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僕たちにいつも最高にカッコいいファッションを紹介してくれてるスタイリスト。おしゃれを刺激してくれる存在として、また頼れるアニキとしても憧れの的だ。ところで、世界のスタイリストってどんな感じ? どんな一日を過ごしてる? メンズノンノ本誌では、3都市からの濃いレポートを紹介!
メンズノンノウェブでは、本誌に掲載しきれなかったロングインタビューを特別に公開。トップバッターは、メンズノンノでもおなじみソウルのスタイリスト、キム・ヨンジンさん。東京からリモートで、ファッションのこと、ソウルのスタイリスト事情など、いろんな話を聞いてみた!
ソウル、パリ、N.Y.から、
こだわりのTipsをお届け
<キム・ヨンジン>
MN:「こんにちは! お久しぶりです。メンズノンノ4月号増刊では、NCT 127の企画で、大変お世話になりました」
ヨンジンさん(以下Y):「こんにちは、お元気ですか? こちらこそありがとうございました。カッコよく仕上がって本当によかったですよね!」
MN:「本日はスタイリングのお仕事ではなく、ヨンジンさんを取材させていただきます」
Y:「何でも聞いてください! 僕のすべてをお話しします」
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MN:「メンズノンノ8.9合併号に掲載している、ソウル、パリ、N.Yの3都市でそれぞれ活躍するスタイリストにスポットを当てた企画で、ソウルからはヨンジンさんにご登場いただきました。誌面で掲載しきれなかったインタビューを、メンズノンノウェブでたっぷり紹介させていただきます。ヨンジンさんは韓国のファッション界では知らない人はいないというほど、人気のスタイリストでいらっしゃいます。世界で活躍するK-POPアーティストなどの衣装も多数手掛けていたりすることから、日本にもファンがいますが、あらためて基本的なことからお伺いできればと思います。まず、スタイリストになりたいと思ったきっかけから教えていただけますか?」
Y:「実は最初からすんなりスタイリストの道に入ったわけではなく…、経緯は話すとちょっと長いんですが。まず、もともと服は大好きでした。高校生の頃まではファッションデザイナー志望で、服飾に関するデザインを勉強できるような有名な大学に行きたいと夢見ていました。でもそういうところって、当然ながら誰でも行けるわけではなく、競争率も非常に高いですよね。それでいろいろ悩んだ結果、結局写真を専攻することになったんです。雑誌や写真集などを見ることも、同時に好きでしたので」
MN:「最初は写真の勉強をされていたんですね!」
Y:「そうなんですよね。でも、そうして一度は写真学科に進学したんですけど、それでもやっぱり自分にファッションは欠かせないなということに気づいたんですよね」
MN:「フォトグラファーとしてファッションに関わるというより、もっと直接的にファッションの仕事がしたいというようなことでしょうか?」
Y:「そうですね。それでもう一度デザインの道を考えたんですが、そこでまた方向性が変わるんですよ。ファッッションデザイナーとして何かを新たに作るというよりも、誰かに服を着せたり、アレンジやデコレーションをしたり、またはリサイクルをしてみたり…、そういう仕組みを体験することのほうが、自分は好きなんじゃないかと気づいたんです。まわりの人たちからも、それであれば、ファッションデザイナーではなくて、人に素敵に服を着せたりとか、飾ってあげたりするスタイリストの道に行った方がいいんじゃない? と勧められて、25歳の時に師匠となるスタイリストのアシスタントにつきました。そこからこのキャリアが始まったという感じです」
MN:「高校生の時にすでにファッションの仕事を夢見ていた、ということですが、子どもの頃からファッションが身近にあったのでしょうか?」
Y:「父が服を作る仕事に携わっていたんですよ。韓国の大御所ファッションデザイナーの下請けのようなかたちで、女性服をよく作っていました」
MN:「なるほど、それはかなり近いところに」
Y:「今ちょっと振り返ってみると、父の作業室というか、アトリエのような場所があって、そこによく遊びに行ったり、作業を見に行ったりとかしていましたね。そう考えると、子どもの頃から服と接する機会っていうのはあったのかなっていう気がしますね」
MN:「ヨンジンさんはメンズのモデルにレディースのブランドを使ったり、従来は女性がよく身に着けていたようなアイテムも男性のスタイリングに自由に取り入れたりと、すごく面白い試みをされる方だなと思っていました。今でこそメンズパールが流行っていたり、ジェンダーレスを謳ったブランドも増えたりしていますが、ヨンジンさんはけっこう早い段階からやっていましたよね。お父様が女性服の仕事に携わっていたっていうのが、もしかしたらベースにあるのかなっていうのを今のお話で感じたんですが」
Y:「昔のことを思い出すと、父が作業途中で間違えて作った女性服のシャツを自分がもらって着たりとか、そういう記憶があるんですよね。直接的に父の仕事の影響を受けたかはわからないですが、男性服、女性服っていう境界を自分の中で気にしなくなったというのはあるかもしれません。最近は特に、女性服のディテールの方が、すごく自分の中で気に入るものが多いです。それを男性のスタイリングをする時に、工夫して取り込んだりすることは自然にやっていますね」
▲アイテムはメンズ、レディース問わずチェック。
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MN:「それはとても感じます。では次に、韓国のスタイリストのお仕事がどんな感じかとか、どうやったらなれるのかっていう日韓の違いみたいなところを伺っていきますね。メンズノンノの読者もそのあたりすごく興味があると思うので。日本だと、ヨンジンさんが積んだキャリアと同じように、師匠となるスタイリストに何年かついてそこからデビューするというのが一般的な流れなんですが、韓国もそれが主流なんでしょうか?」
Y:「そうですね。弟子入から始まるパターンが多いっていうのは、日本もヨーロッパも、アメリカも多分一緒だと思うんですが、韓国でもだいたいアシスタントを経てデビューという流れです。自分も25歳でアシスタントとして入って、そこから5年ほど下積みをして30歳くらいで独立しましたね」
MN:「まさに同じ感じですね。では、そんなヨンジンさんが今現在、特にどんなお仕事をメインでしているかご紹介いただけますか。冒頭でもお話ししたように、メンズノンノではNCT 127のスタイリングを手掛けているスタイリスト、ということで一度紹介させていただいていますが、はじめましての方もいらっしゃると思うので」
Y:「僕が普段メインにやっているのは、エディトリアルのファッショングラビアのスタイリングです。その他にも、ブランドの企画から広告までトータルで携わるような仕事もしています(下記「NOUVMARÉE」など)。実はK-POPアーティストのスタイリングをメインにやっているというわけではないのですが、そんな中でもNCT 127をはじめ、NCTのメンバーたちは僕にとってかけがえのない存在なので、彼らと仕事をするときには、彼らを通してファッションをいいかたちで投影させたいと意識していますね。ファッションで表現できるようなストーリー性などもNCTに抱かせることができたら、ということを考えながらスタイリングをしています」
▲企画から広告までトータルで携わり、ヨンジンさんがビジュアルディレクターを務めるブランド「NOUVMARÉE」(http://www.nouvmaree.com/)。
MN:「スタイリストとして雑誌のグラビアに携わることが多いということですが、具体的にどういうプロセスでお仕事してるかというところも興味があります。ざっくりとですがメンズノンノの場合ですと、編集部が企画やテーマを決めて、クリエイターの方々をキャスティングし、みんなで話し合ってひとつの作品が作られていくという感じなんですが、その辺の流れっていうのは韓国も同じなんでしょうか?」
Y:「あぁ、大体ほぼ同じプロセスですね。自分が仕事をする時には、仲のいいエディターとは特に意見を出し合って進めていきますね。例えば今回はこのコンセプトだったらカメラマンはこの人がいいんじゃない? というように提案することもあります。最初からスタッフも方向性も決まっている場合もありますが、親しい関係でたくさん話のできるエディターだったら、そうやって提案することもありますね」
MN:「そのあたりはどこも同じですね。みんなで話し合ってページをつくる時に、ヨンジンさんが一番大事にしていることやこだわっていることはなんですか?」
Y:「全パート大事だとは思うんですが、フォトグラファーのカメラワークは重視しています。企画自体やスタイリング、ヘアメイクなど全部大事ではあるけれど、自分が作業する上で一番大事にしているのは、やっぱりカメラワークだと思うんです。誰が写真を撮るかによって、そのルックの見せ方や、スタイリングのどういう所をポイントとして生かすかということまで変わってくると思うので、自分がスタイリングしたものに関してはもちろん全スタッフといったん共有しますけど、その上でカメラマンとの疎通を一番大切にしていると言っていいでしょうね。自分とすごく感覚が似ていたり、そうじゃないんだけどセンスがあるカメラマンは、その時のポイントについてすぐキャッチしてくれます。なのでそういう仕事の現場はすごく気持ちがいいですね」
MN:「それはやっぱり、ご自身が写真を勉強していたというところが大きいんですかね」
Y:「そうだと思います。やっぱり自分はもともと写真を勉強していたり、書籍のビジュアルをよく見てきたということもあるので、絵作りにこだわりがありますね。なによりもやっぱ結果物が大事ですから。誌面なり広告なり、自分が手がけたものがちゃんと思ったようにできたときの喜びっていうのが一番大事かなと思います」
▲ヨンジンさんのアトリエには、絵作りの参考にしている書籍などが所狭しと。
MN:「毎回の仕事に強いこだわりを持っているのを感じます。でもその中でも、あぁこれはうまくいかなかったな…という気持ちになることは、ヨンジンさんでもありますか?」
Y:「惜しいなーっていう気持ちになることはもちろんありますよ。でも幸い、他の人たちは上手くいった結果物を多く覚えてくれてる、失敗したものよりも(笑)。でも自分の中では、あぁこれはこうすればよかったなっていう惜しさを感じることはありますね」
MN:「ありますよね、そういうことも…」
Y:「ね、そうですよね」
MN:「そういう場合はやっぱり、次に活かすために何かフィードバックをするような努力をしているんですか?」
Y:「その通りですね。やっぱり今回ここまで行けなかったから次はもっと頑張ろうっていう気持ちは、常に持っています」
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MN:「ではその逆に、今までやった仕事の中で一番エキサイティングだったものを教えてください」
Y:「いやぁ、それはもちろんメンズノンノとの仕事ですよ!」
▲ヨンジンさんがNCT 127のスタイリングを手がけた、メンズノンノ2021年4月号(増刊)の表紙。
MN:「言わせた感(笑)! とてもうれしいですけど! ほかのお仕事ではどうですか?」
Y:「あはは、でも実際すごく楽しかったですよ。そうですね、自分が企画から参加してできあがったものがすごく印象深かったのは、NCT 127が2018年に出したリパッケージアルバムの仕事です。『Simon Says』という作品なんですが、そのジャケットの撮影でSM ENTERTAINMENT(NCT 127の所属事務所)側のビジュアルディレクターといろんなことを話し合いました。その中で、メンバーごとにポートレートのような写真を撮ったらどうかという意見を出しました。そこで僕がヨーロッパでも活躍中のMark Peckmezianというフォトグラファーを起用したらどうですかと提案して。結果的にブッキングができて、そのフォトグラファーと共同作業ができたんですが、それがすごく印象深かったですね。本当に好きな写真を撮る方だったので。「AnOtherMan」とか「GENTLEMAN」とか撮られてる方なんです。わざわざ韓国まで来てもらって一緒に撮影できたことは、とてもいい経験になっていますね」
MN:「『Simon Says』のスタイリングは、ひとつひとつはかなり個性的なアイテムを使っているのに、メンバーが揃うと不思議と“静”な感じのする調和のとれたモードなスタイリングで、印象的でした。ミュージックビデオの方もヨンジンさんですよね」
Y:「そうです! ありがとうございます。一番最初の登場シーンで着ているモノトーンの衣装は、全部日本のブランドのものなんですよ」
MN:「そうですよね、冒頭からテヨンさんがタカヒロミヤシタザソロイスト.を着ている。MVなんだけど、ちょっとショーを観ているみたいな感じもあって、ファッションもすごく立っているなと思いました。奇妙な仮面が出てきたり、インサイドに迫るような、精神的な世界観ですよね」
Y:「あー、ありがとうございます。嬉しいですね!」
MN:「さきほどから、ご自身では昔から写真集などいろんな本を見てきたとお話しされています。本誌にも掲載しましたが、送っていただいたアトリエの写真を見ても、本当にたくさんの資料が本棚に並んでいましたね。今の話で出たみたいに、“こういう人を起用したい”と他のクリエイターの提案ができるのも、つねにアンテナを張っているからこそだと思うんですが、そういうインスピレーション源を集めるために大切にしていることは他にもありますか」
Y:「たとえばアーティストをスタイリングするんだったら、彼らの新曲のデモ音源だったりとか、これまでの音楽をもう何十回も何百回も繰り返し聴いてそこからイメージを作ったりしますね。僕は音楽も大好きなので、音楽から受けるインスピレーションも大切にしています。部屋にあったように、写真集とかビジュアルブックとかそういう出版物を見ることを大事にしているので、ピンタレストとかグーグル検索とかはあまり仕事では使わないです。オンライン上で見られる素晴らしいものもあるかもしれないけど、実際手に取った本から得られるものとは違う感じがするんですよね。だから結局、切り取られたものを手に取ることは少ないです。文学、映画、音楽にアイデアの源泉があると思っているので、たとえば映画なら、表現のなかにあるディティールまで注意して観たり、その映画を撮った監督の別の作品まで遡って、手法に違いがあるのかを見比べたりとかもしています」
MN:「手軽に検索したものは、自分が普段から好きでアンテナを張って見つけたものには敵わないということでしょうか?」
Y:「その通りだと思いますね」
▲写真集やファッション、デザイン関連の本、レコード、アートなど、インスピレーション源となるコレクション。
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MN:「ちなみに、街を歩いているソウルの男性たちのファッションを参考にしたり、アイデアが刺激されたりということはありますか?」
Y:「ありますね。人をウォッチングすることは大好きなので、道行く人のことを誰よりも早く頭から足先まで一瞬で見る能力があります(笑)」
MN:「えっ、それはすごい!」
Y:「一瞬で誰にも気づかれないようにバッって。そういう能力が実は搭載されているんですよ(笑)。最近特に韓国の男子も自分を飾るのを楽しんでいるように見えてきて、すごくうれしいなと思うんです。まだまだ日本の男子よりは遅れている部分はあると思うんですけど、だんだん韓国の男子もファッションとか自分を飾ることに興味を持ち始めている雰囲気が漂っているので、それは見ているとすごく微笑ましいなと思っていますね」
MN:「そうなんですか。韓国の男性って、日本の男性よりもかなり早い段階からメイクをしていたりしたので、自分を飾ることに積極的なのかと思ってました」
Y:「ファッションにおいては、日本の男子よりもけっこう消極的だと思いますよ」
MN:「ヨンジンさんはもともとメンズノンノを読んでくださっていたとのことですし、日本でのお仕事もされていますよね。さっきのMVの話の時にも出ましたが、日本のブランドもお好きとか。韓国と日本、おもにソウルと東京だと思いますが、その両方を見ているヨンジンさんだからこそ感じる、二都市の男性ファッションの違いがあれば教えて欲しいです」
Y:「そうですね、東京とソウルを比べてみると、東京の場合はドメスティックブランドがけっこう強いという印象です。そしてそういったブランドを着ている人たちにも、自負心やプライドがあるなと感じます。ソウルではまだドメスティックブランドがそこまで活性化していないというか、ドメスティックの服を着たことによってプライドを感じるという人が東京より少ないかなと思いますね。あと東京は、自分ならではのファッションとかスタイリングというのを、個人がそれぞれ構築している感じがします。特にファッションが好きな男性は、他人からの視線とかを気にせずに自分が好きなスタイリングをしている人が多いように思います。ソウルはまだまだ他人からの視線を気にしている人が多いんじゃないですかね。ちょっと奇抜な格好をすると、けっこう見られますよ(笑)」
▲ソウルの街角にて。ジャケットとパンツはNOUVMARÉE。足もとはNIKEでカジュアルさをプラス。
MN:「程度にもよりますけど、東京でもエリアによっては振り返られます(笑)。でもたしかにソウルに行くと、シンプルなファッションの男性が多い印象があります。モノトーンが多いというか」
Y:「あー、そうです! そのあたりの、ちょっと変わったスタイリングをしている人に対するまわりの受け取り方は、東京とソウルでは違うかなって思います。あとこれは別の話なんですけど、僕が東京のファッションブランドや、ファッション事情が好きな理由としては、全世界のどの都市よりも、男性がファッションを楽しめる、あるいは服を着こなせる環境というか、インフラが整っているからです。そういった面では東京が一番かなって、個人的に思っているんですよ。その一つの例として、伊勢丹をはじめ大きなデパートにはメンズ専用のビルがあるじゃないですか。それって、それだけ需要も供給もあるっていうことですよね。その環境で服のスタイリングができないなんてことがあるのかっていうくらい、ちゃんと男性が自分のファッションを楽しむのに適した、インフラの整っている環境なのではないのかなと思うんです。だからコロナ禍で渡航ができなくなる前は、日本にしょっちゅう買い付けに行ったり、ファッションを見に行ったりしていました」
▲東京ブランドのダブレットのアイテムをアトリエで発見!
MN:「うーんなるほど。たしかにメンズノンノも、ドメスティックのメンズファッション誌ですもんね。でもこの間一緒に撮影させて頂いたNCT 127の企画では、ソウルの若いブランドをとにかくここで自分はたくさん紹介するんだっていう、気概みたいなのをヨンジンさんから感じたんですけど、やっぱりそれは意図的にされたということでしょうか」
Y:「その通り、その解釈で問題ないです。ソウルの若いブランドのアイテムをたくさんNCT 127のメンバーに着せて、いまのソウルの勢いをメンズノンノを通して伝えたかったんです」
MN:「東京とソウルのストリートを表現するというコンセプトにぴったりでしたね。ヨンジンさんが発信源になって、見た人がいろんなことを知れるっていうのはすごくすてきなことですよね」
Y:「それはとてもうれしい話です!」
MN:「ヨンジンさんはメンズノンノを若い頃に読んでいたとのことですが、当時どういう気持ちで手に取ってくださっていたんですか?」
Y:「まだスタイリストになる前、2004年あたりだと思うんですが、ファッションを知りたかったり、興味があるならメンズノンノはバイブル、みたいな気持ちで自分の中では読んでいました。だから他の人にも「メンズノンノ読んでないの?」って言ったりとか(笑)。すごくステータスのように感じていたんですよね。だからメンズノンノが手がけるグラビアは、同じブランドでも他の雑誌の誌面と全然違っていて、そういう優れた感性がとても好きでしたね」
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MN:「ありがとうございます。これからもそう言っていただけるように頑張ります。では、ヨンジンさんご自身が、この夏注目しているファッションを教えてください」
Y:「今注目しているアイテムはブラウスなんです。ブラウスと聞いたら女性服をイメージすると思うんですが、男性が着てもいい感じのブラウスを最近ずっと探しているんですよ。薄手で肌触りがいいものがないかなって」
▲この夏注目しているアイテムはブラウス。こちらはブラウス、パンツともにリック オウエンス。
MN:「誌面でも最初に出てくる大きなカットの、ヨンジンさんが着ていた黒いシャツもブラウスですよね。気になるものは、いつも自分でも積極的に着るんでしょうか」
Y:「取り入れられるものは着るようにしています。でもこれは根本的な話ですけど、やっぱりT.P.Oが最優先です。どこに行くのか、何をするのか、遊びに行くのか仕事に行くのかによって、スタイリングは変わります。それに加えて、目が覚めた時の気分だったりとか天気とか、いろんなものがミックスされて複合的に作用しているんですけど……最近自分の服装をスタイリングするのが苦痛で(笑)。もう服にまみれた生活を毎日しているからか、自分の服を考えるのがちょっと面倒なときがあります(笑)」
MN:「あるあるですね(笑)。けっこう自分は定番のものしか着ないというスタイリストさんはいらっしゃいますよね」
Y:「そう、でもだからこそポイントになるものをちょっとでも試行錯誤しようとは思っていますよ。素材だったり、シルエットだったり、やっぱり何かのポイントになるものをちょっと取り入れようとしていて。でもけっこう悩ましいですよ、自分のスタイリングをどうすればいいかっていうのは(笑)」
▲ヨンジンさんの愛用アイテムはブラックのものが多め。腕時計はカルティエなど価値あるアンティークをコレクション。
MN:「あはは。自分がスタイリストだったら、毎日すてきなものが着られるんじゃないかって、他の人からは思われそうですけどね」
Y:「今は自分のことを飾りこむというよりも、全体的な雰囲気でスタイリングを完成させるということが多いですね。もう僕のことをみんながどういうふうに見ているかというようなイメージ像が、ある程度できているので。だから新しく自分のキャラクターを作り込むことは必要なくて、自分自身がそのままムードになっていればいいかなとは思っていますね」
MN:「そこまでイメージができあがっているというのは、素晴らしいことですね。では、最後の質問です。スタイリストとしての今後の抱負を教えてください。もうじゅうぶんみんなが憧れるようなお仕事をされているとは思うんですが、自分のなかでの目標があれば、ぜひお願いします」
Y:「僕の頭の中で一番大きい絵となっているのは、死ぬ時までこの仕事に携わっている自分です。この仕事をずっとやっていきたいという気持ちがあるんです。新進気鋭のスタイリストもガンガン出てくるし、もしもこの先自分の現場がもう年に数個しかないということになっても、それでも僕はこの仕事を死ぬまでやりたい。だからそのためにも、精神的にもフィジカル的にも健康が一番大事かなって思うし、第一線にいるためにはつねに勉強することも必要なので、その辺は心掛けていきたいですね。健康と勉強です。ローリング・ストーンズを例に挙げますが、彼らはまだ現役でバリバリ活躍しているけど、伝説的な存在じゃないですか。だから僕も死んでから伝説になるんじゃなくて、生きているけど伝説みたいな、ローリング・ストーンズのような存在のスタイリストになりたいですね。まあでも、近いうちにやりたいことで言うと、それこそたくさんありますよ。今自分は男性のスタイリングをよく手掛けるポジションにいますが、女性のスタイリングにもすごく興味があるので、挑戦したいなと思っています」
MN:「ありがとうございました。今後のご活躍も楽しみにしています。日韓を往来できるようになったら、また何か楽しい企画でご一緒できるといいですね!」
Y: 「はい、ぜひ韓国にも撮影に来てください。お待ちしています」
キム・ヨンジン/Kim Younjin
今、韓国で最もオファーの集中しているスタイリスト。ファッション雑誌や広告、映像作品のスタイリングのほか、アーティストの衣装も担当するなど多岐にわたって活躍しており、海外メディアからの取材も相次ぐ。2021年4月号増刊のメンズノンノでは、NCT 127のカバーと特集ページも手がけた。
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HP:https://www.youngjinkim.com/
Instagram:@kimvenchy
Photos:Junkyoung Lee Coordination:Shinhae Song[TANO International]
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