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ドラマや映画など話題作に出演する人気俳優の上白石萌音さんは、歌手としてのもう一つの顔を持っている。聴く人の体を包み込む、優しく透き通る歌声が紡ぐ九曲を収めた最新アルバム『name』が7月13日にリリースされる。作曲は小林武史さんや森山直太朗さんなど、豪華アーティスト陣が手がけ、萌音さんの書き下ろしエッセイ『いろいろ』に合わせて作られた曲「スピン」では本人が作詞に挑戦! アルバムの発売を記念して、本作の魅力や制作秘話について聞いた。
名前が持つ不思議な力に導かれるように
アルバムのテーマが生まれた
──最新アルバム『name』のタイトルやテーマが生まれた経緯を教えてください。
今作に収録する新規の曲の中で最初にできたものが、ハンバート ハンバートの佐藤良成さんが作詞作曲をしてくださった『君の名前』でした。この曲を聴いたときに、私の中でなんとなくアルバム全体の雰囲気が見えたという感触があったんです。この曲のように、優しくて大きくて、力んでない感じ。一枚を通して、聴いているとリラックスできるような作品にできればいいなと思いました。
──今作の軸ともいえる「君の名前」は、どのようにつくられたのでしょうか?
良成さんと曲の打ち合わせをさせていただいた際に、今私が感じていることをお話したんです。私は最近、名前がキーになる作品に携わることが多いんです、と。舞台の『千と千尋の神隠し』は、演じた主人公の千尋が自分の名前を取られて、それからまたアイデンティティを取り戻す物語ですし、連続テレビ小説の『カムカムエヴリバディ』も、母親・橘安子としてすごく思いを込めて名前をつけた娘から、世代を超えてどんどん広がっていくお話。
名前ってすごく不思議で、名付けられた時点で、人は名前の通りに育っていくようなところがあるなということをずっと考えていて。そんな会話から、良成さんが私の思いを抽出して、曲を書いてくださったんです。私がいまいちばん考えていること、いちばん素敵だなと思っていることを曲にしていただけたので、アルバムタイトルに『name』とつけました。
──アルバムの方向性を示した「優しくて大きくて、力んでない感じ」「一枚を通して、聴いているとリラックスできる」という、先ほどの萌音さんの言葉が印象的です。その感覚は、どこから生まれたのでしょうか?
あくまでそれぞれの曲を同じ方向にするということではなく、私の歌い方によってつくられるアルバムの雰囲気です。良成さんが制作の段階から寄り添って、レコーディング前にレッスンをしてくださったり、密にコミュニケーションを取ってくださいました。その中で「力を抜いて、無理せずに、がんばらずに歌ってほしい」とおっしゃって、ハッとしたんです。
確かに、気持ちいいと感じる歌って、そうだよな〜と思って。気持ちを入れてレコーディングに臨むことはすごく大切ですけど、意外と意気込みすぎちゃったりもするので、良成さんの言葉を聞いてから、マイクの前ではサァ〜っと力を抜いて、気持ちよく声を出すことを意識して歌いました。最初のレコーディングで、舵取りをしていただきましたね。「君の名前」がなかったら、たぶんそれぞれの曲の歌い方はもっと変わっていたと思います。
ドラマで母を演じたことで
歌唱に大切なたくさんの感情を得た
──今回のアルバムでは、作詞と作曲に小林武史さんをはじめ、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦さんや川上つよしさん、MONGOL800のキヨサクさんなど、豪華アーティスト陣が参加されています。さまざまな才能とひとつの音楽を作ることの楽しさや面白さとは?
音楽についてたくさん学べることが本当に幸せです。それぞれの方がさまざまなアドバイスをくださったり、ディレクションしてくださったり、ご自身が培ってきた感性を、私に惜しみなく注いでくださいます。音楽に携わっていて、こんなに贅沢なことはないです。ひとつの曲をつくりながら、同時に授業を受けているみたいな感覚。しっかりと吸収して、歌という卒業制作をがんばって先生たちに提出させていただきました(笑)。
──アルバムに収録した金子隆博さんが作曲した「ジェリーフィッシュ」やジャズの名曲「Tea For Two」は、『カムカムエヴリバディ』への出演が関係していると思うのですが、曲づくりにおいて俳優のお仕事が影響することもありますか?
そうですね。金子隆博さんは、ジャズにまつわる物語が軸となる『カムカムエヴリバディ』(以下、『カムカム〜』)で、3つの時代を生きる3人のヒロインの舞台である岡山編、大阪編、京都編それぞれの音楽を手がけられました。ヒロインのキャラクターに合わせて作られた三部作ともいえる音楽がすばらしくて。ドラマの撮影が終わったあとに、金子さんに「カッコいいジャズの曲をお願いします」と作曲をご依頼して、つくっていただいたのが「ジェリーフィッシュ」です。曲が持つムードが純粋に強いので、音に導かれるようにレコーディングもスムーズにいきました。
そして、私がドラマで演じた橘安子が、後に夫となる稔と一緒に喫茶店でデートする印象的な場面で流れてくるBGMが「Tea for Two(二人でお茶を)」。その演出がすてきすぎて、私にとってこの曲は宝物になりました。今回のアルバムで洋楽のカバー曲を入れたいと考えていたので、アルバムに入れました。
──同様に、歌唱においても影響がありましたか?
『カムカム〜』で初めて本格的な母親の役を演じたことで、自分の感情の引き出しが増えたことは、歌唱において影響があったと思います。
これまで演じてきた役では、「自分の人生、私はいかにして生きていくか!?」や「先輩や後輩といった同世代同士が絡まった関係の中で、私は強く前向きにいよう!」という、感情の主語が「私」でした。実際は子供を産んだわけではなくお芝居でしたけど、娘が生まれると心の主軸が子供に移るという経験をしました。愛を注いだり気を揉んだり、自分ではない対象に向かっていろいろな感情が動くんです。そういった初めて感じる新しい気持ちとたくさん出会ったことは、歌を歌う上でもプラスになっています。
──新しい気持ちと出会って、萌音さん自身も変わりましたか?
いろいろなことに対して、前よりも認められるようになった感じがしています。元々感情がたかぶるタイプではないんですけど、以前にも増して、「そうだよね、いいよいいよ」っておばあちゃんみたいに、大抵のことは受け入れられるかなって(笑)。ちょっとだけ人としての器が大きくなった気がします。母でいることって、すごいなと改めて思いました。
【後編に続く】
PROFILE
上白石萌音 MONE KAMISHIRAISHI
1998年1月27日生まれ、鹿児島県出身。2011年にデビュー。ドラマ、映画、アニメ、舞台など、さまざまな注目作で出演を重ねる。近年の代表作は、大河ドラマ『青天を衝け』(21年)、TVドラマシリーズ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(21年・主演)、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(21年・主演)、舞台『千と千尋の神隠し』(22年・主演)など。また、16年にメジャーデビューし、歌手としても活躍。これまで、オリジナルアルバムやカバーアルバムを発表している。また、7月25日には、初の翻訳著書も出版する。
アルバム『name』
2022年7月13日発売
1.Iʼll be there(Lyrics:いしわたり淳治・Music:末光 篤)
※TBS系「王様のブランチ」テーマソング
2.ジェリーフィッシュ(Lyrics:Makoto ATOZI・Music:金子隆博)
3.チョイス(Lyrics・Music:キヨサク)
4.スピン(Lyrics:上白石萌音・Music:諸見里修)
5.懐かしい未来(Lyrics・Music:森山 直太朗)
※『第100回全国高校サッカー選手権大会』応援歌
6.愛すべきブルー(Lyrics:谷中敦・Music:川上つよし)
7.夕陽に溶け出して(Lyrics・Music:小林武史)
※TBS系『news23』エンディングテーマ
8.Tea for Two(Lyrics:Irving Caesar・Music:Vincent Youmans)
9.君の名前(Lyrics・Music:佐藤良成)
初回限定盤(CD+DVD+ミニ写真集)¥4,400円
【DVD収録内容(予定)】 ・「懐かしい未来」ミュージックビデオ ・新曲ミュージックビデオ ・メイキング映像
通常盤(CD)¥3,300
ノースリーブドレス(エスロー)¥41,800円/エンケル[TEL:︎03-6812-9897] 中に着たブラウス¥46,200/ケイコ ニシヤマ[TEL:︎03-5357-8292] イヤリング(トゥラン)3,080円/コトモノマルシェ東急ハンズ新宿店[TEL:070-3229-6807]
Photos:Tohru Yuasa Hair&Make-up:Tomoko Tominaga[Allure] Stylist:Takashi Shimaoka Azusa Kitamura[Both are Office Shimarl] Composition & Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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