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おしゃれプロが推しの古着屋を紹介する連載。ショップの紹介を主軸にした前編に続き、後編ではワグインク 石川大樹さんが気になったアイテムや、挑戦したいと思っていたカウチンセーターをスタッフの板倉亮太さんに相談しながらスタイリング。
ワグインク プレスアシスタント
石川大樹 さん
秋田県出身。大学進学を機に上京し、古着屋の多い町田市に住んだことで古着に目覚める。大学時代から国内外のブランドをPRするワグインクでインターンを始め、卒業後に就職。今のファッションの源流となる古着が好きで、休日は古着屋めぐりがルーティーン。パタゴニアのシンチラやアディダスのジャージなどが目下の蒐集アイテム。
信頼できるスタッフに相談しながら
自分にベストな古着を見つける
高円寺 Slat本店(スラット 本店)
石川さんのCHECK POINT
昨年末の休日には地方の古着店を1日で17軒もまわったという石川さん。「古着は出会いが大事だから、インスタで見て特定のものをめがけていくようなことはせず、自分の足でお店をまわって、その場その場で魅力のある古着を見つけていきます」(石川)。
スラット本店には何度も来店しているが、ヴィンテージが並ぶ奥のコーナーを最初にチェックした後は、スタッフの板倉さんにおすすめを聞きながら店内をまんべんなく見ていくという。
この日はヴィンテージコーナーのミリタリージャケットやアウトドアのフリース製品をチェックした後、隣に置かれていたカウチンセーターに目が止まった。「カウチンセーターはチャレンジしたいんだけど、どうやって選ぶのがいいのかな?」と石川さんが尋ねると「好きな柄に注目すると選びやすいですよ」と板倉さんがアドバイス。気になる柄を手にしては値段を確認して、ほぼ1万円前後と「挑戦しやすい価格」にも笑顔がこぼれる。
さらにレタードセーター、ネルシャツや現行ものでスラットが得意とするECWCS (エクワックス/米軍のレイヤリングシステム)製品をチェックして、ダウンジャケットコーナーへ。「ダウンはほとんどがエディ・バウアーとウールリッチのもの。短丈ブームでダイヤモンドキルトのスカイライナージャケットが今、人気ですね」と板倉さん。石川さんは「僕はボリュームのあるタイプの黒かな…」と、ラックから黒いダウンを取り出してディテールを見る。
窓際のアウター類をいつも通りくまなく見て、旬のスタジャンのコーナーでもメゾンブランドの元ネタになっているようなアイテムを次々とピックアップ。これぞと思うものは板倉さんに詳細を尋ね、試着してサイズ感やバランスを確認する。次に目が留まったのは、ディスプレイされていたラコステのブルゾン。リバーシブルと聞けば裏面のディテールもしっかり確認。石川さんが袖を通すものは、少し大きかったりジャストだったりバラツキはあるが、どれも今っぽいバランスに見えるものばかりだ。
トレンドのテーラードジャケットやトラッドなコート類もラインナップするスラット。バーバリー、アクアスキュータムといった英国トラッドブランドに交じってディオールやイヴ・サンローランなどデザイナーズものも散見する。石川さんはブランドものではないが、ダークグレンチェックのモード感のあるコートをじっくりと品定め。商品数も多いので、取材時間をフルに使ってもまだ見足りない様子が…。
高円寺 Slat本店(スラット 本店)
石川さんが気になったアイテム
店内めぐりの間に試着したアイテムはどれも「気になる」アイテムとして選んでくれた石川さん。「今いちばん挑戦したいカウチンセーターは、板倉さんに勧めてもらったサンダーバード柄が自分に大きかったので、着たいサイズ感で選び直しました」(石川)。さらに今話題のデジタル迷彩を、ミリタリーコーナーで見つけて追加してくれた。
1_シャチ柄のカウチンセーター
カウチンセーターは、カナダのバンクーバー島の先住民、カウチン族に由来するざっくりとした手編みのセーター。幾何学柄と動物など自然をモチーフとした柄を組み合わせた、素朴なルックスが魅力だ。「もともと気になっていたカウチンは、選び方を板倉さんに教えてもらったので、柄とサイズ感で選びました。自分の好きなネイビーベースでシャチ柄というのが面白い」(石川)。
フィルソンは1897年創業の老舗アウトドアブランド。マッキノークルーザーに象徴されるように、今もローファイなスタイルを守り、レトロ・アウトドアファンに支持されている。「ヴィンテージではないんですが、フィルソンのシャチ柄はとても人気があって、ほかのカウチンセーターよりも値段が高くなっています」と板倉さんが解説してくれた。
2_ラコステのリバーシブルブルゾン
ポロシャツでおなじみのラコステのブルゾン。「(ネイビーの面が)ニットというところに惹かれました。ニットのブルゾンというのが珍しいと思ったらリバーシブルとのことで、これは使えそう。胸じゃないところにワニのワンポイントがあるのもいいですよね」(石川)。
リバーシブル面はベージュの布帛で、リブニットの襟や袖、裾のネイビー配色が活きる。「大樹君は無地が似合うよね」と板倉さんにも褒められた一着。年代を尋ねるとサッとポケット内側のタグを確認して「台湾製だから80年代ですね」と教えてくれた。
「ベージュ面は無地かと思いきや、ポケットにワニが付いているのも、ちょうどいい感じです」(石川)と絶賛。
3_エディ・バウアーのダウンジャケット
ダウンジャケットに見えない、スタンドカラーのマウンパタイプ。「ダウンでXXLサイズということもあり、包み込まれるような着心地で。モノとしても迫力がありました。オールドアウトドアのダウンジャケットには、黒がない印象があったので、レアに感じました」(石川)。
鳥のモチーフが加わった黒タグは2000年代以降のものだとか。襟裏にコーデュロイがあしらわれたデザインにもレトロ感が。
4_デジタル迷彩のジャケット
ファレル・ウィリアムスが手がけたルイ・ヴィトンのファースト・コレクションでフィーチャーされたデジタル迷彩。「カモフラージュ柄の中でもファッション感度の高いデジタル迷彩。しかもGORE-TEX仕様だからレインウエアとしても使えるという、機能とデザインを兼ね備えたジャケットです。ハイスペックですが、古着ならではのこの価格」(石川)。
軍モノはミルスペックという厳しい規格に基づいて生産されているので、クオリティはお墨付き。この通り内側もシームテープでしっかり防水されている。
高円寺 Slat本店(スラット 本店)
石川さんのセルフコーディネート
「きょうは自分好みのカウチンセーターに出会えたので、板倉さんにアドバイスしていただきながら、コーディネートを考えてみました」と、ネイビーベースのモダンなスタイリングを着こなしてくれた石川さん。
「ネイビーベースのカウチンセーターに合わせて、インナーのスウェットとパンツをネイビーでまとめました。カウチンセーターは身幅が広くて着丈が短いシルエットだったので、今っぽく見えるかなと」(石川)。石川さんのサイズ選びのセンスは抜群だ。
バックには大胆なシャチモチーフがリーフ柄とともにあしらわれている。現行のものにはない佇まいながら、今っぽく見える鮮度の高さがある。
「セーターの着丈が短いので、斜めポケットのロイヤルネイビーのパンツが活きると思ってこれにしました」(石川)。ロイヤルネイビーはイギリス海軍のこと。アメリカ軍モノとは違ったデザイン、品のいいネイビーの色みで、スラットでも隠れたベストセラーなのだとか。この日、石川さんが履いてきたアディダスのBWARMY(ジャーマントレーナー)がばっちりハマった。
取材を終えて
板倉さんとのコミュニケーションを通して、きょうも古着の世界が広がった石川さん。「ずっと気になっていたカウチンセーターに挑戦できたのは収穫です。ロイヤルネイビーのパンツも欲しかったので、ジャストサイズがあってうれしかった。いつも2時間くらいかけて商品を見ているので、この後お店に残って、買うものを見極めたいと思います」(石川)。
良心的な価格、品ぞろえはもちろん、板倉さんのように知識豊富なスタッフが親身に接客してくれるのもスラット本店の魅力。古着の知識を深めたい人はもちろん、初心者も安心して行ける古着店だ。
詳細は動画でチェック!
石川さんにとって板倉さんは本当に着心の知れた友人で、同時に古着の師匠的な存在でもあるようだ。“人見知り”な石川さんと“人懐こい”板倉さんの距離感が絶妙な、動画をぜひチェックしてほしい。
SHOP DATA
住所:東京都杉並区高円寺南4-6-1 1階
TEL:03-5913-8470
営業時間: 12:30〜19:30(土曜のみ~20:00)
定休日:不定休
Instagram:@slat_vintage_clothing
WEBサイト:https://slutalb.base.shop
Photos: Yumi Yamasaki(still & movie)
Movie Edit:Yuuki Hayashi
Composition & Text : Hisami Kotakemori
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