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僕らが最近よく観ているのは、映画史に残るような名作。特に1980~90年代の映画は、ファッションもおしゃれで、スタイリングの参考になるようなヒントが多く詰まっている。その着こなしをメンズノンノモデルたちが現代的に表現しながら、作品の魅力に迫っていく。
THE
OUTSIDERS
『アウトサイダー』
CAST
Daisuke Nakagawa Kotaro Inai Rintaro Hinotsu
Kazuma Anzai Keisuke Nakata Shota Inoue
Yudai Toyoda
思い切ってここまで武骨に着こなしてみたい
ダメージの入ったジーンズを、自分たちのスタイルとしてはきこなす少年たち。その上には、丈が短めのジージャンや袖をまくったTシャツなどを合わせてとことんラギッドに仕上げる。『アウトサイダー』の中で、ポニーボーイ(C・トーマス・ハウエル)やジョニー(ラルフ・マッチオ)をはじめとした「グリース」のメンバーが着こなすアメカジはそれぞれに個性があり、今あらためて新鮮だ。シルエットはタイトにまとめ、肌がしっかりと見えるようにロールアップしてニュアンスをつけるのがポイント。そのタフさをいいバランスで現代的に落とし込むならば、あえて古着を選ぶのではなく、この秋冬の新作でコーディネートしてみるのがおすすめ。
『アウトサイダー』
Story
14歳のポニーボーイは、両親を交通事故で失い、ふたりの兄とともに暮らしている。貧困階級の町に住んでいる彼は、「グリース」と呼ばれる不良グループの一員。いつもグリースのリーダー格・ダラスと2歳上の親友ジョニーと一緒に遊んでいた。ある夜、ポニーとジョニーはライバルグループの「ソッシュ」と出くわしてしまい、そこで思いがけない事件が起きることに。
Fashion
フランシス・フォード・コッポラが、当時、アメリカで人気のあったS・E・ヒントンによる同名のヤング・アダルト小説を映画化。ジーパンやジージャン、チェックシャツなどを武骨に着こなす、60~70年代にかけてのユースのファッションがうまく表現されている。今回はDVDのジャケットなどでも使用されている、「グリース」のメンバーである7人が集合している写真をオマージュ。タイトなシルエットに、大胆に肌を見せるスタイルがかっこいい。
写真:アフロ
映画監督・デザイナー・
スタイリストが魅力を語る!
シネマ&ファッション レビュー
『アウトサイダー』
『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』で知られる巨匠、フランシス・フォード・コッポラが描くアメリカの青春映画。後に「ブラット・パック」と呼ばれる、ロブ・ロウやトム・クルーズ、ラルフ・マッチオといった80年代の青春映画を席巻したスターたちが出演している。劇場公開された92分の通常版に加え、シーンの追加やBGMの差し替えを行った115分のディレクターズ・カット版も存在する。
— FASHION REVIEW —
デニムが永遠であることを証明している
貧困層の「グリース」と、富裕層の「ソッシュ」。この映画にはふたつの対立する少年グループが登場しますが、スタイルや生き方の表明のような形で服を着ているのが面白いですよね。ボタンダウンシャツにチノパンというブリティッシュスタイルのソッシュに対して、カットオフTやデニム、ジージャンといったアメリカンなストリートファッションを彼らなりに着こなしているグリース。特にグリースの面々の服装はユースならではの反骨精神が表れているようで、キャラクターを鮮明に印象づけられます。主人公のポニーボーイが着ているカットオフTは絶妙のバランスでカッコいいですし、デニムも永遠に愛され続けるアイテムのひとつなんだなと再認識させられます。
ポニーボーイ役のC・トーマス・ハウエルに加え、マット・デイロンやトム・クルーズといった後に大人気俳優になる役者たちが集っているのも魅力のひとつ。監督はそうした若者たちと話し合い、意見を柔軟に取り入れながら一緒に映画をつくったようです。そうして生まれたこの青春映画は、今も色あせない輝きを放っていると思います。
落合宏理/FACETASM デザイナー
1977年生まれ。2007年に「FACETASM(ファセッタズム)」をスタート。現在はファミリーマートの「コンビニエンスウェア」のデザインも手がける。
— CINEMA REVIEW —
自分とは何者なのかについての映画
この4作の中ではストーリーが抜群に面白い映画です。主人公である14歳のポニーボーイ(C・トーマス・ハウエル)は、生まれや階級の影響もあって不良グループに属しているけど、ケンカが嫌いで、小説や映画が好きなクレバーな少年。家族や組織といった生まれつき決められた環境の中で、自分とは何者なのか、どう生きていくべきなのか、に葛藤する男の物語としては、フランシス・フォード・コッポラ監督の代表作『ゴッドファーザー』とも共通している部分がありますね。
出自もそうだけど、「その場に立ち会ってしまったから…」という出来事だけで物語が展開していくのが本当にうまいです。主人公たちが運命的に何か特別な事件に出くわしてしまい、その連続だけでどんどんストーリーが転がっていく。起承転結がしっかりしていて、でもそれだけじゃなく、静かで特別な時間もちゃんとある。とりわけ、主人公が「Stay gold」という言葉を言われる場面はグッときました。
1983年の映画ですが、それにしては少しクラシカルな雰囲気があります。おそらく監督は、50年代頃のハリウッド映画(ジェームズ・ディーン主演『理由なき反抗』のような)にあえて気分を合わせてつくったんじゃないかな。色味とか演出がかなりフィクショナルで。特に終盤の手紙のシーンは必見です。こんな見せ方があるなんて!
今泉力哉/映画監督
1981年生まれ。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。2019年『愛がなんだ』が話題に。11月4日に主演・稲垣吾郎の『窓辺にて』が公開予定。
Photos:Toshio Ohno[L MANAGEMENT] Hair:TAKAI
Make-up:DAKUZAKU[TRON] Stylist:So Matsukawa Text:Kohei Hara
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