▼ WPの本文 ▼
古着はおしゃれ男子の必須アイテム! でも、どの古着屋に行ったらいいのか? いい古着屋を見つけるのは意外に難しい。ならば古着通にきけばいい! おしゃれ男子御用達の古着屋を毎回一軒、ディープに紹介。
第18回は古着屋の魅力に目覚めた小方蒼介が、高円寺のDC古着の有名店、キスメットへ。デザイナーズ古着に特化したセレクトが小方の個性にマッチ!
80年代の日本のブランドのパワーを
若い世代の服好きに伝えたい
キスメットはこの連載の第7回で紹介したラフ バイ キスメットの本店。コム デ ギャルソン、イッセイ ミヤケといった日本を代表するデザイナーズブランドから、80~90年代に勢いのあったパシュ、テット オム、メンズ ビギなど、ほかではあまりセレクトしないような日本のDC(デザイナーズ&キャラクターズ)ブランドの古着をメインに扱う。2011年のオープン当初はレディースも扱っていたが、3年ほど前からメンズのみにシフト。
古着に目覚めた小方蒼介は【本当に使える古着屋さんガイド】連載を見て、ラフ バイ キスメットが気になり今年の5月に店を訪れた。「シャツを探しに行ったんですが、ラフにはまだ夏ものが入荷していなかったのでキスメットを教えていただき、行ってみたら自分好みの古着がたくさんあったんです!」(小方)。きょうは2回目の訪問となるが、普段は店頭にいないオーナーの重松新太郎さんが接客してくれるということで、期待が高まる。
多様なプリントシャツが目を引く店内
高円寺の中でも古着店がひしめく長仙寺前の角地、ブルー×白ストライプのサンシェードが目印だ。白壁と木床を基調とした店内は、一面がガラス張りで明るく見やすい。壁際には色鮮やかなプリントシャツやスライプシャツなどがディスプレイされ、夏気分が盛り上がる。
「80年代のDCブランドにはその時代特有のアートっぽい柄シャツが多く、デザイン性とクオリティの高さは別格です」とオーナーの重松新太郎さん。「僕自身がその年代のものが好きなので、商品の9割は80~90年代のDCブランド。ストーンアイランド、ヘルムート ラングなど注目の海外のデザイナーズブランドも、その年代のものを中心にピックアップしています」(重松)。
ガラス面のディスプレイでもひときわ目を引いたシャツはイッセイ ミヤケ。手描き風ストライプ柄とカラーブロックを融合した凝ったプリントで、まさにアートピースのような一点。「この時代のDCブランドには、シンプルな無地シャツがないんですよね」と重松さん。アイビーやアメカジがメインストリームだった当時、“シンプルじゃない”服を求めた人たちがDCブランドを支持していた。そんな時代背景が垣間見える。
重松さんが力を入れているブランドのひとつ、パシュのシャツも入口に。パシュは1979年に設立され、無国籍かつモダンな服づくりを掲げ、大胆なデザインを発表したブランド。1980年代に一世を風靡し、海外進出の際はビデオ・アートの先駆者として知られるナム・ジュン・パイクとともにイメージビデオを制作。ビジュアルづくりにもこだわった。
アメカジリバイバルやデニム人気の今のファッショントレンドもしっかりキャッチして、ストーンアイランドのデニムや流行のフレアシルエットのジーンズも、店内の目立つスペースに並んでいる。
靴はエッジのきいたデザインものがセレクトされ、80~90年代にブレイクしたジョン ムーアのブーツも散見。当時のファッションシーンでヒットしたものを、重松さんは確実にピックアップしている。
小方好みのシャツがたくさん!
店内を見始めると、やはり充実したシャツ類に目が行く小方。「知らないブランドが多いですが、どれも素敵です」と小方が言うと、「小方君のような20代は知らないブランドばかりだと思うけれど、ブランドの背景や僕がピックアップしている理由を話すとその魅力が伝わって、挑戦してくれたりするんですよね」と重松さん。
ラックの中から「NIGO®さんがディレクションしたケンゾーのポピーシャツに似た雰囲気」と小方が選んだのは、大胆なリンゴプリントのシャツ。「パーキーウェーブは80年代のマイナーなブランドなんですが、いいものをたくさんつくっていて、中でも総柄のグラフィックシャツが特に面白いんですよ。高田賢三が活躍したのと同じ時代なので、当時独特のアートっぽさがあります」(重松)。
「どうコーディネートしたらいいですかね?」と小方が相談すると、重松さんがメンズティノラスのイージパンツとABXのモンクブーツを選んでくれた。「リラックス感のあるシャツだから、パンツもイージースタイルでシャツが主役になるように白っぽいグレー。靴も黒だと重いので、ベージュぐらいがよさそうです」(重松)。
メンズ ティノラスは芸能人御用達のソフトスーツ(リラックス感のあるスーツ)で有名。abxは80年代にはアルバタックスというブランド名だったが、94年に改名して2010年まで続いた。DCブランドは洋服から靴など小物まで、トータルで展開されているのが特徴。
「入ったときから気になったのが、このシャツなんですが…」と試着したのは80年代に輝いていたJ.P.ゴルチエのシャツ。マルタン・マルジェラがアシスタントだったことでも、近年若い世代に再評価されている。「このシャツはミレニアム以降のJ.P.ゴルチエですが、デッドストックだったので」と重松さん。フロントのステッチがトレンドのキューバシャツ風でスタイリッシュだ。
「試着して気づいたんですが、フロントがファスナーなんですね! ウエストがシェイプされたシルエットだからシャツとしてタックインもしやすいし、羽織りにもいいデザイン」とディテールに感動。
重松さんが小方のムードで
スタイリング
まだファッションは勉強中という小方は、早くも重松さんにおすすめコーディネートを提案してもらうことに。「小方君のロングヘアの雰囲気がカート・コバーンっぽいなと思ったので、グランジファッションはどうかな?」と選んでくれたのが、ナンバーナインのロングTシャツ。「きょうはいているスラックスにも合いそう」(重松)。
重松さんの見立て通り、小方がはいていたフレアシルエットのTTT_MSWのスラックスにマッチ。「このナンバーナインは宮下貴裕さんがデザインしていた、カート期のものです。だから足元にはタカヒロミヤシタザソロイストが2017年にコラボした経歴もある、ジョン ムーアのラバーブーツを選びました」(重松)。
デザイナーの服を、時代を超えた文脈でコーディネートできるのも古着の楽しみだ。ちなみにカート期とはロックバンド、ニルヴァーナのカート・コバーンをテーマにしたナンバーナインの2003年~2004年秋冬コレクションのこと。ブランドの休止期間を経ての復活コレクションとしても語り継がれている。
トウやヒールにあしらわれたストラップがアイコニックなジョン ムーアのコンバットブーツは、80年代末から90年代に日本のストリートでブレイクした。2017年にオールラバーバージョンが登場し、タカヒロミヤシタザソロイストはこのブーツを同年春夏にオールホワイトのラバーで別注している。
「小方君はエッジのきいた服が似合うね。ヤスユキイシイはオブジェアーティストとして活躍する石井康之さんが手がけるブランドで、ぶっ飛んだデザインが多いんだけど、このボンデージパンツはどう?」と重松さんが出してくれたパンツを見て「ダイリクも秋冬でボンデージパンツをやっていたので、はいてみたいです!」とさっそくトライ。
トップスにはメゾン マルジェラを代表するエイズTシャツ。1994年秋冬コレクションから現在に至るまで発売されているチャリティTをトップスに、足元はアメリカ人デザイナーとして先鋭的なデザインを手がけてきたジェフリー B スモールのスリッポンスニーカーをチョイスした。
「マルジェラなのにこの値段なんですね」と素朴な疑問を投げかけると「カレンダータグがないものは高値がつかないんです」と重松さん。今も新品で買えば5万円以上するから、これはかなりのお買い得品だ。
普段着とはまったく違うデザイン服に挑戦した小方は「シンプル一辺倒じゃない、自分の個性が生きるおしゃれをしたいと思っているので、すごく参考になります」と、楽しそう。
キスメットの
おすすめコーディネート
最後はキスメットが得意とするDCブランドのコーディネートを紹介。「80~90年代にかけて流行したソフトスーツです。シルエットは今っぽいんですが、当時のものは肩パッドがしっかり入っているのが特徴ですね」(重松)。DCブランドはトラッドやクラシックをベースにしていたので、スーツはテーラードスタイルでかっちり仕立てられていた。
「テット オムは今もスーツブランドとして現存していますが、90’sのものはメイド・イン・ジャパンで素材もすごくいいんですよね。今っぽくコーディネートするならインナーは無地Tだと思いますが、キスメットらしく総柄のヘンリーネックカットーを合わせました。ドン小西が手がけていたフィッチェ・ウォーモのものです」と重松さんが説明してくれると、「ドン小西さん!? わかります! こんな服をつくっていた人なんですね」と小方も驚いた様子。
キスメットのオーナー、重松さんは接客されると聞き惚れてしまう、美声の持ち主(ぜひ動画もチェックして!)。自身も普段からDCブランドの古着を愛用し、この日は「“夏に着るアート”という視点で、80’s独特のアートっぽいプリントトップスを選んでいます」と、プリミティブかつポップなプリントのカットソーをさらりと着こなしていた。
スキニーな00’s古着にも
今後注力したい
イッセイ ミヤケの迷彩バッグやヨウジヤマモトの羽根プリントバッグなどトレンド感のある小物も多く、つい長居したくなる。「80年代のDC古着も、なかなかいいものが見つからなくなっています。2000年代のディオール オムに代表されるような、細身だった時代のプレッジ(ナンバーナインに在籍した三浦秀教と、高田昌哉によるブランド)やアトウ(1993年から今も続く松本与のブランド)のようなブランドも面白いのでは? と思い、これから提案してく予定です」と重松さん。
店内にはラフ バイ キスメットと同様に重松さんが好きな現代アーティスト、ミスター・ブレインウォッシュのポスターが飾られ、ポップな雰囲気を添えている。
「きょうは自分では着ない柄モノの服や色鮮やかな服を着てみて、意外にイケる! と自分のファッションの可能性が広がりました。日本のブランドについての知識も増えて、とても楽しかったです」(小方)。キスメットで日本のDCブランドに出会い、掘っていくうちにハマって行く若者も多いという。服好きなら日本のメンズファッションが加速した80~90年代を、キスメットで体感してほしい!
動画もチェック!
キスメット
住所:東京都杉並区高円寺南3-56-1-101
TEL:03-6383-2029
営業時間:平日14:00〜20:00 土日祝日13:00〜20:00 無休
Instagram:@kissmet.kouenji
WEBサイト:https://kissmet.theshop.jp/
Photos:Yumi Yamasaki
Model:Sousuke Ogata [MEN’S NON-NO model]
Composition & Text : Hisami Kotakemori
▲ WPの本文 ▲