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僕らが最近よく観ているのは、映画史に残るような名作。特に1980～90年代の映画は、ファッションもおしゃれで、スタイリングの参考になるようなヒントが多く詰まっている。その着こなしをメンズノンノモデルたちが現代的に表現しながら、作品の魅力に迫っていく。
重慶森林
『恋する惑星』
CAST
Hio Miyazawa BEBE
本場のアメカジとは違う、絶妙な色気
トニー・レオン演じる警官633番が劇中でメインに着ているのは制服だが、私服のときのアメカジスタイルも印象深い。チェックシャツをひじ上まで短くまくっている姿は、ただ武骨なだけではなくてほんのり色気が漂う。チノパンにタックインするバランスがちょうどいい。フェイ（フェイ・ウォン）が着こなすタイトなシルエットも今の気分にぴったり。
［宮沢］ジャケット（ナイスネス）￥149,600／イーライト シャツ￥18,700／スティーブン アラン シンジュク タイ（フランコバッシ）￥17,600／ビームス Ｆ パンツ￥28,600／イレーヴ 靴（ドクターマーチン）￥26,400／スティーブン アラン フタコタマガワ ［BEBE］Ｔシャツ（ベースレンジ）￥33,040／スティーブン アラン シンジュク スカート￥15,000［参考価格］／COS 銀座店 サングラス￥60,500／アヤメ リュック￥4,620／アウトドアプロダクツカスタマーセンター 靴／本人私物
ラフなタイドアップの正解がここにある
香港の夜の街を駆け抜けるモウ（金城武）。ベージュ色のジャケットに、ストライプシャツと赤いタイをゆるく合わせる、彼の肩ひじ張らない着方にとても憧れる。ともすれば野暮ったく見えてしまうはずなのだが、そのギリギリのラインを狙ったラフなタイドアップがしゃれているのだ。今ならゆったりとしたジャケットを選ぶのがいい。当時、ウォン・カーウァイからこの映画への出演に抜てきされた、若き金城武を意識して軽やかにまとめよう。
『恋する惑星』
Story
エイプリルフールの日に失恋した刑事・モウ。元恋人のことを忘れるために、その夜出会った女性に恋をしようと決意し、バーの片隅にいた金髪の女性に声をかける。一方、モウもよく立ち寄るハンバーガーショップに、新入りの店員・フェイがやってくる。彼女はいつも夜食を買いに来る警官633番に恋心を抱き、偶然手に入れた鍵を使って彼の部屋に忍び込むのだが…。
Fashion
すれ違う男女の恋愛をスタイリッシュな世界観とカメラワークで切り取り、熱狂的な人気を集めるウォン・カーウァイの傑作『恋する惑星』。アメリカやフランス映画のファッションとは違う、90年代の香港映画ならではの独特なスタイルが魅力だ。フェイの着こなしが注目されがちだが、ゆるくタイドアップしてジャケットをはおるモウや警官633番のチェックシャツの合わせ方も参考になることが多い。翌年に公開された『天使の涙』とともに観てみよう。
©1994, 2008 Block 2 Pictures Inc. All Rights Reserved.
映画監督・デザイナー・
スタイリストが魅力を語る！
シネマ&ファッション レビュー
重慶森林
『恋する惑星』
— FASHION REVIEW —
シンプルな服だけど
今見ても輝きを失わない
香港映画といえばブルース・リーやジャッキー・チェンのカンフー映画のイメージしかなかった僕にとって、公開当時、中学生の頃に観た『恋する惑星』は衝撃でした。当時は話についていけなかったけど（笑）、視覚だけで楽しめるスタイリッシュな世界観にワクワクして。音楽と映像のマッチングもすばらしく、特に「夢のカリフォルニア」という曲が流れながら金城武とフェイ・ウォンが0.1㎜の距離に近づく場面には鳥肌が立ちました。
今回の映画特集でモデルたちのスタイリングを担当したのですが、この映画は今も愛され続けているシンプルな衣装で彩られているとあらためて思いました。トニー・レオンが着ていたチェックシャツにチノパンといったわかりやすいスタイルをベースに、シャツを少し短めにまくることで新鮮さを演出しています。フェイ・ウォンがつけていた印象的なゴム手袋を、今ファッションアイテムとして提案できたのもうれしかったです。
この特集をきっかけに読者の皆さんにも、好きな映画のカルチャーや登場人物が身につけているものを自分の服装に取り入れてみてほしいですね。
松川 総／スタイリスト
1981年生まれ。ファッション誌やアーティストのスタイリングなどで活躍中。映画から着想を得たコーディネートも積極的に提案している。
— CINEMA REVIEW —
足し算的につくられた緩急のある映像
ウォン・カーウァイの映画は唯一無二ですよね。ストーリー展開は案外シンプルだけど、独特なカメラワークや音楽使い、色使いのセンスで魅せる監督。現実では言葉にする人がいない気恥ずかしいセリフとかも大量にある。でも、映画ってこれくらいプロットは軽くてもいいんだな、って思えます。その分、映像がとても豊かなんです。
落ち着いている時間がほとんどないですよね。常に役者とカメラが動いている撮影方法は躍動感のある芝居とかみ合っているし、緩急があるからこそ少し落ち着いたときの画が印象に残る。モウ（金城武）が電話をかけているところとかね。説明に時間がかかりそうなところは迷わずナレーションを挟んだりもしていて、とにかくテンポを大事にしつつ足し算的につくっていると思います。『ミステリー・トレイン』の引き算的な美学とはまた真逆のよさ。
ファッションページでは、（『his』に主演していただいた）宮沢氷魚さんが金城武さんの服装をオマージュしていて、これがカッコいい。そもそも雰囲気が似てるし、ぴったりだと思います。
今泉力哉／映画監督
1981年生まれ。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。2019年『愛がなんだ』が話題に。11月4日に主演・稲垣吾郎の『窓辺にて』が公開予定。
『恋する惑星』1994年
香港を舞台に若者たちの失恋と新たな恋の模様をスタイリッシュに描いた、ウォン・カーウァイ監督によるラブストーリー。日本でも活躍する金城武の出世作でもあり、そのほかにトニー・レオンやフェイ・ウォンといった俳優たちも出演している。日本では1995年に初公開された。2022年には本作を含む監督の5作品が4Kレストア版で上映。U-NEXTで配信中。
Photos:Toshio Ohno[L MANAGEMENT] Hair:TAKAI
Make-up:DAKUZAKU[TRON] Stylist:So Matsukawa Text:Kohei Hara
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