老舗繊維メーカーだ。1960年代後半から絣で培った技術を生かしてデニム生地をつくりはじめ、1970年に日本初のロープ染色機を完成させてデニム専業メーカーへと舵をとった。1991年には国内で初めて紡績・染色・織布・整理加工とデニム生地製造の一貫生産体制を確立。
ユニクロはそんな「カイハラ」の協力を得て、2000年代には定番ジーンズに「カイハラ」デニムを採用する品番が登場するなど、素材のリニューアルを繰り返していく。2003年に矢沢永吉をユニクロのジーンズのテレビCMに起用し、進化し続ける“質の高いベーシックカジュアル”の象徴と位置づけた。
同時に2000年代は、90年代からのヴィンテージジーンズブームを受けて、ファッション業界ではレプリカジーンズや復刻モデルが人気を集め、旧織機でしか織ることができない耳付きデニムが格上として扱われていた。ユニクロも2007年秋冬には茶綿のセルビッジが付いた「MADE IN JAPANデニム」を5,990円で、2009年秋冬には3,990円で「セルビッジジーンズ」を発売。機能ジーンズやストレッチジーンズがヒットを飛ばす一方で、オーセンティックなジーンズを追求していた。
2013年に「LifeWear」を新コンセプトに掲げ、ユニクロが得意とする機能的な服とともに日常着のベースとなる定番を見直し、進化させることにもさらなる力を注ぎはじめる。2014年春夏には「カイハラ」デニムを使用して、定番の「レギュラーフィットストレートジーンズ」でセルビッジデニムを復活させた。また人気を博していた「スリムフィットジーンズ」も2014年秋冬からセルビッジストレッチ素材へとリニューアルを行う。
その後ストリートファッションやビッグシルエットがトレンドになると、一時的に「セルビッジクラシックフィットジーンズ」は姿を消すが、2020年にアップデートして復刻される。ユニクロは「未来を見据えた新しいスタンダード」として、このジーンズを打ち出した。セルビッジシリーズはSDGsが推奨され、人々の間で高まっていた“オーセンティック志向”と見事にシンクロした。
グローバル企業として成長を続けるユニクロは、時代とともに進化する“最高のジーンズ”をつくるために、2016年秋、L.A.に「ジーンズイノベーションセンター」を開設した。そこにはヴィンテージ・ジーンズのアーカイブをはじめ、ジーンズ作りに必要なすべての情報が集まり、ジーンズを知り尽くしたスペシャリストも集結。今までにないジーンズを目指して、日々研究と開発を進めている。
“最高のジーンズ”をつくるにあたっては、環境関連の問題をクリアする革新的な製法を生み出すことも重要なミッションになっている。ユニクロはレーザーやバイオウォッシュ、ナノバブルなどの最新機器を駆使して、水の使用量を大幅に削減し、クオリティを落とさずに従来よりも魅力的なジーンズをつくりだすオリジナルのレシピを開発した。
UNIQLO JEANS COLUMN
最新デニム加工①/ウォッシュ
最新デニム加工②/エコストーン
定番のジーンズは「カイハラ」でつくられた最上のセルビッジデニム生地を、「ジーンズイノベーションセンター」が生み出したベストなレシピに基づいて、バングラデッシュにある「パシフィックジーンズ」が縫製、加工を行う。
「パシフィックジーンズ」は2008年からユニクロのジーンズの縫製や加工を行い、多様なデニムを手がけてきた。今シーズンもユニクロの多くのジーンズが、ここでつくられている。
ユニクロは現在、さらなる環境負荷の軽減や労働環境も改善しながら、水を一切使用しないジーンズづくりを目標に掲げている。試行錯誤を繰り返しながら、それでも高い目標をクリアするのがユニクロだ。定番ジーンズはこれからもアップデートやマイナーチェンジを繰り返し、ファッション性をキープしながら、未来のヴィンテージになっていくことだろう。
2.ユニクロのジーンズのディテール解説
スロウなものづくりを象徴する
赤ミミ付きジーンズは2シルエット展開
現在ユニクロでは、赤ミミ付き=セルビッジジーンズはレギュラーとスリム、2つのストレートシルエットで展開している。レギュラーは2007年秋冬の「MADE IN JAPANデニム」モデルに、スリムは素材がセルビッジに変わった2014年秋冬モデルにそのルーツがあるが、さまざまなシーズンでマイナーチェンジが行われている。
〈セルビッジレギュラーフィット
ストレートジーンズ(丈標準78.5cm)〉
69 NAVY
ディテールでもヴィンテージ感を演出
ほどよい厚みの13.5オンスのデニムを使用。腰回りから裾までストンとした王道のストレートシルエット。綿100%の赤ミミだけでなく、フロントボタンはシルバー、リベットはカパー、ステッチはイエロー・オレンジとアメカジの代表的なヴィンテージ・ジーンズの仕様を踏襲している。
アルミのような質感の金属製ボタン。UNIQLOの文字が3つ、サークル状に刻印されている。ボタン穴のかがりはリジッドデニムに合う黒糸。
フロントはジッパーフライ。高品質なYKK製のファスナーを使用しているので、開け閉めもスムーズだ。縫製も丁寧で美しい。
ポケットの補強には赤茶色のカパーリベット。このリベットにもUNIQLOの文字が2つ、サークル状に刻印されている。
ヒップポケットがノーステッチというアノニマス性もユニクロの魅力。ヒップポケットの位置は脚長に見えるようにやや高めに設定。
セルビッジジーンズは赤ミミが見えるように裾が折り返されて販売されている。レギュラーフィットは裾がまっすぐだから、ブーツなどにも合わせやすい。
旧式シャトル織機で、時間をかけて織られる赤ミミデニム。裾上げはチェーンステッチと、ここにもこだわりが。
セルビッジジーンズは、スレーキと呼ばれる内ポケットの布裏にジーンズのプロフィールが印刷されている。Fabricの欄には「FABRIC BY KAIHAR」と「カイハラ」のデニムを使っていることが記されている。
旧式のシャトル織機を使って織り上げたデニム。糸の芯だけが不均一なムラ糸を使うことで、最初はハリと硬さがあるクリーンなデニムだが、時間が経つにつれて芯のムラ糸が浮き立ち、ヴィンテージデニムのようなタテ落ちが現れる。旧式で時間をかけることで、経年変化に差が出るのだ。
●COLOR VARIATION
01 OFF WHITE
2024年春夏から再販されたセルビッジレギュラーフィットストレートジーンズのオフホワイト。バスクボーダーシャツにデッキシューズのようなフレンチアイビースタイルに合わせて、折り返した赤ミミをアクセントに。トラッド系やさわやかなスタイリングにおすすめ。
〈ストレッチセルビッジスリムフィットジーンズ〉69 NAVY
ストレッチデニムで洗練されたルックス
高めのひざ位置から裾に向かって少しテーパードした細身のストレートシルエット。ほどよい厚みの13.5オンスのデニムは、ポリウレンタンを1~2%入れることでセルビッジデニムでありながらストレッチ性があり、細くても快適なはき心地。レギュラーとは違った、デニムに溶け込むディテールでクワイエットな表情に。
フロントボタンはダークグレー。UNIQLOの文字は2つで、ロゴが目立たないデザインを採用。ボタン穴のかがりはレギュラーと同じく、リジッドデニムに合う黒糸。
YKKファスナーを使用したジッパーフライのフロント。ボタンと同様に、リジッドデニムになじむダークグレーのファスナーを採用。
リベットはダークグレー、ステッチはベージュブラウン系カラーで、全体をミニマルなワントーンに。
ノーステッチのヒップポケットに高めの位置設定は、レギュラーと同じ。ステッチをなじませて、デニムブランドというよりもモードブランドのクリーンなデニムといった印象に。
旧式織機に独自の改造を加えて、本格的な風合いでストレッチ機能をもった革新的なデニムを「カイハラ」と開発。旧式デニムならではの凹凸感は残しつつ、快適なはき心地を実現。
●COLOR VARIATION
09 BLACK
ヨコ糸も黒く染めて織り上げたストレッチセルビッジスリムフィットジーンズのブラック。ボタンやリベットはダークグレー、ステッチもブラックのワントーン。折り返すと白フチの赤ミミだけが目立つ。モード系の着こなしに合せたい。
●レギュラーとスリムの比較
同じ30インチのレギュラーとスリムを重ねてみると、ウエストから腰にかけては同じサイズだが、スリムはレッグ部分がももから裾にかけてテーパードしているのがわかる。数センチの差だが、ディテールの違いもあってイメージは大きく異なる。
3.ユニクロの定番ジーンズの
バリエーション
加工デニムのレギュラー&スリム
ストレートとスキニーが定番
セルビッジデニム2モデルのほか、レギュラーフィットストレートジーンズ、スリムフィットジーンズ、ウルトラストレッチスキニーフィットジーンズの3モデルが定番として展開されている。それぞれの代表的なカラーをピックアップした。
〈レギュラーフィットストレートジーンズ
(丈標準78.5cm)〉
ユニクロ初期から展開されているオーセンティックなシルエット。セルビッジデニムのレギュラーフィットとパターンやディテールは同じだが、コンピュータ制御の織機で織られたデニムを使用。進化した加工技術でリアルなユーズド感を実現している。
06 GRAY
はきこんだブラックジーンズのようなグレー。ステッチの色はグレーを採用してワントーンに。アメカジ系のコーディネートをシャープに見せたいとき、モノトーンスタイルにヌケ感を入れたいときなどにお役立ち。
グレーはタテ糸だけでなくヨコ糸も黒く染めた糸を使用しているので、裏も黒い。
66 BLUE
ヴィンテージデニムのようなタテ落ちやヒゲ、アタリが際立つブルー。王道アメカジからきれいめコーデのハズしまで、汎用性の高さは抜群。グランジ狙いのコーディネートにも使える。
〈スリムフィットジーンズ〉
モダンなルックスの、セルビッジデニムのスリムフィットとシルエットやディテールは同じだが、コンピュータ制御の織機で織られたデニムを使用。進化した加工技術でリアルなユーズド感を実現している。
67 BLUE
ジャケットやトラッド系のスタイリングにフィットするスリムストレートのブルー。トレンドのタイドアップスタイルも細身のブルージーンズなら、エフォートレスに着こなせる。
07 GRAY
オールブラックのシャープな着こなしに軽さを入れたいとき、グレーのスリムストレートは最高。スニーカーよりも革靴に合せたいジーンズ。
〈ウルトラストレッチスキニーフィット
ジーンズ〉
2017年から驚くほど伸びて快適にはける、ウルトラストレッチ素材がスキニージーンズに採用された。カラーによって素材の配合が異なり、ステッチやパーツは目立たない配色になっている。
61 BLUE
身体にピタッとフィットする細身シルエット。トレンドのペールトーンやくすみカラー、オフホワイトなど、淡いトーンにマッチするアイスブルー。細身の無地アイテムを上下でコーディネートするクワエイットなモード系スタイルに合せたい。
スキニーのボタンはマットな質感でシンプルなデザイン。UNIQLOロゴの刻印も小さめでひとつだけ。ステッチは落ち着いたトーンでジーンズになじむ仕様。
09 BLACK
Y2Kなムードのブラックスキニー。パンキッシュなコーディネートやロック系のスタイリングはもちろん、ゲームシャツ&レトロスニーカーを合わせる英国発のカジュアルズのような着こなしにもハマる。
サイズ展開詳細
サイズ展開は27・28・29・30・31・32・33・34・35・36・38・40・42・44・46(※27・35・36・38・40・42・44・46サイズは、オンラインストアのみでの取り扱い)。
問い合わせ先
ユニクロ
TEL:0120-170-296
4.みんなの
ユニクロ「ジーンズ」スナップ!
おしゃれな人たちがユニクロのジーンズをどんなコーディネートに合わせているか? スナップとコメントでお届け!
ユニクロ「ジーンズ」の正解着こなし①
伊藤快人さん(美容師)
「リジッドデニムで耳付きというのが気に入って、セルビッジレギュラーフィットストレートジーンズのネイビーを選びました。これが3,990円って、スゴイことですよね? 最近は大人っぽく見えるモノトーン系のコーディネートが気分なので、セルビッジデニムは出番が多いです。きょうはフィグベルのネイビーのカバーオールにグレーの古着ニットをデニムにタックインして、クリーンにまとめました。メガネはブラウンのボストン型セルフレームで、かわいげのある感じに」
「足元はカジュアルすぎないサイドゴアブーツ。セルビッジジーンズはロールアップしたとき赤耳がアクセントになるし、抜け感が入れられるのもいいんです。ジャストサイズは31インチなんですが、少しゆるめにはきたくて32インチにしました」
ユニクロ「ジーンズ」の正解着こなし②
浅野 亨さん(スタイリスト)
「ずっとユニクロのタートルニットを愛用していて、きょうも着ていますが(笑)、今回ストレッチセルビッジスリムフィットジーンズに初挑戦。噂にはきいていたんですけど、リジッドでもちょっとだけストレッチがきいているからヒップまわりに沿う感じがとても気持ちいいです。ステッチの色などが目立たず、クリーンにはけるスリムフィットを1インチアップの32インチで、テーパードストレートのようなイメージではいています。きょうはフジのストライプシャツとニューバランス576でカジュアルよりのコーディネート」
「レングスはちょっと長めでも、切らずにロールアップしています。シューズのボリュームや着こなしに合わせてロールアップの幅を変えるのも楽しいんです。シルエットがすっきりしているので、どんなトップスでもバランスがとりやすいのも魅力」
ユニクロ「ジーンズ」の正解着こなし③
小方蒼介(メンズノンノモデル)
「ユーズド感のあるブラックデニムを探しているときに、ユニクロのこのレギュラーフィットストレートジーンズを見つけました。シルエットも色落ち具合も理想的な一本。加工のせいかデニム生地がやわらかくて、フィット感もバッチリで、動きやすいんですよね。このチェックのネルシャツも数年前のユニクロですが、ユニクロはどのアイテムも生地がいい! インナーのラッド ミュージシャンのTシャツとオニツカタイガーのレザースニーカーは黒でまとめて、カジュアルになりすぎないようにしました」
「サイズは31インチがウエストもレングスもぴったりでした。レッグ部分にもゆとりがあり、僕が気に入っているドメスティックブランドのデニムと同じような感覚ではけます。ユニクロのジーンズはヒップポケットがノーステッチで、どこのブランドか一見してはわからないところもナイスです」
Photos:Erina Takahashi(still&snap) Stylist:Toru Asano Composition & Text:Hisami Kotakemori
▲ WPの本文 ▲
僕らの永久定番名品ファイル
名品図鑑