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おしゃれプロが推しの古着屋を紹介する連載。今回は普段からテーラードジャケットやスラックスを愛用するスタイリストアシスタントの竹前悠大さんが、池ノ上の気鋭の古着店フリーへ。好奇心が掻き立てられるアイテムを次々試着して、意外なアウターをお買い上げ!
服好きのフィーリングにマッチする
商品構成&バランスのよさに感動
池ノ上 FOLLIEE.(フリー)
竹前さんのCHECK POINT
2022年11月、池ノ上駅から徒歩1分ほどのところにオープンしたフリー。「店ができた頃からインスタで見て気になっていました。投稿を読むと熱い古着愛が伝わってくるんです。足を運んでオーナーの末永(竜介)さんと話をして、すっかりフリーのファンになりました」と、案内してくれた竹前さん。

長髪が似合う長身のオーナー、末永さんは現在31歳。古着の卸会社でバイヤーを経験して独立した。フリーはアメリカで買い付ける古着と、リモートで買い付けるヨーロッパ古着を中心に、末永さんが面白いと思った現行品や、知人などつながりのある新進ブランドの商品も一部セレクトしている。

「ブランドものが多いわけではないんですが、物量が多いので、何も考えずに行っても心惹かれる掘り出し物が見つかるんですよ」と太鼓判を押す竹前さん。店に入ると入口に近いところから古着を見始める。気になるものはラックから引き出して、末永さんに詳細を訊く。

この日最初に目に入ったのはサムソナイトの合体アウター。「スーツケースなどを手がけるバッグブランドのサムソナイトの合体コートです」と末永さんに説明され、ファスナーを開けると「シックかと思いきや中はこんなにスポーティなんですね」と驚く竹前さん。
1999年から数年間、プラダのメンズウェアのデザインディレクターで名を揚げたニール・バレットがサムソナイトのアパレルを手がけていたことがあり、当時話題を集めた。テックモードの先駆的ブランドとして、今また評価されている。

続いて手に取ったのは、反対側のラックにあった大胆な配色のボーダニット。「コートを脱いだとき一枚で主役になるようなニットが欲しい」と入店前に語っていただけに、このデザインニットに惹かれたようだ。体に当ててサイズ感をチェック。

ニットの隣のジャケットコーナーからダブルのテーラードジャケットをピックアップ。「それはワイズフォーメンのもので、年代はまだ調べていないんですが日本毛織のウール生地を使っているんですよ」と末永さんが解説すると、「前面にボタンが一列というのが珍しいですよね。ボックスシルエットで短丈と今っぽいけど、テーラードという…」と竹前さんがコメントを返す。静かながら阿吽の呼吸。

次はこのコート。「それは1998年のコム デ ギャルソンのもので『インサイドアウト』をテーマにした革新的なコレクションです。シングルのチェスターコートを本当に裏返しにしたデザイン」(末永)「ちょっと野暮ったさもあるけれどそれも想定済みな」(竹前)「ドレスの中にモードがあるみたいなアイテムです」(末永)。会話のキャッチボールが楽しい。

裏地剥き出し面を試着した後、リバーシブルと聞いてシンプルなチェスターコート面も試着。「サイズはぴったりだけど、袖が短いですね」と竹前さんが言うと「このコート自体はウィメンズのアイテムなんですよ。このときのメンズはシルエットがあまりモダンじゃないので、ウィメンズもありかなとセレクトしました」と末永さんが話してくれた。

ひと通りアウター類を見た後はレジ横のスラックスゾーンへ。「これは生地がしっかりしていて、いいですね」(竹前)とパンツを手に取ると、「このあたりはイタリアの有名なサルトリアが手がけているスラックスで、ほかではあまり見ないようなものが多いと思います。現行品で買うと10万円とかするので、そのレベルのものが古着なら2万円程度で買えるのはラッキーなんじゃないかと」(末永)。
フリーはドレッシーなスラックスをカジュアルに着こなすことを提案しているので、末永さんの解説にも力が入る。竹前さんも好みのものが多いようで目を輝かせていた。

スラックスの上のラックにふと目を向けると、気になるアイテムが。それに気づいた末永さんが「ここは僕のお気に入りの、ひと際クセのあるものを集めたコーナーです」と意味深な発言。「その黄色いフリンジのアイテムは…」と竹前さんが尋ね「コレですか?」とい末永さんが取り出したのはボディが透けた素材のジャケット。
「着こなせなさそう…」といいつつ試着してみると「頑張ったらイケそうな気がしてきた」(竹前)と思わず笑顔。「これは最近のアイテムです。アメリカで買い付けたんですが、絶対売れなさそうだからいいなと思って。なぜ売れないかを考えるのがまたいいんですよ」と末永さんも笑顔。

末永さんのお気に入りラックにはこんなヴィンテージのミリタリーニットも。「1950年代のアーミーニットです。マルジェラのミリタリーニットのモトネタになっているのは、これの40年代のものです」とハイブランドにも精通する末永さんが解説。竹前さんはドローコードの色の滲みに見とれていた。

ひとしきり1階を見たあとは、入口左手の階段を上り2階へ。ここでもカモフラージュパンツやら、チロリアンジャケットやら、変化球古着をあれこれ物色。

そんな中、竹前さんは気になるコートを見つけ試着することに。「これ、ミリタリーものみたいですが、今までに見たことがなくて」と言うと「フランス軍の80年代のドッグトレーニングジャケットです。要は警察犬が犯人に噛みつく練習をするためのジャケットで(詳細はぜひ動画でチェック!)」と末永さんが説明していると「だからこんなに分厚いんだ!」と腑に落ちた竹前さん。

内側は総パイルで「あったかい」と着心地を噛みしめる。「人生で初めて見ました。これは相当ないと思います。これも一生売れそうにないアイテム」と末永さんが話していると「コレ、絶対買いたい」と竹前さん。取材の終わりに買い取った。
池ノ上 FOLLIEE.(フリー)
竹前さんのRECOMMENDED ITEMS
気になるアイテムのオンパレードだった店内回遊。直感的に「買いたい」アイテムもあったし、末永さんからストーリーを聞いて「欲しい」となったアイテムもある。試着して「やっぱりコレだ」と思ったのはこの5点。
1_チロリアンジャケット

縮絨ウールを使った本格的なチロリアンジャケット。「単純に素材感やデザインがかわいいなと思いました。刺繍やボタン、裾にブランドロゴのブローチが付いているなどディテールも凝っています」(竹前)。「これは伝統的な製法でつくられたオーストリアのチロリアンジャケットで、HOFER(ホッファー)というブランドのものです。このブランドはなくなってしまったんですが、古着の世界では今も大人気です」と末永さんが教えてくれた。
2_極太畝のコーデュロイジャケット

こんなコーデュロイがあるのか…とスタッフ一同驚いた極太畝のジップジャケット。「太畝のさらに太畝という極太畝に面白さを感じました。着てみると意外とタイトで、しかもあたたかくて。上がタイトめでボトムはダボッとしたシルエットが好きなので、これはいいと思いました」(竹前)。「ダブルジップでスタイリングに変化がつけやすく、上質なキュプラ裏地という点もおすすめです」(末永)。
3_レイヤード風タートルニット

レイヤード風デザインが活きるニットはレディース。「主役になるニットを探していたのでこれはズバリでした。タートル部分だけでなく、袖もレイヤード仕様と凝ったつくりで、配色も新鮮です」(竹前)。フリーはメンズ古着が主体だが、男子が着られそうなサイズ感でデザインがいいものはレディースでもピックアップしている。
4_ドッグトレーニングジャケット

見た瞬間に竹前さんが喰いついた中綿入りのコート。「襟元を覆うデザインやフロントのパッド入りポケットなど、見たことがないデザインにまず惹かれ、末永さんの話を聞いてドッグトレーニング用と知って面白いなと感動」(竹前)。回遊しているときにもかなり盛り上がったが、こんなものが見つかるのもフリーの魅力。
5_ピンストライプスラックス

クラシックなピンストライプとチャコールグレーのスラックスは試着したらサイズもぴったりだった。「チャコールグレー、ピンストライプのスラックスは常に探しています。個人的にダブル裾が好きなので、これはディテールも自分好みでした」(竹前)。タックの入り方にも技があり、末永さんが力を入れてセレクトしているのがわかる。
池ノ上 FOLLIEE.(フリー)
竹前さんのCOORDINATE
回遊してみて、見たことのないアイテムや気になるテーラードアウターもいろいろあったが、スタイリングを組もうと考えたとき、竹前さんがベースアイテムとして選んだのはスラックスだった。

「サイズもシルエットも自分好みの、普段はいているようなチャコールグレー×白ストライプのパンツをベースにしています。フリーで出会ってその魅力に気づいたチロリアンのベストをトップに合わせてみたら新鮮で、今までの自分とは違うコーディネートが完成しました。インナーは黒のカシミヤニットで締めて上品かつモダンに。ちなみにこのベストはファスナーのスライダーの形状が変わっていて、さり気なくポイントになってくれそうです」(竹前)。この日、履いていたグッチのタッセルローファーが見事にマッチ。
クラシックなアイテムどうしながら組み合わせやカラーリングで今っぽく仕上げたのはさすが。トリミングが特徴のチロリアンベストがほどよいアクセントとして活かされていた。
取材を終えて
テーラードスタイルが好きな竹前さんだが、チロリアンジャケットやドッグトレーニングジャケットなど出会いも多く、充実した取材になった。「イタリアの古着をはじめ、ヨーロッパの古着の魅力をフリーで知りました。感覚でパッと見つけたものに、末永さんが丁寧な解説を添えてくださって、そこでも心を動かされ…。また話をしに来たいです」(竹前)。
これから先は古着だけでなく、新品の割合を増やして「長く通ってもらえるお店」にしたいと考えている末永さん。洋服が好きな人ならいろんな発見ができる店だから、実際に足を運んで末永さんとの会話を楽しんでほしい。
詳細は動画でチェック!
テーラード好きどうしの波動がシンクロしたようで、静かながら笑みもこぼれたふたり。落ち着いた印象の末永さんの、淡々とした熱いトークに耳を傾け、会話のキャッチボールを楽しむ竹前さん。いろいろな意味でためになる動画をお見逃しなく。

SHOP DATA
住所:東京都世田谷区代沢2-42-8
営業時間:14:00~21:00 土日祝日13:00~20:00 不定休
Instagram:https://www.instagram.com/folliee_tokyo
HP:https://folliee.base.shop/
Photos : Kaho Yanagi
Movie : Yumi Yamasaki
Movie Edit : Yuki Hayashi
Composition & Text : Hisami Kotakemori
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