▼ WPの本文 ▼
おしゃれプロが推しの古着屋を紹介する連載。メンズノンノのファッションテーマの常連でもあるスタジオファブワーク / エンケル プレスの西澤祐哉さんが、とっておきの古着店に案内してくれた。神宮前のピッツは、ほかにない古着の宝庫だった!
スタッフがストーリーを語ってくれる
「見たことがない!」古着の宝庫
SHOP PROFILE
原宿と千駄ヶ谷の間の裏路地。1階にセレクトショップMooreがある白いタイル外装のビルの2階にピッツはある。壁に吊るされたフラッグと店に続く階段脇の立て看板が目印だ。コロナ禍が猛威をふるいはじめた2020年3月にオープン。オーナーはファッション業界でも有名な古着屋の老舗、サンタモニカ出身の伊藤 翼さん。
原宿・渋谷・表参道といった日本のファッションの中心に店を構えたいと思ったが、せわしないメインストリートではなく、本当に好きな人が通ってくれるような店にしたいと、少し外れたこのエリアへの出店を決めた。サンタモニカ表参道店に8年、渋谷店で3年の研鑽を積んだ伊藤さんの店ということもあり、スタイリストや近くにオフィスを構えるデザイナー、セレクトショップのディレクターなどが来店し、厳しい時期をしのいだ。
伊藤さんのキャリアに加え、アメリカものだけでなくヨーロッパの古着が大量に見つかる商品構成やセレクトの視点の鋭さで、ほかの古着屋で見ることがないようなモノがそろっているのが、ピッツに業界人が通う理由だ。そして来店すればわかるが、セレクトした古着への“愛”が、スタッフのトークから伝わってくる。古着の魅力が”ストーリー“にもあることを、改めて気づかせてくれる、そんな店なのだ。
神宮前 PITTZZ(ピッツ)
STAFF PROFILE
オーナーの伊藤さんひとりでスタートしたピッツだが、現在は20代の若手スタッフ、遠藤雅士さんと佐藤詩響さんが加わり3人体制に。店頭には若手のふたりがメインで立つ。プレスとして神宮前のオフィスで働く西澤さんは、スタイリストから近所にピッツがオープンしたことを教えてもらい存在を知った。
「足を運んでみたら既視感のない古着がたくさん並んでいて、ワクワクしました。翼さんに接客されたんですが、『好き』が伝わってくる語りにも感動して」と西澤さんが話すとおり、若手のふたりからもその「古着愛」が伝わってくる。
この日はスタッフ総出で取材に応じてくれ、なんと全員ジャケット姿。打ち合わせでもしたのか尋ねると「偶然です」ときっぱり。それほど息が合っているという素晴らしいチームだ。遠藤さんは2年半前からピッツのスタッフになり、個人的に単身でアメリカに買い付けに行ったという経験の持ち主(詳しくはピッツのブログをCHECK)。佐藤さんはピッツのインスタのモデルなどを経て、昨年4月からスタッフに加わった。
神宮前 PITTZZ(ピッツ)
RECOMMENDED ITEMS
伊藤さんは年に2~3回、アメリカとヨーロッパに出かけ、毎回1カ月から1カ月半滞在してハンドピックで買い付けをする。「ヴィンテージショップを名乗るならハンドピックでないと語れない」というのが信条。メンズだけでなくレディースの古着も3割ほどラインナップする。「逆張りの性格なので、例えばテックのようなトレンドもヨーロッパものやジャンルを変えてそろえたりしています」という伊藤さんの思いが詰まった、ピッツおすすめの5点はこちら。
1_セーリングジャケット
ヨーロッパで買い付けたセーリングジャケット。レッドベースにネイビーの配色がアクセント。「ファッションシーンでテックが流行っていますが、僕はヨーロッパのテックウエアとしてセーリングジャケットに注目しています。例えばこのコットンポリエスル撥水生地のジャケットもボタンにデザインが入っていたり、アメリカものに比べて洗練されているのが特徴です」(伊藤)。
「Starring」という英語の織りネームがついているが、ブランドの詳細は不明だそうだ。ボタンやファスナータブだけでなく、織りネームのデザインもしゃれている。
2_GORE-TEXのコート
ドイツのアパレルブランド、ブガッティのコートはGORE-TEX素材ながらしなやかで落ち感もいい。「90’sのアメリカ古着のGORE-TEX製品だと軍用やアウトドアものばかりで、まだゴワゴワなものが多いんですよ。ヨーロッパは早くからファッションにGORE-TEXを取り入れていたようで、こんな風にやわらかなコートが見つかったりします。こういうものをピックアップしたいですよね」(伊藤)。トレンチコート風だが、ドローコード入りのスタンドカラーとヒネリのあるデザイン。
襟元にはbugatti(ブガッティ)とGORE-TEX®のダブルネームタグが。ブガッティとはドイツのアパレルブランド。1978年にメンズのコートブランドとして設立され、今はレディースも手がけるトータルブランドに。母体となる会社の創業は1947年と歴史があり、ヨーロッパでは紳士服メーカーとして有名だそうだ。
3_Made in USAのウエストポーチ
店内のあちこちに散見したカラフルなウエストポーチも推しのアイテム。「2000年代のデッドストックが大量にあったので、ファッションのポイント使いにいいなと思って買い付けました。ウエストに巻いてシルエットを変えたりすることもできますし、フェスやライブのときにはちょうどいいバッグとして活躍してくれます」(伊藤)。Y2Kファッションにズバリなネオンカラーが多く、マルチカラーパターンもあるのが特筆だ。
90年代からアメリカがものづくりの基盤を海外に移し始め、2000年代はこのポーチのような大量生産品でMade in USAが見つかる境目の年代。ブランドネームなどがない代わりに、このフラッグタグがアクセントとして効いている。
4_カラージーンズ
春はカラーものに力を入れたいと、伊藤さんが買い集めたもののひとつがカラージーンズ。「ブランドは絞らず、イタリア製などユーロ・メイドにこだわって、よいと思うモノを選びました。80年代から90年代にかけてたくさんつくられていたんですが、最近は古着でも少なくなっていて。今回たまたまデッドストックでまとまった数を買い付けることができました」(伊藤)。
この後染めのグリーンのジーンズは、SILVER PLATE JEANSのフラッシャーがそのまま付いたデッドストック。今のトレンド直球のカラーでもあり、ワイドテーパードのシルエットもモダンだ。入口入ってすぐの棚にいろいろなカラージーンズが並んでいるからぜひともチェックしてみて。
5_30年代のドイツのワークパンツ
レギュラーものだけでなく、しっかりヴィンテージもラインナップするピッツ。リーバイスやリーなど、わかりやすいヴィンテージだけでなく、伊藤さんの琴線に触れるワークウエアや希少なアイテムをピックアップしている。そのひとつがこのドイツのワークパンツだ。「フェードした色やボロボロ具合も、これぞヴィンテージという風格があります。この年代のヨーロッパ古着はなかなか見つからないので、希少なんですよね」(伊藤)。
ボタンでなくフックが付いているのもヴィンテージの証。色のフェード具合も絶妙で、ウエスト裏のダメージ感もあくまで自然なのがいい。このパンツを見てうっとりする伊藤さんの姿にも心が動かされる。
【後編】では
スタジオファブワーク / エンケル プレス
西澤さんが気になったアイテムや
コーディネートを紹介!
SHOP DATA
住所:東京都渋谷区神宮前2-16-16 KUROSU3ビル2F
TEL:03-6447-4324
営業時間:13:00~21:00(日曜のみ~20:00)
定休日:不定休
Instagram:
@pittzz_tokyo
WEBサイト:https://linkfly.to/41117qapfuQ
Photos:Yumi Yamasaki
Composition & Text : Hisami Kotakemori
▲ WPの本文 ▲