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古着はおしゃれ男子の必須アイテム! でもどの古着屋に行ったらいいのか? いい古着屋を見つけるのは意外に難しい。ならば古着通にきけばいい! おしゃれ男子御用達の古着屋を毎回一軒、ディープに紹介。
第15回は高橋璃央が高校時代から注目していた原宿のワッツアップ。ヴィンテージTシャツに定評のあるこの古着店は、ファッションYouTuberが働くことでも有名!
知識豊かなスタッフとの会話で
“ファッション”がもっと楽しくなる
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明治通りから遊歩道へと続く、原宿竹下通りのビルの2階に2003年から店を構えるワッツアップ。海外のセレブからも一目置かれる、ヴィンテージTシャツに特化した古着屋だ。アメリカに留学していたオーナーが2000年に小岩に1号店を出店し、次いで仙台、そして古着のメッカ、原宿に進出。現在の店長、中村友一(ともかず)さんは、中学時代から古着が好きでワッツアップに通っていたという経歴の持ち主。若干28歳ながらヴィンテージの知識は深く、軽快なトークに引き込まれる。
高橋璃央は高校時代、上京した際に古着屋めぐりを楽しんでいた。「ワッツアップは僕が好きなファッションYouTuberのカツオさんが働いているお店で、高校生のときはすごく緊張して、商品をくまなく見ることができなかったので、きょうは楽しみです!」(高橋)。
壁にずらりとヴィンテージTシャツ
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ガラス張りのビルの2階に位置し、通りからも「What’z up」の店名とディスプレイされたTシャツが見える。竹下通り沿いには看板もあり、その角を曲がった先の階段を上がって入店。店に入ると天井や壁にずらりと吊るされた、多様なTシャツが目に飛び込んでくる。
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ガラス窓際には名作映画のヴィンテージT、左手には『トイ・ストーリー』のキャラクターTが並ぶ。シーズンを問わず1年中Tシャツが主力商品で、90年代のものを主軸にハンドピックしている。「買い付けはアメリカの西海岸がメインで年に3回ほど。なじみのディーラーも多く、僕たちがリクエストするジャンルや作品のTシャツを買い付ける特別なルートも持っています」と店長の中村さん。
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時代によってプッシュするTシャツも変遷し、バンドTだけでなく、映画T、アニメT、ゲームTまで値段が高騰しているそうだ。最近はまだピックアップする店が少ない、絵本Tシャツなどを推している。「絵本Tは見た目もいいものが多いんです。映画化もされた『かいじゅうたちのいるところ』で有名なモーリス・センダックや、大人がハマる絵本で注目されるアメリカの絵本作家エドワード・ゴーリーなどが人気です」(中村)。
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カルチャーやアート系のTシャツにも力を入れていて、ファッション・フォトグラファーとして有名なブルース・ウェーバーのスウェットも。「これはジャズ・ミュージシャン、チェット・ベイカーのトキュメンタリー映画『Let’s Get Lost』のもので、ブルース・ウェーバーが製作や監督もした1988年の作品です。ロゴの入れ方もしゃれていて、シュプリームがサンプリングしたことで高騰し、今は60万円になっています」(中村)。
欲しいTシャツを掘ってみた!
春から主役となるTシャツでヴィンテージを取り入れたいと考えている高橋。「映画やアニメのTシャツが欲しいんですが、ここに来る前に僕が生まれた2000年の映画って何かな? と思って調べてみたら、コレというタイトルがなくて…」と高橋が言うとと、店長の中村さんとスタッフのカツオさんがTシャツの棚から高橋に合いそうなTシャツをピックアップしはじめた。
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「自分の生まれた年のヴィンテージを探すという発想、いいよね。僕も映画Tに自分の生まれ年、©1994とか入っていると気分が上がって買っちゃうことが多い。『マトリックス』は1999年だから…確かに2000年はヒット映画が少ないかも…」と中村さんが話していると、高橋が赤ちゃんの写真のTシャツをピックアップ。
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すかさず中村さんが「それは『アダムス・ファミリー』という映画のTシャツ。オリジナルはコミックでアニメもあるけれど、これは1991年の実写版のラストシーンで生まれた赤ちゃんの画像をつかったモノ。この映画は出演者の家族写真のグラフィックが有名」と即答。
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高橋がTシャツの棚から「これ好きだった!」とMr.ビーンを手に取ると、「それはスポッティングしたようなインクの汚れがよくてピックアップしたんです。いい感じに色も褪せていて、新品だとちょっと着るのをためらう全面グラフィックも、ダメージが入るとファッション感が出ますよね」と中村さん。
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「アニメもので僕が着られそうなものはありますか?」と高橋が尋ねると、カツオさんが『ザ・シンプソンズ』のTシャツをすすめてくれた。「これは日本の洗剤のパッケージに、主人公のパパに似ている人が出ているというエピソードから抜いたモノ。おそらく『パワー クリーン!』としたかったところが『ハワー クリーン!』になっているのも笑えます」(カツオ)。
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高橋が「これは何ですか?」と手に取ったのは『Dick and Jane』シリーズの絵本Tシャツ。「これはアメリカのミッドセンチュリーの教育絵本シリーズの復刻版をTシャツにしたものです。絵本のTシャツは大人向けにつくられたものが多くて、画力のある作家やイラストレーターの原画がもとになっているから見た目がいいんです」と最近のTシャツのトレンドを解説してくれた中村さん。
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「有名な絵本だとモーリス・センダックの『WHERE THE WILD THINGS ARE(かいじゅうたちのいるところ)』のものも人気です」と中村さんが言うと「聞いたことあります!」と高橋。「2010年にスパイク・ジョーンズが監督して実写映画が公開されたことで人気が再燃して、原画のTシャツやスウェット類がいろいろ出ました。大人が着られるデザインも多く狙い目です」(中村)。
気になるアイテムで+Tシャツコーデ
Tシャツについてひと通り学んだところで、高橋が気になったアイテムにハマるTシャツを中村さんとカツオさんがピックアップしてコーディネートを組んでみた! まずは高橋が気になったモヘアカーディガン。「カーディガンが好きで集めているんです。このモヘアのカーディガンは質感も色みもいいですね」(高橋)。
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「カーディガンはTシャツ好きに人気でワッツアップでも力を入れています。高橋君がピックアップしたモヘアカーディガンは60年代のヴィンテージでウール100%。70年代以降のアクリルカーディガンだと値段はぐっと安くなります。モヘアカーディガンはニルヴァーナのカート・コバーンが愛用したことで、グランジファッションのキーアイテムとしても人気が高い。ちょっとグランジっぽく着るのがいいかも?」(中村)。
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グランジっぽくということで選んでくれたのが、カート・コバーンも着ていたセバドーというオルタナバンドのTシャツ。当時、ニルヴァーナと同じSUB POPレーベルに所属していた。ボトムは色褪せたリーバイス。エルメスの古着シャツをはさんで、品よくコーディネート。「足元にジャック パーセルでカートに寄せるのもありだけど、高橋君がはいてきたスエードのスリッポンくらいがちょうどいいね」(中村)。モダンなグランジスタイルが完成。
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続いて高橋が手に取ったのがハリウッドスターにも愛されたウエスタンウエアで有名なH bar C(エイチバーシー)のシャツ。「昔の海外の映画を見るとウエスタンシャツがよく出てきますよね。挑戦したいんですが、どうやって着たらいいですかね」と高橋が尋ねると「ナンバーナインもウエスタンシャツを出していたよね。それこそデザイナーの宮下貴裕さんはカート・コバーンのファンだったから、そのイメージでコーディネートするといいんじゃない?」と中村さん。
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インナーにはニルヴァーナのサークルロゴT、ボトムは色落ちしたリーバイスだが、足元はサイドゴアブーツでクリーンにまとめた。「2000’sのナンバーナインのムードでいくならミッキー・マウスのプリントT、なんてのもありだね」と中村さん。
ナンバーナインを知らなかった高橋世代に向けて解説すると、NUMBER (N)INE は現在、TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.(タカヒロミヤシタザソロイスト.)のデザイナーとして活躍する宮下貴裕氏が1996年に立ち上げたブランド。2009年まで宮下氏がデザインを手がけ、グランジファッションをベースにしたコレクションは世界的に評価された。2000年代にはディズニーコラボでモノトーンのミッキー・マウスTを手がけ、こちらも大ヒット。
中村さんのように古着に関連する事柄から、イメージを膨らませてコーディネートを組むのも古着ならではの楽しみ方だ。ぜひ参考にしたい。
カツオさんのおすすめコーデ
続いてはカツオさんがこの春注目するアイテムやトレンドで、コーディネートを組んでもらった。「今年は春からショーツが気分。ミリタリーショーツのような厚手の生地のショーツに、EB TEK(イービーテック)のような90’sアウトドアスタイルのアウターを合わせて、ストリートスタイルに落とし込むのが今っぽいと思います。足元はマウテンブーツでアウトドアに振り切ってもOK」(カツオ)。
EB TEKはエディ バウアーが90年代に展開していたスポーティなラインで、最近復刻もされた。エディ バウアーは2021年末を持って日本から撤退してしまったが(本国では継続)、1920年にアメリカで創業し、ダウンパーカを考案したブランドとして覚えておきたい。
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「90年代のテックアウターってなんかいいですよね。フード×フードはやったことがないんですが、この違和感を楽しむのもありですね」(高橋)。今まではナイキやアディダスといったスポーツブランドのアウターを選んでいたスタイルを、ギャップのGP TECK(ジーピーテック)、ポロ ラルフローレンのPolo Hi Tech(ポロ ハイテック)などファッションブランドのテックものに置き換えるのがポイントだそうだ。
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大学時代からファッションYouTuber、boomer’sとして活躍するカツオさん。一度はセレクトショップに就職するも「やっぱり古着が好き!」と、学生時代から通っていたワッツアップのスタッフになったそうだ。古着をメインにしながらもストリート感のあるスタイルが持ち味。軽快なトークで人を惹きつける。
この日はおすすめコーデともシンクロする90’sギャップのデニムアノラック×トレバークカモ(樹皮迷彩)のパンツ。足元は通好みのハイテクスニーカー、ミズノ ウェーブプロフェシーをセレクト。裏原宿を象徴するグッドイナフ×モア アバウト レスのキャップのような、マニアックなアイテムをさり気なく入れこむあたりはさすが。
お買い得アイテムも見つかる!
店内をつぶさに見ると、すべて1,000円というパンツのラックが目に入った。「ヴィンテージのTシャツにお金を使ってしまってパンツを買う予算がない、という若いお客様のために、特別価格のパンツを集めました。企業努力です(笑)」(中村)。
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ほかにも大小缶バッジはオール500円で放出しているという。レアものやヴィンテージが混じっていることも多く、知る人ぞ知る人気コーナー。
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カウンターの奥に並ぶお宝Tシャツを見て「だいぶ前に『パルプ・フィクション』のTシャツを高円寺の古着屋さんで見つけて買ったんです。ヴィンテージって書いてあったけど、そうじゃなかったことがあって…」と苦い経験を高橋が語った。
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「映画Tシャツもオフィシャルのものは写真の端などに©が入っているから、それをチェックにすることが大事。あとはタグやボディの素材感など、プロは細かくチェックして年代や本物か否かを選別しています。ネットオークションなんかも盛んだけど、やっぱり信頼できる古着屋さんで、こうして話をしながら買うのがいちばんですよね」と中村さん。
「きょうは本当にいろいろ勉強になりました! カツオさんにも会えてすごくうれしかったです」(高橋)。ヴィンテージTシャツの情報だけでなく、トレンドとリンクした古着のリサーチ力もめちゃくちゃ高いワッツアップ。フレンドリーなスタッフと話すだけで古着の知識が深まる、通いたくなる店なのだ。
動画も公開中!
ワッツアップ
住所:東京都渋谷区神宮前3-21-10 フィールドワンビル2F
TEL:03-5411-1154
営業時間:平日 14:00〜19:00(土日祝日 13:00〜)年中無休
Instagram:@whatzupharajuku
WEBサイト:whatzup.thebase.in
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Photos:Yumi Yamasaki
Model:Rio Takahashi [MEN’S NON-NO model]
Composition & Text:Hisami Kotakemori
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