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おしゃれプロが推しの古着屋を紹介する連載。今回はスタイリストの後藤留維さんが、今年8月にオープンしたばかりの下北沢の古着店、カッコをナビゲート。人を笑顔にする接客が生きがいという名物オーナーにも大接近。
今回のお店を訪ねたのは…
大学時代に起業したオーナーが王道古着から
デザイナーズ古着へと守備範囲を拡大
SHOP PROFILE
カッコは下北沢の駅から徒歩で10分弱。茶沢通り沿いの角ビル(入口は路地側)に、「古着屋KAKKO(カッコ)」の2号店として今年8月にオープンした。ガラス張りの路面店で中がよく見えるが、入口に看板や目立った店名の記載はなく、ドアハンドルの上に店名と営業時間の表示が記され、カッコとわかるようになっている。
オーナーは24歳の中島瞳生(なかじま とうい)さん。高校生の頃からストリートファッションに傾倒し、古着屋やフリーマーケット、古着フェスをめぐるうちに古着好きに。大学生になると国内のディーラーにもコンタクトを取るようになり、オンラインで古着の販売を始める。同時に中島さんは、地元・横浜のスポーツショップでのアルバイトを通して、接客の魅力に気づく。
「接客というのは人の悩みや課題を解決して、笑顔になってもらえるサービスなんですよね。それで自分が好きな古着と接客が結びつく古着屋をやることにしました」と、大学在学中の2021年1月に下北沢に「古着屋KAKKO」をオープンする。
「その人の雰囲気や魅力を最大化する古着提案」をする中島さんの接客が、口コミで広まり1号店は盛況を呈した。大学を卒業して古着ビジネスに本腰を入れ、海外にも買い付けに出かけるようになると、中島さんの興味は王道のアメカジ古着だけではなく、「ヴィンテージに着想したデザイナーズブランドの古着」にも広がっていく。またSNS発信の重要性にも気づき、専任スタッフを投入してさらに顧客を増やした。
もともと洋服だけでなく、空間事業にも興味があるという中島さんはデザイナーズブランド古着をメインに「空間にも価値のある“服の美術館”のような古着屋」として2号店をオープンさせた。ちなみに店名のカッコ(KAKKO)は、 “恰好”と「 」のダブルミーニングがあり、現在は「 」(記号)を店舗のアイコンとして使用している。
2号店は店舗面積も約100㎡と広く、店内の両サイドに古着がゆったりと陳列されている。中央には白いシーチングで包まれた椅子やテーブルが並び、余裕のある空間はギャラリーのようにランダムな回遊が楽しめるのが魅力だ。
デザイナーズだけでなくミリタリー、ワークなど古着の王道アイテムやヴィンテージも厳選して、ジャンル分けせず色別に並べている。年代も1930年代から2010年代まで幅広く、モードなデザイナーズブランドの隣りにヴィンテージや、ノーブランド、あるいはポロ ラルフ ローレンのような古着が並び、見ていてワクワクする。
カッコは若きオーナー、中島さんの志向が全面に押し出されたセレクトが同世代に人気で、スタイリストの後藤留維さんも下北沢をリサーチしているときに1号店を見つけ、独特のセレクトに惹かれたという。やがてコンセプトもセレクトもまったく違う2号店がオープンして感銘を受け、今回紹介してくれたという経緯がある。
現在はツナギ推しということで、アメリカのワークブランドやヨーロッパのミリタリー由来のツナギが、レジ近くのラックにまとめてディスプレイされていた。
靴もスニーカーを筆頭にデザイナーズブランドのブーツなど状態のいいものが多く、整然と並んでいて見やすい。こちらも中島さんがプーマびいきということで、プーマの珍しいシューズが散見し、後藤さんがつぶさにチェックしていた。
下北沢 KAKKO(カッコ)
STAFF PROFILE
オーナーの中島瞳生さんは神奈川県横浜出身で、1999年生まれの24歳。高校生の頃からは原宿に通い、原宿が近いという理由で青山学院大学に進学。原宿、渋谷だけでなく、古着屋の多い下北沢にも足をのばし、古着にのめり込んでいった。古着屋勤めの経験はないものの、持ち前の行動力で仕入れ先を開拓。大学時代に起業し、現在は2店舗を展開。買い付け、接客とも自身で行っている。
「僕に接客してほしいと目がけてくるお客さんも多く、僕自身、スタイリング提案が大好きなので、楽しんでいます」(中島)。流れるような商品解説とフレンドリーなトークで、接客されたら虜になってしまうこと必至。ぜひ店舗で体験してほしい。
下北沢 KAKKO(カッコ)
RECOMMENDED ITEMS
アメリカやヨーロッパに年に2~3回、買い付けに出かけるほか、国内のディーラーやコレクターからもデザイナーズのアーカイブなどを仕入れる。トレンドは気にせず直感的に「面白い!」と思ったものをハンドピックするのがポリシー。中島さんのおすすめ5選はデザイナーズ、スポーツ、ヴィンテージが混在するカッコの商品構成を象徴している。
1_ダメージ感が絶妙なMA-1
こちらは裏地がオリーブグリーンのヴィンテージ調MA-1。本格的は軍モノではなく、民間でつくられたものだ。「ミリタリーの雰囲気が好きです。現行品にはないコットン生地特有の経年変化、古着独特の退廃した感じがたまりません」(中島)。
ミルスペック(軍規格)でも1960年代初頭までは裏地がオリーブグリーンだったので、当時のデザインをベースにしていると推測される。MA-1特有の袖ポケットがないのも、ミニマルでいい。
2_フェード感がたまらないデニムエプロン
中島さん曰く「ほかでは取り扱わないようなエプロン」もヴィンテージ特有の色落ち感にひと目惚れして買い付けた。「このフェード感、ヤバくないですか? エプロンではありますが、スカートのようにスタイリングできるなと思って」(中島)。スタイリング提案が好きという視点が活きる。
裾の部分がミミになっているのもレアだ。いわゆるジーンズとは逆に生地を使っているので、「縦落ち」でなく「横落ち」になっているのがユニーク。
3_持ち主の愛が溢れるスタジャン
メゾンブランドがピックアップしたことで令和の人気冬アウターになったスタジャン。「これはちょっとファニーなアイテムで、背面の不細工なハスキーのワッペンにも愛嬌があるんですが、何より前の持ち主の名前から住所まで入っているという。愛情の深さが随所に表れているんです」(中島)。フロントには持ち主の名前とイニシャル、81はおそらくこのスタジャンを作った年度。
Huskiesは何かのチーム名だろう。名称とキャラクターがセットであしらわれているところに、アメリカのスタジャン文化が垣間見える。ワッペンのコンディションもいい。
中島さんが「オーナーの愛」と表現した通り、襟元のラベルには住所と電話番号が手書きで記されている。メルトンボディにラグランのレザースリーブと、正統派かつ本格的なつくりで、配色もモダン。まさにメゾンブランドのサンプリング・ソースのようだ。
4_デニムじゃないトラッカーベスト
ワークウエアの盛り上がりで脚光を浴びるトラッカージャケットのベスト仕様。「このテのデザインは厚手のデニム地が多いんですが、ミュウミュウから薄手のコットン生地で出ているのを見つけて感動しました。さわやかに着られますよね」(中島)。着丈も短く今のトレンドのど真ん中といったアイテムだ。イタリア製。
5_ダーク ビッケンバーグのブーツ
80年代末から90年代にかけて、踵にシューレースを通すデザインのブーツがブレイクしたダーク ビッケンバーグ。「ドイツで見つけました。シューレースの通し方が独特で、足元からおしゃれができる最強のブーツ。自分らしさを主張したい人にぜひ履いてほしいです」(中島)。
ダーク ビッケンバーグはマルジェラと同時代にアントワープ王立芸術アカデミーに在籍した「アントワープの6人(the Antwerp Six)」のひとり。1990年代のモードシーンに新風を吹かせた。
SHOP DATA
住所:東京都世田谷区代沢5-18-1
営業時間:13:00~20:00
定休日:不定休
Instagram:https://www.instagram.com/kakko_shimokitazawa/
HP:https://webstore-kakko.stores.jp/
Photos:Kaho Yanagi
Composition & Text : Hisami Kotakemori
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