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──よく使う褒め言葉で、「あの人は雰囲気がいいね」というのがある。でも、雰囲気がいいってなんだろう。顔やスタイルがいいとか、おしゃれな服を着ているという具体的な評価と違って、明確な答えを出しづらく曖昧なものだ。今回はあえて説明を試みたい。今回登場するのは、そんなテーマにぴったりの彼、都内スタジオ勤務のイム・テヒョンさん(26歳・会社員)。前回の本連載撮影の際、KANADA氏が「いい雰囲気だ」と声をかけた。何がそう見せるのかを探りつつ、よりブラッシュアップする方法を考えてみた。
取材でヘアについて「雰囲気よく仕上げました」と言うと、ライターさんは許してくれない(笑)。「それはつまりどういうこと?」と説明を求めてくる。そりゃそうだろう。抽象的な表現では読者に伝わらないし、僕自身も「なんとなくわかれよ!」なんて逃げたくないなと思う。ヘアにおいて雰囲気がいいとは? ズバリ言うと「やりたいことがその人のキャパを超えていない」ということかな。かといって無難に似合うという消極的な選択は、魅力的ではない。無理はせず、そのスタイルを自分のものにしている…いい感じな人には、そんな共通点がある。ヘアは手を加えたらわかりやすく効果が見える。ボサボサに仕上げたらワイルドに、ウエットにしたら色気が出る…というふうに。やろうと思ったとおりできてしまうから、ときに自分が置き去りになる。美容師さんはオーダーどおりやってくれたのに、全然イケてないってことあるでしょ?
カメラマンをめざす彼は、芸術家肌で本人の趣味はグランジテイスト。でも本来はサラサラの直毛だそう。顔立ちも精悍だし、ヒゲを剃り短髪にすればあっという間に爽やかな青年になるタイプだ。もっと汚していけばグランジというものには近づくだろうが、本来やさぐれた雰囲気ではないからこそ、やりすぎずクリーンさを失わないところで止めるようスタイリングに気を配った。本来持つキャラと無理なく共存できた と思う。前のめりに髪だけ完成させず、冷静に自分にはこのくらいまで、というところでやめるのが「いい雰囲気」への第一歩だ。
”似合うグランジ度”を突き詰めよ。
更に「雰囲気あるね」と褒 められるようなグランジ をめざした。似合ってな ければただ清潔感のない 人になるから、どう本人と折り合いをつけるか重 視した。伸ばしっぱなしの髪にレイヤーを入れてモード感を足し、ボリュームを出してドライ質感に。彼の精悍さがより生きるグランジに仕上げた。
スーツ¥48,000・シャツ¥14,000/オアグローリー神宮前店 スカーフ¥8,200/アニエスベー
Hair:KANADA[LAKE TAJO] Photo:Junji Hata[Cyaan] Stylist:Hidero Nakagane[S-14]
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